国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善や有用性の向上に資する研究

文献情報

文献番号
201501019A
報告書区分
総括
研究課題名
国際統計分類ファミリーに属する統計分類の改善や有用性の向上に資する研究
課題番号
H27-政策-一般-005
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 水島 洋(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
  • 冨田 奈穂子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 佐藤 洋子(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ICD-11への改訂に向けた我が国におけるフィールドトライアルのシミュレーションとしてのプレテスト(予備調査)を行い、本番のフィールドトライアル実施上の諸課題を整理し対応策を検討することにある。また、本研究で得た知見はWHO-FIC(国際統計分類)協力センターの活動などを通じてWHOへのフィードバックを行い、必要に応じてWHOが作成する国際的なフィールドトライアル指針に反映させる。
研究方法
現時点におけるWHOのガイドライン・ドラフト版にしたがって、プレテストを実施し、本番のフィールドトライアル実施上の問題点を整理する。具体的には、①倫理審査申請による計画承認、②現場のコーディング担当者が用いるリファレンスガイド(ドラフト版)の翻訳、③ケースサマリー(テストで用いる症例)の選択、④テストに用いる質問票の翻訳などを行う。本プレテストでは、主な3領域(小児領域、がん領域、生活習慣病領域)の疾患について、国立成育医療センター、国立国際医療研究センター、九州医療センターなどの機関の協力をいただき、実際のフィールドトライアルに近い形でシミュレーションとしてプレテストを実施し、課題を整理する。また、関連した国際的な情報を合わせて整理する。
結果と考察
プレテストでは、各領域(小児領域、がん領域、生活習慣病領域)より合計7名の評価者から回答が得られた(職種は医師4名、診療情報管理士3名で、コーディング経験年数は5年未満が2名、5年以上10年未満が2名、10年以上が3名)。ICD使用目的としてはレセプト請求が6名、がん登録が2名、研究利用が2名、病院経営が3名で、その他にDPC監査なども挙げられた。
本プレテストの結果、ICD-11について、分類構造が大きく変わったセクションがいくつかありその構造が分かりにくい点、判断が困難なコードがいくつか存在する点、分類の誤りなどがコーディング担当者から指摘された。ICD-11導入に際しては改訂された分類や使い方に関する詳細なレクチャーが必須であるとの意見があった。またWHOが準備した評価様式の言葉の定義が分かりにくいという意見もあった。
本番のフィールドトライアルは原則web上で行うとされているが、現時点でWHOのプロトコルが完成しておらず、今回は現在公表されているプロトコルを元に紙媒体でのプレテスト実施となった。また、ICD-11β版や、ICD-11実施説明書は英語版を用いた。そのため、評価者から「英語のため評価が限定的になる」「コードの検索が煩雑で大変」という意見があり、これらの点については、実際のフィールドトライアルまでにWeb環境を整えることで対応可能と考えられる。
一方、今回のプレテストではICD-10から分類構造が変わったセクションや、コードできない単語があるなど具体的な問題点を得ることができた。またセクションによっては分類が詳細すぎて実際の臨床現場では正確なコーディングが困難となる可能性が示唆された。ICD-10から大きな変更があったセクションとあまり変更が加えられていないセクションでは各項目に対する評価は異なることが考えられるため、セクションごとの評価が必要であることが示唆された。
ICD-11への改訂に先立って実施されるフィールドトライアルには次のような意義があると思われる。1) 個々の分類の妥当性をICD全体の構成を考慮して検討しうる。2) 事前にブリッジコーディングを行うためICD-10との比較可能性を高めるようにICD-11を構築できる。3) 世界的に統一標準的なフィールドトライアルを行うことによって国際的な知見を反映しうる。4) 現場のコーディング担当者の意見を反映しうる。
結論
本プレテストの結果、本番のフィールドトライアル実施に向けて、入力用のWeb環境の整備、セクションごとの評価の必要性、プロトコルの完全な翻訳化、などの課題が示された。WHOの指針に従って統一的な方法でフィールドトライアルを実施するには、国際的な情報連携を含めた様々な調整が必要である。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201501019Z