社会保障費用をマクロ的に把握する統計の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201501020A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障費用をマクロ的に把握する統計の向上に関する研究
課題番号
H27-政策-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
  • 小野太一(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 竹沢純子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 渡辺久里子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 黒田有志弥(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 沼尾波子(日本大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会保障費用をマクロ的に把握する統計として、社会保障費用統計が国際基準に沿った分類集計を実施。国際基準では、地方単独事業も集計対象となる。1990年代半ばより総務省「地方財政調査」等を使った地方単独事業の推計方法の検討、諸外国における地方単独事業に相当する費用把握の現状について情報収集を実施してきた。しかしデータの制約により、現在でも一部(公立保育所運営費、医療費)しか計上できていない。社会保障関係の地方単独事業を国際基準に沿って把握するための基礎的研究として、国際基準の検討と自治体事例調査に基づき、集計範囲や分類基準の理論的整理を目的とする。
研究方法
初年度において、研究は3つの側面から進められた。ヒアリング調査、各国事例、国際機関調査、関連研究である。5自治体を対象に、決算データの構造、事業内容についてヒアリング調査を実施、OECDとEU統計局ヒアリング調査を実施、各国事例として韓国とフランスを調査。分担研究者がそれぞれ専門と関心を中心に、社会保障費用統計の国際比較や地方単独社会保障費について考察。
結果と考察
社会保障施策に要する経費(地方財政白書)17兆5,017億円とは、毎年自治体を対象に総務省が実施している「地方財政状況調査」に付随して実施される「社会保障施策に要する経費」に関する調査である。これらの調査を実施する側と調査に協力する側の双方より実態の把握を行った。都道府県と政令指定都市合計5自治体の調査票記入担当には、各自治体の決算統計との関係について質問し、実際の集計の基礎となる各自治体の決算資料の入手を行った。各国の財政制度の違いや行政統計の整備の状況の違いなどにより、日本同様の問題が諸外国にもあるのではないかという疑問に答えるべく情報収集を実施した。近年、社会支出統計の整備に国をあげて取り組んでいる韓国の事例、そして、地方と中央政府の社会支出分離が難しいとされているフランス、そして、様々な行財政制度をもつ加盟国で共通したデータベースを整備しているEU統計局の調査である。関連研究としては、地方財政に詳しい沼尾は、ユニバーサル福祉の進展は、高齢者、障害者、子どもといった特定の対象だけに留まらず、あらゆる世代や年齢・性別等を問わず、必要に応じて支援を行う仕組みを要請していると述べている。社会保障費用統計の時系列データの分析をおこなった小野は1960年代から現在にいたる社会保障財源の変化を分析し、結論としては2009年度の基礎年金国庫負担割合1/2への引き上げを決定的な要素としつつ、各制度それぞれで公費負担の増や高齢者自らの拠出等高齢化への対応を行った結果が蓄積したことにより、全体のバランスが公費に重心を移し、かつ相対的に「事業主拠出」の比重が低くなったことが確認されたとしている。消費税を社会保障財源に充当していくという方向性は、財政的な安定を志向するものであるが、それが人口の少子高齢化に対応した持続可能で公平な社会保障制度の維持につながるのかどうかの議論が必要である。黒田は、乳幼児医療助成制度を題材として、国の制度を前提として、地方単独事業によって行う、国の基準を上回る基準を設定する制度について、その国の制度と地方単独事業による基準との関係について理論的に検討している。
結論
表番号90は、都道府県と市町村を合計することで、県から市町村への移転が二重に計上されている限界がある。また、民生費に限定されることで、社会保障関係の費用を集計していることも、少子化対策、例えば教育費補助や住宅補助などの費用が計上されない。一方、「社会保障施策に要する経費」に関する調査、については表番号90と同様の課題はあるが、各自治体の裁量により、より広い政策をいれる余地があった。
総務省によって、地方自治体の決算がまとめられているが、自治体にとってこの統計の政策利用の認識が希薄。韓国のように、地方政府の決算情報も国際基準に従った区分・集計ができるような電子システムが導入されれば、全体の社会保障費の把握が可能になる。
 EUとフランスの事例からは、地方政府に対しデータ提出を義務付ける法規定の重要性、調査結果は社会保障費用統計だけではなくSNA、GFS等関連統計における使用も視野に検討すべき。
小野は、「高齢という事故の性質上、国以外に責任を持つ者がない場合」といった説明を再度援用すべきで、それを前提として社会保障給付や負担の在り方議論が深められていくべきと結論付けた。沼尾は、ターゲット型福祉からユニバーサル福祉へ、措置から権利へと、福祉サービスのあり方が変容する中で、統計が従前の仕組みで整理がなされていることの問題を指摘した。黒田は各自治体で地方単独事業として行われている事業を、国の制度との関係という観点からあらためて整理する必要に言及した。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201501020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,501,867円
差引額 [(1)-(2)]
-1,867円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 709,242円
人件費・謝金 1,095,400円
旅費 635,688円
その他 1,061,537円
間接経費 0円
合計 3,501,867円

備考

備考
購入物品等の価格により、差額は自己負担とした。

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
-