都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201501003A
報告書区分
総括
研究課題名
都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究
課題番号
H25-政策-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 園田眞理子(明治大学)
  • 井上由起子(日本社会事業大学)
  • 小野 太一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 佐々井 司(福井県立大学)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 鎌田 健司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 藤井 麻由(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 安藤 道人(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、人口学、保健学、建築学、社会学、経済学、公共政策学等の学際的な観点から、超高齢社会における地域包括ケア提供体制のあるべき姿を、地域特性や地域課題が異なる都市と地方別に明示した上で、実現に向けた具体的な政策手法の検討と政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
 本研究では5つのサブテーマ(1.先行事例検証、2.人口・世帯・住宅動向(死亡を含む)の地域別分析及び地域の類型化、3.医療・介護需要及び提供体制(従事者含む)の地域別分析、4.世帯の経済・雇用状況・住宅事情等の地域別分析、5.総合データベースの構築)を設定し、これらサブテーマ毎に、現状分析、課題抽出、課題解決策の検討を行う。
 最終年度は、5つのサブテーマ毎に3年間の総括を行った。また、総合データベース整備の成果として、人口、介護、医療、財政に関する地域差についてとりまとめを行った。
結果と考察
テーマ1に関し、フィンランドの保健医療福祉共通基礎資格職であるラヒホイタヤに関する調査結果から、フィンランドの職業訓練教育においては、1990年代の大きな制度改正以降実学志向性と学習のアウトカムを重視する姿勢を強めており、現行の職業能力の評価も、具体的な業務能力に達しているかどうかがモジュール化されたうえで評価されていることなどがわかった。また、奈良県十津川村にて、「地域包括ケアシステム構築に向けた戦略構想」をまとめ、それを実現するための工程表に沿って事業展開した結果、過疎化が進む村であっても高齢者のみならず村民全体の安定的な生活の維持が可能になることがわかった。
テーマ2に関し、市区町村レベルでみた高齢者の移動状況と、家庭内および地域における高齢者ケアの供給状況に関する地域特性の関連について実証分析を行った結果、地域レベルの施策による効果を高める上で、各地域の特性を考慮した柔軟なプランや組み合わせの提示が必要となること、加えて、本稿で試みた地理的加重回帰モデルのように、地域によって各要因の関係性が異なるモデルを当てはめることは、今後地域課題を明らかにし、因果関係を導出する方法として有用であることがわかった。
テーマ3に関し、退院支援/退院時連携の機能強化を目指した各地の取り組み事例も参考に、対応策に言及した結果、1.要介護者の自宅退院の場合、退院前CCに看護師とリハ職が必ずセットで出席するといった院内のルール作り、2.退院後の生活課題(例:誤嚥性肺炎の予防)に応じた関係職種の招集の徹底(退院調整ルールの構築)、3.かかりつけ医、リハ職、看護師の退院前CCへの参加の促進(報酬での誘導ほか)、4.退院前CCの場での、多職種による退院後ケアプランの検討の促進などが必要であることがわかった。また、家族介護の現状分析を行った結果、1.一般世帯に住む要介護高齢者を介護する者のうち、約3割を男性が占めるようになってきた、2.同居の介護者による介護の頻度を見ると、介護の頻度で最も多いのは「必要なときに手を貸す程度」であり、2013年で42.0%を占める、3.同居介護者の続柄別に仕事ありの割合をみると、「子」「子の配偶者」では半数を超えていた、4.家族介護者が女性、高年齢の要介護者の場合、家族からの介護を受けやすいという傾向があるなどがわかった。
テーマ4に関し、地域包括ケアシステムが要介護高齢者のいる世帯の就業率および1ヶ月当たり医療費に及ぼす影響を分析した結果、地域包括ケアシステムは、要介護者のいる世帯の家族の介護負担を軽減して、要介護者のいるどの世帯についても介護のために働きに出ることのできなかった世帯員が働けるようになるほどの影響は現れなかったのに対して、1ヶ月当たりの医療費を低下させる影響があったことがわかった。介護離職を防ぐための介護休業の弾力的運用などの雇用政策と介護政策との連携強化が重要であると考えられた。
