医療及び介護の総合的な確保に資する基金の効果的な活用のための持続的な評価と計画への反映のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201501016A
報告書区分
総括
研究課題名
医療及び介護の総合的な確保に資する基金の効果的な活用のための持続的な評価と計画への反映のあり方に関する研究
課題番号
H27-政策-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 太一(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 石川 ベンジャミン光一(国立がん研究センター がん対策情報センターがん統計研究部がん医療費調査室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」第六条による基金の仕組みが、効果的・効率的に活用されるために必要な、持続的な評価の方法、それに使用される評価指標等を作成すること、2)都道府県による基金事業の選択に影響を与える要因を明らかにすること、3)都道府県における「基金事業」の実施サイクルの実際を明らかにすること、である。
研究方法
研究目的のうち、1)と3)について本年度は実施した。その方法は次の4つからなる。
a) 評価指標等の作成
成果指標をアウトプットは「事業の実施の結果としての数値」、アウトカムは「事業の実施により改善されるより高次な目標」と概念上区別した。さらにアウトカム指標が持つべき性質について、OECD(2015)を参考に検討を行った。
b)都道府県担当者に対する半構造化されたインタビュー調査を実施した。内容は、基金の運用状況についての概況、研究班が作成した指標例案についてである。
c) 医療介護総合確保促進法に基づく都道府県(市町村)計画に関する事後評価(以下、「事後評価」)を利用した評価指標の在り方の検討
 評価指標の作成に付随して、事後評価の課題を探る必要があると考えられたため、平成26年度の事後評価の内容を用いて「基金事業」の評価指標の現状を評価した。
d)医療介護総合確保促進法に基づく都道府県(市町村)計画(以下、「都道府県(市町村)計画」)及び同事後評価のフォーマットの改定提案
 a)~c)の実施結果をふまえ、現行フォーマットに最小限の変更を加える形でそれぞれの改定提案版を作成した。
研究内容については研究班会議において全研究者が参加してその適切性について吟味した。
結果と考察
 医療事業については23カテゴリーに、介護について30のカテゴリーに事業を分類し、評価指標を作成した。基金事業を評価する指標例は「都道府県が地域医療構想を達成するために地域医療介護総合確保基金による事業を実施するという趣旨を踏まえる」性質を持たねばならない。島崎(2015)をふまえると、都道府県担当者が基金事業のマネジメントを行う時に使いやすいことを意味する。これは都道府県(市町村)計画にアウトプット指標の目標値を明記した場合には事後評価にも達成値が明記される割合が高いという事業評価を用いた研究結果からも支持される。これらの点を考慮してアウトプット指標例を作成した。
 都道府県担当者に対するヒアリング調査から以下の点が明らかとなった。基金事業だけを取り出して評価することが適切かという意見があった。個別の事業単位ではなく事業区分などある程度集約した分類で評価する方法も指摘された。評価指標については、都道府県が事業内容に即した指標を選択できる必要性が指摘された。アウトカム指標の持つべき性質・条件については、医療計画で用いられている指標の使用の他、適用対象地域の大小等をふまえた選択の必要性が指摘された。指標の達成値の測定時期については指標間で開きがある可能性が指摘された。
 上記の結果をふまえて、都道府県(市町村)計画では、背景にある医療・介護ニーズ、アウトカム指標、アウトプット指標、の項目を、事後評価では、アウトプット指標については当初の目標値のみならず、達成値も記載することを提案した。事業の実施から想定するアウトカムが帰結するかの確認も必要となる。政策評価の文脈における「ロジックモデル」の概念を援用し、都道府県(市町村)計画・事後評価のフォーマットの改定提案では、両者の関連の簡単な説明の必要性を指摘した。
 山谷(2006)はアカウンタビリティのジレンマとして、「政策評価に限らず様ざまな評価業務に時間が取られすぎて、本業の時間が削られる」状況を指摘している。本研究の文脈では、アウトプット指標の達成値を予算上の実績報告と同時期に報告すること、アウトカム指標として公表統計の集計結果が適時に利用できない可能性、アウトカム指標の達成値を誰が作成(測定)するのかという点である。これらの点は継続的に検討していく必要がある。
結論
本年度は基金事業の評価に必要な指標の性質や内容、評価の方法について明らかにすることが出来た。都道府県担当者に対するヒアリングの継続、都道府県による基金事業選択についての要因分析を行うこと、医療介護の連携にかかる指標、健康指標などを含めた総合的な指標の開発を行うこと等が次年度の課題となる。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201501016Z