ワクチン接種と重篤副反応の発生に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201451008A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン接種と重篤副反応の発生に関する疫学研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所 )
  • 中野 貴司(川崎医科大学附属川崎病院 小児科)
  • 越田 理恵(金沢市保健局)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 安井 良則(大阪府済生会中津病院 臨床教育部)
  • 森 雅亮(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 落合 雅樹(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年3月に予防接種法の一部が改正され、同年4月から予防接種後副反応報告が医師に義務付けられた。接種後の一定期間に、政令で定められた症状が認められた場合や、重篤な有害事象が認められた場合は、厚生労働省に直接報告することになった(平成26年11月25日から(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)に送付先変更)。
本研究班では、海外の情報を収集するとともに、重篤な副反応として血小板減少性紫斑病を取り上げ、報告された内容を丁寧に検討することを目的とする。
また、予防接種後副反応とワクチン品質との関連性は、多くの場合不明であり十分な評価がされていないことから、予防接種後副反応報告等から得られる臨床的な情報とワクチンの品質に係る情報をリンクして解析し、関連性を検討することが求められるが、発生頻度が稀な副反応に関しては、1例ずつの評価では因果関係を科学的に評価することは困難である。そこで、本研究班の検討課題である血小板減少性紫斑病について、ワクチンとの関連を検討するために疫学的な解析を行うことを目的とする。
研究方法
1.ワクチン接種後の血小板減少性紫斑病について、その発生頻度を明らかにする疫学研究デザイン:観察研究 記述疫学。全ワクチン接種者について、該当症例数の頻度を観察する。症例は①副反応届出による把握と②全血小板減少性紫斑病中の該当症例の2通りが考えられる。副反応報告書による把握のみでは届け出が全数なされていない可能性があり過小評価となる可能性があるが、全血小板減少性紫斑病中の該当症例による把握では全ての血小板減少性紫斑病症例の把握が困難であることから、実行可能性の高い副反応報告書による把握とする。実際に報告された症例について、検討する。
2.ワクチン接種後血小板減少性紫斑病発症に関連する要因の解明のための疫学研究デザイン:症例対照研究。症例は血小板減少性紫斑病と診断された患者。対照は患者と受診医療機関、受診日(前後4週間)、性、年齢をマッチングした血小板減少性紫斑病以外の患者で、症例と対照の比は1対2とする。
3.海外文献の検討:海外の情報を収集するとともに、わが国の制度と比較し、わが国に不足している制度を明らかにして、それらの構築について検討する。
結果と考察
予防接種後副反応として報告された血小板減少性紫斑病について詳細に検討した。特定のワクチンあるいはワクチンロットに異常な集積は認められなかったが、肺炎球菌結合型(PCV)又はインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを含む単独接種又は同時接種後の発生が全体の報告数の40%を占めた。年齢群としては、0歳、特に2-4か月での報告が多く、次いで1歳での報告が多かった。この年齢は、受けるワクチンの種類と頻度が多いため、分母情報を加味した検討が必要であり、副反応発生頻度等を解析するためには、接種ワクチン(同時接種における接種ワクチンの組合せ及び製造番号を含む)や被接種者数等の状況を正確に把握する必要があると考えられた。
血小板減少性紫斑病の症例定義とレベル(重症度)の基準作成を行い、国立感染症研究所ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会(受付番号:561)で承認を得て(平成27年1月22日)、症例対照研究に関する協力依頼を開始した。調査結果の入力、集計、解析を容易にするために、ウエブ入力が可能なシステムの構築を行った。
海外情報を収集した結果、予防接種後安全性評価体制には4本柱があり、わが国では探知されたシグナルの真偽を立証するためのデータベース整備に不足があることが明らかとなり、次年度の研究課題とした。また、血小板減少性紫斑病に関する海外文献の検討から、小児に多く男性に多いこと、先行感染を有する割合が多いこと、重症の出血症状を呈した症例は小児で多く、血小板数が20,000/μL未満であった症例も小児で多いことが明らかとなった。成人の血小板減少性紫斑病と種々のワクチンの関与の可能性について、海外で実施された症例対照研究では、一般的なワクチン接種と血小板減少性紫斑病の発症リスクとの間に関連は認められなかった。本研究班でわが国の状況を検討する。
結論
平成25年4月以降に予防接種後副反応として報告された血小板減少性紫斑病について詳細に検討し報告した。また、海外情報を入手するとともに、わが国の予防接種後副反応サーベイランスにおける問題点の整理を行った。血小板減少性紫斑病とワクチンとの関連を明らかにするために、症例対照研究を計画し、国立感染症研究所ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会の承認を得た。医療機関に対して研究に関する協力依頼を開始し、結果入力、集計、解析を容易にするためにウエブ入力システムの構築を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201451008C

収支報告書

文献番号
201451008Z