テーマ5に関し、都道府県ベース、市町村ベースでの人口・世帯・住宅・医療・介護・財政に関する総合データベースを整備した。
結論
地域包括ケアシステムを構築するためには、①人口・世帯動向を含む地域特性の把握、②地域包括ケアを構成する住まい、医療、介護、生活支援・介護予防の各領域の実態把握、③地域課題に対する解決策の検討と推進といった、市町村の地域マネジメント力強化に加えて、それをバックアップする都道府県の役割の強化、地域類型に応じた国の施策展開も重要となる。これを研究面から側面支援するためには、地域類型別の総合的な課題整理と対応策の提言が重要となる。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-02-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201501003B
報告書区分
総合
研究課題名
都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究
課題番号
H25-政策-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山内直人(大阪大学)
  • 園田眞理子(明治大学)
  • 井上由起子(日本社会事業大学)
  • 所 道彦(大阪市立大学)
  • 佐々井 司(福井県立大学)
  • 藤井 麻由(北海道教育大学)
  • 小野 太一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 藤原 朋子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 西森 和寛(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 鎌田 健司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 安藤 道人(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、人口学、保健学、建築学、社会学、経済学、公共政策学等の学際的な観点から、超高齢社会における地域包括ケア提供体制のあるべき姿を、地域特性や地域課題が異なる都市と地方別に明示した上で、実現に向けた具体的な政策手法の検討と政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
 本研究では5つのサブテーマ(1.先行事例分析、2.人口・世帯・住宅動向分析及び地域類型化の検討、3.医療・介護需要及び提供体制分析、4.世帯の経済・雇用状況分析、5.総合データベース構築)を設定し、これらテーマ毎に、現状分析、課題抽出、課題解決策の検討を行った。
 テーマ1に関し、先行研究の収集・分析、ヒアリング・視察を、テーマ2に関し、既存データをもとに、1)地域の類型化手法の開発、2)市町村別死亡者/出生者数の将来推計方法の開発、3)85歳以上世帯の将来推計、4)高齢者の人口移動分析、5)小地域将来人口推計方法の開発、6)サ高住の整備状況分析などを、テーマ3に関し、既存データやアンケートに基づき、1)介護人材の都道府県別需給推計、2)在宅医療実施診療所の配置とサービス範囲分析、3)OECD諸国におけるインフォーマルケア支援策の動向分析などを、テーマ4に関し、既存データに基づく地域の経済状況と高齢者の就業率の動向の分析などを、テーマ5に関し、人口・世帯/医療・介護/経済状況に関する都道府県版及び市町村版総合データベースの構築を実施し、複数の市町村の地域診断支援に活用した。
 平成25~26年度は、個別テーマに関する課題抽出・整理を実施し、最終年度に、個々の重要テーマに関するワークショップを開催し、課題と対応策の整理を行った。
結果と考察
