危険ドラッグを中心とした中枢神経系に作用する物質の迅速検出方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201451031A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグを中心とした中枢神経系に作用する物質の迅速検出方法の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 花尻 瑠理(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 鈴木 仁(東京都健康安全研究センター 薬事環境科学部医薬品研究科)
  • 佐藤正幸(北海道立衛生研究所)
  • 宮澤眞紀(神奈川県衛生研究所)
  • 棚橋高志(愛知県衛生研究所 衛生化学部)
  • 澤邊善之(大阪府立公衆衛生研究所 衛生化学部)
  • 氏家あけみ(宮武あけみ)(香川県環境保健研究センター)
  • 梶原淳睦(福岡県保健環境研究所 保健科学部生活化学課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
126,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
危険ドラッグの蔓延が大きな社会問題となっている。代表的な危険ドラッグ製品としては、粉末、液状、植物片の3製品が流通している。いずれの製品も含まれる危険ドラッグ自体が、健康被害を引き起こしている。こうした危険ドラッグの検出・同定には機器分析が必須であり、検査体制に関する現状把握が重要となっている。本研究では、危険ドラッグ流通・検出に関する基本情報把握のために、全国8か所の衛生研究所の協力を得て、危険ドラッグの流通状況および機器分析による解析状況を調べた。また、取締りや救急医療の現場では危険ドラッグの簡易検出手法の導入が望まれる。そこで、合成カンナビノイドおよびセロトニン系化合物の検出のために、樹立細胞を利用した検出手法に関する研究を行い、機器分析の検出データとの関連性について比較検討した。
研究方法
危険ドラッグの検出:地方衛生研究所より提供を受けた乾燥植物片製品について、CB1受容体発現安定細胞による合成カンナビノイドの検出感度に関する検討を行った。Chinese Hamster Ovary (CHO)細胞にヒトCB1受容体をトランスフェクションし、発現安定細胞株CHO-CB1細胞を確立した。本細胞において、蛍光基質を利用して細胞内カルシウム変動を測定し、CB1受容体活性化の指標とした。また、セロトニン5-HT2A受容体-エクオリン共発現細胞株および5-HT2A受容体-Gq/11経路の活性化状態をNFAT-luciferaseレポーター遺伝子によりモニターするアッセイ系を利用して、セロトニン受容体作用薬の検出感度を検討した。本セロトニン5-HT2A受容体発現安定細胞株を用いて、活性既知の麻薬DOIと新規流通活性未知危険ドラッグ成分4化合物のセロトニン受容体活性を評価した。機器分析:危険ドラッグ製品含有物質の分析は、主にフォトダイオードアレイ検出器付液体クロマトグラフィー(LC/PDA)、電子イオン化質量分析計付ガスクロマトグラフィー(GC/EI-MS)を用い、必要に応じて高分解能質量分析法(TOF/MS)及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法にて構造解析を行った。
結果と考察
危険ドラッグの検出:地方衛生研究所より提供を受けた乾燥植物片製品について、CB1受容体発現安定細胞による合成カンナビノイドの検出感度に関する検討を行った。35製品の解析を実施し、30製品からは合成カンナビノイド含有のシグナルが検出された。一方、5製品からはシグナルが検出されなかった。合成カンナビノイド検出についての機器分析との一致率は100%であり、CB1受容体発現安定細胞を利用した検出法の感度は極めて高いことが示された。セロトニン5-HT2A受容体発現安定細胞株を用いて、危険ドラッグ成分のセロトニン受容体活性を評価した。その結果、DOI >> Allylexcaline > 3C-E > bk-2C-Bの順で5-HT2A受容体の活性化が認められた。本アッセイに使用した細胞株は増殖機能を失った使い切りタイプのものであるが、細胞培養を必要とせず、直ちに発光基質の取り込みを行い、即日に活性評価を行うことが可能であった。細胞培養施設を持たない機関であっても、発光を検出する装置があれば活性の検出が可能であり、汎用性に優れていた。機器分析:解析に使用した製品の形状は、植物片(いわゆるハーブ)、粉末、液体であった。検出された物質は、合成カンナビノイド、カチノン系、フェネチルアミン系等であった。検出薬物数は1~2物質の製品が大半であった。製品から指定薬物が検出される場合、製品の買い上げ以降に指定された指定薬物であった。
結論
本研究では、全国8か所の衛生研究所の危険ドラッグ解析結果から、合成カンナビノイドおよびカチノン系化合物の流通が全国的規模で拡大していることが確認された。一方、製品によっては、タイプの異なる危険ドラッグが複数混在する場合も多く、製品の形状から有害作用を推測することは困難であった。また、セロトニン系化合物等の幻覚作用を示す薬物の混入も確認されており、依然として危険性の高い製品が流通していることが確認された。検出法開発の一環として、CB1受容体、5-HT2A受容体発現安定細胞を利用した検出法の感度について検討した。合成カンナビノイドおよびセロトニン系危険ドラッグの検出に応用可能であることが示唆された。蛍光や発光システムを利用して、危険ドラッグ(受容体作用薬)の作用強度を解析する評価システムは、危険ドラッグの中枢作用および有害作用発現の迅速かつ高感度な評価法として有用であり、簡易検出キット開発のシードとして利用可能であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201451031C

収支報告書

文献番号
201451031Z