文献情報
文献番号
201501008A
報告書区分
総括
研究課題名
人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と次世代将来推計システムに関する総合的研究
課題番号
H26-政策-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
- 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 岩澤 美帆 (国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,884,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の人口・世帯の将来推計は、人口減少・少子高齢化・地域構造変化等による人口・世帯の長期動向を踏まえた施策立案に広範に活用されている。従来、わが国の人口・世帯の将来推計は、最初に全国の将来人口を推計し、これに地域・世帯推計を整合させる形で実施してきた。しかしながら、わが国が人口減少期を迎えるにあたり、首都圏の高齢化と地方の過疎化という複合的動態の進展、未婚率上昇等をはじめとした家族・世帯構造の転換や高齢単独世帯の増加など、地域や世帯の変化が少子化・長寿化等の全国的潮流に影響を与え、相乗しながら展開している。このような人口減少期における将来推計にあたっては、先進諸国等における人口学界の最新の研究動向を反映した人口・世帯の動向分析の深化や、地域・世帯の将来に関する情報提供により重点を置きこれに全国的な少子化・長寿化の傾向を整合させるという新たな観点を導入した将来推計モデルの開発が求められる。一方、世界から注目を浴びるわが国の人口高齢化とその政策的・技術的対応は「日本モデル」として中長期的な成長戦略分野となり得るものであり、その企画には人口・世帯の将来推計を用いた政策的シミュレーションが必要となる。そこで、本研究は人口減少期に対応した新たな人口学的将来推計に関して総合的な研究を行うことを目的とし、1.最先端技術を応用した人口減少期における総合的な人口・世帯の動向分析、2.地域・世帯に関する推計に重点を置いた次世代将来推計モデルに関する基礎的研究、3.将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究の三領域から研究を推進する。
研究方法
本研究では、研究全体を「研究目的」で示した三領域に分けて研究を進める。なお、研究全般にわたり、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進める。また、研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに、所内における関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し、総合的に研究を推進する。
結果と考察
本年度は1.について、データベース設計・開発、女性個人の就業異動が保育資源に及ぼす影響評価、国勢調査に基づく外国人女性の出生力分析、全国家庭動向調査のライフコースと就業に関するイベントヒストリーデータの質の検討、多地域モデルを用いた都道府県別推計から地域別の人口構造が転出数・転入数に及ぼす影響分析、住民基本台帳を用いた市区町村単位の外国人の人口構造および移動率の分析、全国の高齢者居住状態の将来推計試算、海外在留邦人数調査統計等の日本人海外居住者各種統計の比較分析、各国のセンサスに基づくその国に居住する日本女性の人口学的・社会的属性の把握を行った。2.については、都道府県別推計の各年各歳化による全国・地域推計の統合化の検討、多地域モデルを用いた都道府県別推計による転出率一定の場合の純移動率変化の分析、移動指標の分析による地域人口性比に及ぼす影響の検討を行った。3.については、諸外国の外国人介護労働者受入れのレビュー、複数の前提に基づく公的年金財政シミュレーション、全国の高齢者の将来推計試算による今後の介護・福祉ニーズ予測の基礎資料準備、高齢者の居住場所のモデル化を行った。
結論
主な結論を要約すると以下の通りである。1.回顧的に収集されたイベント・ヒストリー・データは教育水準によって質が異なる可能性が示唆された。2.外国人女性流入による出生力への影響はわが国ではほぼ中立的といえる。3.外国人特有の居住地選好や移動パターンを考慮する必要がある。4. 外国人労働者の受入れの公的年金財政への影響については長期的な評価が重要である。5.外国人介護労働者受入れは、労働条件、資格、家族の呼び寄せの可否などさまざまな仕組みを構築しなければならない。6.今後、在外日本人数増加の可能性があり、さらなる分析が必要である。7.限られたデータからターミナルケアにおける移動状況をある程度モデル化することが可能である。8.今後家族支援が期待できない独居高齢者の急増が予想され、家族以外の支援経路での計画的な対処が必要となる。9.種々のデータから在留邦人の年齢構造や性別は居住国によって大きく異なることが判明した。10.多地域モデルは課題が多いものの、単一地域モデルより優位性があり、適用のための基礎研究が必要である。11.将来推計を行う際、出生に関する情報を含んだ人口学的データベースの開発は必要不可欠の課題である。12.妻の就業状況や育児支援制度の利用をめぐっては、時代変化に加え、1組の夫婦内の変化もモニタリングしていくことが重要である。
公開日・更新日
公開日
2016-11-11
更新日
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