 テーマ1に関し、様々な先進自治体を調査した結果、1)先進事例の最終形を見せるだけでなく、現在の状態に至ったプロセスやノウハウに関する情報提供が必要である、2)市町村の継続支援及び平準化を図るためには、都道府県の役割が重要であるなどがわかった。テーマ2に関し、高齢者の人口移動分析では、1)東京都は後期高齢者が大幅に転出超過であるのに対し、埼玉・千葉・神奈川では85歳以上で20‰を超える高い純移動率が確認された、2)東京都から転出した後期高齢者の約70%が埼玉・千葉・神奈川に転出していた、3)非大都市圏では、中心部での転入超過や非中心部における転出超過という、大都市圏域とは逆の傾向がみられたなどがわかった。また、サ高住調査では、1)月額費用が高い東京都では地価の高さから整備が進まず、月額費用が手頃で厚生年金層や共済年金層が比較的多い「それ以外の政令市と中核市」で堅調であった、2)東京では高額物件が38.6%と極めて多く、地方で低額物件が20%を超えていたなどがわかった。テーマ3に関し、1)訪問診療受給率をみると、「要介護1」4.0%に対し、「要介護4」23.8%、「要介護5」45.0%と、要介護3以降で受給率が急増していた、2)近畿地区A市の認知症者の出現率を性別年齢階級別にみると、65歳以上の認知症出現率は、男性5.4%、女性10.7%と女性の方が高く、年齢階級別では、80歳から出現率が急上昇していた、3)介護人材の需給分析では、2025年までに、生産年齢人口に占める介護職員の割合を1.44~1.90倍に増やさなければ、急増する介護需要に対応できないことがわかった。また、在宅医療実施診療所調査では、人口分布に従って在宅医療を実施している診療所が立地し、それにより所要時間で在宅サービスを提供する所在地から移動できる範囲が決まっていることがわかった。テーマ4に関し、1)第三次産業従業者割合が高くなると高齢者の就業率が低くなる傾向がみられた一方で,雇用形態は高齢者の就業率に必ずしも影響していなかった、2)1人当たり県内総生産の地域格差は近年縮小傾向がみられたなどがわかった。テーマ5に関し、平成25年度は都道府県ベースでの人口・世帯・住宅・医療・介護・財政に関する総合データベースを、平成26年度はさらに二次医療圏ベース及び市町村ベースで整備し、これらデータを、複数の市町村の地域診断支援に活用した。データの見せ方としては、小地域(中学校区、小学校区、集落ベース)の地図上でデータを見せる方法が有効であることがわかった。
結論
地域包括ケアシステムを構築するためには、①人口・世帯動向を含む地域特性の把握、②地域包括ケアを構成する住まい、医療、介護、生活支援・介護予防の各領域の実態把握、③地域課題に対する解決策の検討と推進といった、市町村の地域マネジメント力強化に加えて、それをバックアップする都道府県の役割の強化、地域類型に応じた国の施策展開も重要となる。これを研究面から側面支援するためには、地域類型別の総合的な課題整理と対応策の提言が重要となる。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201501003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、人口学、保健学、建築学、社会学、経済学、公共政策学等の学際的な観点から、超高齢社会における地域包括ケア提供体制の現状と課題を、地域特性や地域課題が異なる都市と地方別に明示することができた。
臨床的観点からの成果
医療と介護の連携が、地域包括ケア構築上の重要課題となっているが、アンケート調査や事例検討を通じて、現場レベルでの連携上の課題抽出と改善策の提案を行うことができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
研究代表者、研究分担者が委員となっている厚生労働省の各種委員会(社会保障審議会、介護報酬改定検証・研究委員会、地域包括ケア研究会、見える化検討委員会)において、本研究で得られた知見に関する情報提供や報告、提言を行った。
その他のインパクト
個々の重要テーマ(住宅とケア、生活支援、在宅医療、介護予防・リハビリテーション、介護人材確保、地方財政など)ごとに、政策担当者、研究者、実務家が参加するワークショップを開催し、課題と対応策の整理を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
地域包括ケア研究会にて、地域マネジメントに関する報告を実施した。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
政策担当者、研究者、実務家を交えたワークショップを、主なテーマごとに開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
西村周三
地域包括ケアのその先を見る
社会保険旬報 ,  (2590) , 18-22  (2015)
原著論文2
西村周三
都市部の人口高齢化と住宅政策
季刊社会保障研究 , 50 (3) , 263-272  (2014)
原著論文3
井上由起子
地域包括ケアシステムにおけるサービス付き高齢者向け住宅の課題-サービスの質を中心に-
季刊社会保障研究 , 50 (3) , 284-294  (2014)

公開日・更新日

公開日
2016-08-03
更新日
2018-06-25

収支報告書

文献番号
201501003Z