日本における今後の死亡統計のあり方の提言

文献情報

文献番号
201502002A
報告書区分
総括
研究課題名
日本における今後の死亡統計のあり方の提言
課題番号
H26-統計-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 純(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学)
  • 今井 健(東京大学大学院医学系研究科)
  • 田中 博(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
死亡診断書に記載されている死因、関連傷病等情報を活用し、我が国の死因に関する現状把握を行い、適切な統計資料等に基づき疾病動向等を正確に把握し効果的な対策を実施していくことに役立ちうる今後の死亡統計のあり方を提言することを目的とする。
研究方法
平成27年度は、統計法第33条に基づいた調査表データなどを利用し、複合的な死因の記載状況について具体的分析を行った。また、直近の死因と真の原因との間の関係性を、できるだけ現行の死亡診断書、ICDをいかした形で表現可能とする方法、関係性表現のあるべき姿と情報学的手法の利用について検討を行い、今後の電子化時代におけるICDに対応しうる傷病分類モデル案の作成を行った。
結果と考察
糖尿病をモデルケースとして、死因における糖尿病の位置づけなどについて、平成26年度に続いて情報収集調査をおこない、課題などを分析した上で、オントロジーを用いた解決策を考案し、NCK, iCOSなどを用いた試作を行った。
 統計法第33条に基づいた調査票データの解析によると、2012年度の死亡者のうち死亡診断書に糖尿病の存在が記載されている割合は、約3.4%であり、糖尿病の有病率である10~20%から比較してはるかに低く、現状において、糖尿病の存在は、多く見積もっても3割程度しか記入されていないことが推定された。分析調査を行った結果の詳細については、分担研究報告書に記載する。
 平成26、27年度の調査結果に基づき、オントロジーテンプレートを利用して、糖尿病と、腎症、脳血管障害の関係性を表現する手法について検討と試作を行った。
 具体的に、糖尿病を原疾患とした腎症、血管障害による死亡などを表現する場合、オントロジー表現を用い、一定の粒度まで①の方法で詳細化を行った上で、②の方法で知識リンクを張るのが良い手法と思われた。
 ① 糖尿病を病名分類の中に含めてしまう方法
 ② 糖尿病の中の知識特性項目間でリンクを張る方法
 ①において、必要な分類詳細化粒度の程度は、糖尿病におけるICD10と標準病名マスターの比較を行った結果、傷病名マスターと同程度の粒度が妥当と思われた。
 ①と②を組み合わせた方法を用いて、糖質代謝、及び関連疾患についてオントロジー作成を行った。ICD11でオミックス情報との関連性を記述する目的で計画されているiCOS(ICD11 Clinical Omics Sub information model)において用いられている逆転写型情報モデル機能の一部を応用して、最終死因への原因の連鎖を記述できるようなモデル案を作成した。
 一方で、現行の死亡診断書の枠内の記載方法マニュアルの修正と指導で対応する方法としては、不十分ではあるが以下の対応策が考えられた。
 ③ Ⅰ欄、Ⅱ欄に傷病名を複数記載することをある程度容認する。
 ④ Ⅰ欄、Ⅱ欄に傷病名を複数記載する場合は、必ず優先順位をつけて記載してもらう
 これにより、現行の死亡診断書の範囲内で、情報粒度の詳細化と背景疾患の関連性表現がある程度可能となるが、暫定的な方法でしかなく、次世代ICDにおける情報学的手法による解決策が必要である。
 今後、同じ解析を病気別、年齢別に展開していくことが必要であると考えられた。さらに、今後の課題として、レセプトデータなどとの突合が必要となる可能性が示唆された。
結論
情報学的アプローチとしては、現在の死因分類よりもやや詳細な分類まで病名の粒度を下げることと、病気ごとの知識テンプレートの特性項目間でリンクを張ることを組み合わせた方式が、現時点においては、最も妥当であると考えた。
 また、一方で、今後、ICD11などにおいて、オントロジーの導入により、ターミノロジー間のリンク表現が可能となれば、こういった関係性を表現できることになるので、ICD11以降でそういったことが可能かどうかについて、引き続き検討を行う必要がある。この具体例として、ICD11で検討されているiCOSの逆転写型情報モデル方式を特性項目間のリンク表現に応用することは、最も簡便な方式であり、今後、WHOに提案していくべき方式であると考えられた。
 糖尿病などの基礎疾患が死因統計情報に現れるような死亡診断書を検討することは、我が国の医療福祉、WHOによる国際統計をより良いものに深化させるうえで、大きな意義があることであると確認された。
 今後の課題として、他の主要死因の記載状況調査・検討が指摘された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201502002B
報告書区分
総合
研究課題名
日本における今後の死亡統計のあり方の提言
課題番号
