文献情報
文献番号
201502005A
報告書区分
総括
研究課題名
国際比較を通じたICD-11に向けた漢方分類の妥当性の研究
課題番号
H27-統計-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 賢治(慶應義塾大学 環境情報学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
WHO主導で行われる国際伝統医学分類のレビュー・フィールドテストに協力し、ICD-11に入れる日本版漢方分類の妥当性を検討した。
研究方法
日本版漢方分類は、ウェブ公開されているICD-11β版の中で、暫定的に第27章になっているTraditional Medicine conditions - Module Iの中に入っている。本研究ではこれを元に、レビュワー・フィールドテストを行いつつ、伝統医学分類作成の国際組織ならびにWHO-FICとも協力しつつ日本版漢方分類の妥当性を検討した。
結果と考察
伝統医学分類のブラッシュアップと翻訳に関しては、英語の他、日本語、韓国語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語への翻訳が終了した。日本語訳に関しては、WHO統計分類協力センターと協力しながら行った。また、伝統医学分類に関してのレビュワーの割り当てならびにそれぞれを管轄するマネージング・エディターの割り振りが決定した。レビュワーにはレビューマニュアルが送られてきたので、日本語訳を日本人レビュワーに送付した。フィールドテストのStudy1(伝統医学分類の妥当性)についてはヨーロッパの伝統医学の学会・研究会にて行われた。症例のコーディングについては平成26年度に日中韓から提出された30症例ずつ、90症例についてブラッシュアップを行ったが、詳細すぎて診断のテストとなっている点が問題であるという指摘があり、今後の対応が検討されることになった。コーディングのためのテストであれば、ある程度診断がついた状態で当てはまるコードがあるかどうかというテストを行うことも検討課題として挙げられ、継続審議となった。コーディングガイドについては素案ができているので、細かい修正点について議論を行い、アップデートした。平成27年11月にてWHOのICTM会議が開催された。会議は1日目がステークホルダー会議で、2日目がテクニカル会議であった。WHOからはウースタン氏、コスタンジュセク氏、エスピノ-ザ氏が参加して行われたが、この席で、27章の英語版、日本語版、韓国語版、中国語版の冊子が配布された。Indexについて他の章と一緒にするかどうかという議論を行った結果、WHO-FICマンチェスター会議で議案となったpalpitation TMがpalpitationと一緒にリストされると混乱を招くとの意見が出され、西洋医学的病名と重なる用語について議論がなされ、Indexとしては独立した伝統医学だけのものを作成することで意見が一致した。コーディングガイドの議論の中ではコードの優先順位を1)西洋医学病名、2)伝統医学疾病、3)伝統医学証とし、この中から最低1つ、最高3つまでコードすることとした。2日目には伝統医学疾病で西洋医学病名と混乱を来す可能性のある用語について議論となり、palpitation TM,malaria-like disorderなどの西洋医学病名と混乱を来す用語について再検討が行われた。その結果、たとえ病因論が伝統医学的であっても症候が同じであれば西洋医学のコードを借りてくることで意見が一致した。日本にとって重要なprinciple patternは単独ではコードしないcluster codeとすることが決定した。この決定は漢方分類に取り、よりよい形でICD-11ベータ版に入るものであり、歓迎されるものと考えられた。2また、平成27年のWHO-FIC(WHO 国際分類ファミリー)年次総会は英国マンチェスターで開催された。ICTMに関する会議は日中韓からの参加者とWHOのベディルハン・ウースタン氏、ネナード・コスタンジュセク氏、ステファン・エスピノ-ザ氏が参加して3回開催された。ICTMはICD-11ベータ版の27章に入っているが、文法的に不完全な部分や統一性に欠ける箇所があり、修正が必要という意見で一致し、各国の作業を分担した。フィールドテストの方法により、診断のテストをするのか、コーディングのテストをするのかで意見が出され、ICTMソウル会議で検討することとした。JLMMSで他の章と合体した時にMalaria-like disorder, palpitation TMなど、西洋医学診断と重なる表現は混乱を来すのではないかという意見が出され、ソウル会議で検討することとした。
結論
ICD-11全体のレビューおよびフィールドテストは予定よりも遅れているが、進捗できる体制が整ったため、今後の進捗が期待できる。ICD-11において、伝統医学の章が27章に位置づけられ内容について大幅なブラッシュアップを行った。日本提案に関しても定義において少し改訂があった。
公開日・更新日
公開日
2016-06-15
更新日
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