文献情報
文献番号
201451017A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代抗体医薬品等の品質・安全性評価法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
- 津本 浩平(東京大学大学院 工学研究科)
- 伊東 祐二(鹿児島大学大学院 理工学研究科)
- 瀬筒 秀樹(独立行政法人農業生物資源研究所 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 多田 稔(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 )
- 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 )
- 橋井 則貴(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2013年医薬品世界売上高トップ10のうち6製品は抗体関連医薬品であり、この傾向は今後も続くと予想される。また、難病や希少疾患治療薬として、新規な構造、作用、製法を特徴とする次世代抗体医薬品にも期待が集まっている。新規な構造、作用、製法は、品質(構造、安定性)、及び安全性(薬理・免疫作用、動態、免疫原性、毒性)のリスク要因となる可能性も高いが、種特異性が高く適切な動物モデルがない抗体においては、未知のリスクが多く残されている。これらのリスクが治験中または市販後に有害反応として表れることを防ぐために、新規な構造、作用、製法と品質、安全性の関係を予測・評価する技術の開発が求められている。
本研究の目的は、次世代抗体医薬品の、1)構造、2)安定性、3)薬理・免疫作用、4)動態、 5)免疫原性、及び6)新規製法由来不純物等の毒性を評価・予測する技術を開発すること、並びに、各技術の連携により、新規な構造、作用、製法が要因となる品質・安全性上のリスクを評価し、リスク低減の考え方をまとめることである。
本研究の目的は、次世代抗体医薬品の、1)構造、2)安定性、3)薬理・免疫作用、4)動態、 5)免疫原性、及び6)新規製法由来不純物等の毒性を評価・予測する技術を開発すること、並びに、各技術の連携により、新規な構造、作用、製法が要因となる品質・安全性上のリスクを評価し、リスク低減の考え方をまとめることである。
研究方法
本研究は、(1)次世代抗体医薬品の試験的製造及び構造・特性解析技術等の開発、(2)新規構造特性と安定性の関係の評価、(3)抗体の分子特性に基づく薬理・免疫作用評価、(4)抗体の分子特性に基づく薬物動態評価、(5)抗体医薬品の免疫原性の評価、(6)新規製法由来不純物等の毒性の評価・予測の6つのサブテーマで構成されている。
研究初年度である平成26年度は、次世代抗体医薬品評価技術開発に向けて、改変型抗体の試験的製造を行うとともに、各サブグループにおいて評価技術の最適化を行った。また、新規製法により製造される次世代抗体医薬品の品質安全性評価に関する研究として、シングルユースシステムの供給者、使用者(製薬企業)、アカデミア、経産省MAB組合、国研等からなる分科会を構成し、バイオ医薬品の品質確保と安定供給に影響するシングルユース関連のリスクの抽出、リスク対応策の考案を中心に議論した。
研究初年度である平成26年度は、次世代抗体医薬品評価技術開発に向けて、改変型抗体の試験的製造を行うとともに、各サブグループにおいて評価技術の最適化を行った。また、新規製法により製造される次世代抗体医薬品の品質安全性評価に関する研究として、シングルユースシステムの供給者、使用者(製薬企業)、アカデミア、経産省MAB組合、国研等からなる分科会を構成し、バイオ医薬品の品質確保と安定供給に影響するシングルユース関連のリスクの抽出、リスク対応策の考案を中心に議論した。
結果と考察
次世代抗体医薬品評価技術開発に向け、各サブテーマにおいて以下の成果を得た。
・Tgカイコの繭及び中部絹糸腺由来の糖鎖改変型抗CD20抗体の試験的製造を行って、糖鎖改変が 種々の生物活性に及ぼす影響を明らかにした。さらに、発現系の改良により、従来の6~8倍の組換えタンパク質生産量の増加に成功した。
・Tgカイコ由来糖鎖改変型抗CD20抗体のHDX/MSにより、抗CD20抗体では糖鎖改変に伴い、CH2領域の構造安定性が低下することを明らかにした。
・物理化学溶液論的観点として、フィールドフローフラクショネーションシステムと粒子画像イメージアナライザーから、タンパク質の安定性の指標の1つである不均一性について評価を行い、その有用性が示唆された。
・Fcγ受容体発現レポーター細胞を用いたFcγ受容体活性化能評価系、及び、hPBMCを用いたサイトカイン放出評価系は、抗体の改変に伴う目的あるいは目的外の薬理作用、有害事象の発現に繋がる免疫作用の評価・予測に有用であることを明らかにした。
・改変型抗体の動態解析法として、FRET型標識体を用いて分解の程度を解析するためのacceptor photobleaching法の解析条件を最適化した。
・健康人由来の抗体ファージライブラリを用い、抗体医薬品に対する自己抗体を、簡便かつ迅速に特定する手法を提案した。この手法は、低頻度で存在すると考えられる抗体ライブラリ中の特異抗体の特定に、特に威力を発揮すると考えられ、今後のバイオ医薬品の抗原性予測手法の開発において、重要な手法となると考えられる。
・シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保及び安定供給に関する要件を明らかにし、提言案を作成した。今後、分科会での議論を継続し、提言を最終化して、公表する予定である。
・Tgカイコの繭及び中部絹糸腺由来の糖鎖改変型抗CD20抗体の試験的製造を行って、糖鎖改変が 種々の生物活性に及ぼす影響を明らかにした。さらに、発現系の改良により、従来の6~8倍の組換えタンパク質生産量の増加に成功した。
・Tgカイコ由来糖鎖改変型抗CD20抗体のHDX/MSにより、抗CD20抗体では糖鎖改変に伴い、CH2領域の構造安定性が低下することを明らかにした。
・物理化学溶液論的観点として、フィールドフローフラクショネーションシステムと粒子画像イメージアナライザーから、タンパク質の安定性の指標の1つである不均一性について評価を行い、その有用性が示唆された。
・Fcγ受容体発現レポーター細胞を用いたFcγ受容体活性化能評価系、及び、hPBMCを用いたサイトカイン放出評価系は、抗体の改変に伴う目的あるいは目的外の薬理作用、有害事象の発現に繋がる免疫作用の評価・予測に有用であることを明らかにした。
・改変型抗体の動態解析法として、FRET型標識体を用いて分解の程度を解析するためのacceptor photobleaching法の解析条件を最適化した。
・健康人由来の抗体ファージライブラリを用い、抗体医薬品に対する自己抗体を、簡便かつ迅速に特定する手法を提案した。この手法は、低頻度で存在すると考えられる抗体ライブラリ中の特異抗体の特定に、特に威力を発揮すると考えられ、今後のバイオ医薬品の抗原性予測手法の開発において、重要な手法となると考えられる。
・シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保及び安定供給に関する要件を明らかにし、提言案を作成した。今後、分科会での議論を継続し、提言を最終化して、公表する予定である。
結論
各サブテーマにおいて当初の計画通りに順調に研究が実施されており、本研究の目的である次世代抗体医薬品等の品質・安全性評価法の開発にむけて着実に研究が進展しているといえる。特に新規製法により製造される次世代抗体医薬品の品質安全性評価に関する研究においては研究計画初年度において既に政策提言の取りまとめに着手しており、本研究班の本年度の成果として特筆すべき点である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-29
更新日
-