H26-統計-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 純(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村理明(東京慈恵会医科大学)
  • 今井健(東京大学大学院医学系研究科)
  • 田中博(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
死亡診断書に記載されている死因、関連傷病等情報を活用し、我が国の死因に関する現状把握を行い、適切な統計資料等に基づき疾病動向等を正確に把握し効果的な対策を実施していくことに役立ちうる今後の死亡統計のあり方を提言する。
研究方法
平成26年度は、関連医学専門学会からの情報収集を行うことで、特定の疾患群(例:糖尿病及び関連疾病)に対して、課題の分析を行った。また、臨床現場での利用、複合的な死因分析の検討を行い、直接死因、原死因、基礎疾患との関係性について分析を行った。
平成27年度は、統計法第33条に基づいた調査表データなどを利用し、複合的な死因の記載状況について具体的分析を行った。また、直近の死因と真の原因との間の関係性を、できるだけ現行の死亡診断書、ICDをいかした形で表現可能とする方法、関係性表現のあるべき姿と情報学的手法の利用について検討を行い、今後の電子化時代におけるICDに対応しうる傷病分類モデル案の作成を行った。
結果と考察
糖尿病をモデルケースとして、死因における糖尿病の位置づけなどについて情報収集調査をおこない、課題などを分析した上で、オントロジーを用いた解決策を考案し、NCK, iCOSなどを用いた試作を行った。
 2012年度の死亡者のうち死亡診断書に糖尿病の存在が記載されている割合は、約3.4%であり、糖尿病の有病率である10~20%から比較してはるかに低く、現状において、糖尿病の存在は、多く見積もっても3割程度しか記入されていないことが推定された。分析調査を行った結果の詳細については、分担研究報告書に記載する。
 糖尿病が主要因で起きた腎症及び血管疾患による死亡については、現在のICDコードでは表現しきれていないことがわかった。これに対し、オントロジーテンプレートを利用して、糖尿病と、腎症、脳血管障害の関係性を表現する手法について検討と試作を行った。
 具体的に、糖尿病を原疾患とした腎症、血管障害による死亡などを表現する場合、オントロジー表現を用い、一定の粒度まで①の方法で詳細化を行った上で、②の方法で知識リンクを張るのが良い手法と思われた。
 ① 糖尿病を病名分類の中に含めてしまう方法
 ② 糖尿病の中の知識特性項目間でリンクを張る方法
 ①において、必要な分類詳細化粒度の程度は、糖尿病におけるICD10と標準病名マスターの比較を行った結果、傷病名マスターと同程度の粒度が妥当と思われた。
 ①と②を組み合わせた方法を用いて、糖質代謝、及び関連疾患についてオントロジー作成を行った。ICD11でオミックス情報との関連性を記述する目的で計画されているiCOS(ICD11 Clinical Omics Sub information model)において用いられている逆転写型情報モデル機能の一部を応用して、最終死因への原因の連鎖を記述できるようなモデル案を作成した。
 一方で、現行の死亡診断書の枠内の記載方法マニュアルの修正と指導で対応する方法としては、不十分ではあるが以下の対応策が考えられた。
 ③ Ⅰ欄、Ⅱ欄に傷病名を複数記載することをある程度容認する。
 ④ Ⅰ欄、Ⅱ欄に傷病名を複数記載する場合は、必ず優先順位をつけて記載してもらう
 これにより、現行の死亡診断書の範囲内で、情報粒度の詳細化と背景疾患の関連性表現がある程度可能となるが、暫定的な方法でしかなく、次世代ICDにおける情報学的手法による解決策が必要である。
 今後、同じ解析を病気別、年齢別に展開していくことが必要であると考えられた。さらに、今後の課題として、レセプトデータなどとの突合が必要となる可能性が示唆された。
結論
 情報学的アプローチとしては、現在の死因分類よりもやや詳細な分類まで病名の粒度を下げることと、病気ごとの知識テンプレートの特性項目間でリンクを張ることを組み合わせた方式が、現時点においては、最も妥当であると考えた。
 また、一方で、今後、ICD11などにおいて、オントロジーの導入により、ターミノロジー間のリンク表現が可能となれば、こういった関係性を表現できることになるので、ICD11以降でそういったことが可能かどうかについて、引き続き検討を行う必要がある。この具体例として、ICD11で検討されているiCOSの逆転写型情報モデル方式を特性項目間のリンク表現に応用することは、最も簡便な方式であり、今後、WHOに提案していくべき方式であると考えられた。
 糖尿病などの基礎疾患が死因統計情報に現れるような死亡診断書を検討することは、我が国の医療福祉、WHOによる国際統計をより良いものに深化させるうえで、大きな意義があることであると確認された。
 今後の課題として、他の主要死因の記載状況調査・検討が指摘された。

公開日・更新日

公開日
2016-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201502002C

収支報告書

文献番号
201502002Z