妊娠・授乳期における医療用医薬品の使用上の注意の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201451002A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠・授乳期における医療用医薬品の使用上の注意の在り方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濱田 洋実(筑波大学医学医療系 総合周産期医学)
研究分担者(所属機関)
  • 林 昌洋(虎の門病院 薬剤部)
  • 村島 温子(国立成育医療研究センター病院 周産期・母性診療センター)
  • 水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科 産科・生殖医学分野)
  • 小畠 真奈(安岡 真奈)(筑波大学医学医療系 総合周産期医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業の目的は、妊婦・授乳婦等への医療用医薬品の使用に係る情報の充実を目指し、国内外の研究成果に加えて、これらの女性に投与が必須または推奨される医薬品や、投与に際して注意が必要な医薬品等を明らかにして、それらを学会ガイドラインや添付文書の使用上の注意の改訂につなげることである。
研究方法
上記目的達成のために、今年度は以下の研究を遂行した。
【文献調査・データベース作成および情報発信】
1)妊娠・授乳期の医療用医薬品使用に関して、国内外の文献を網羅的に収集し各論文の内容の吟味を行った。特に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)に注目し、妊娠第2・3半期以降までARB曝露を受けた胎児83例の予後について解析した。
2)具体的な医薬品として、新規ノイラミニダーゼ阻害薬ラニナミビルに注目して、妊娠転帰への影響を検討した。インフルエンザ治療のためにラニナミビルが投与された妊婦112例における妊娠転帰を後方視的に検討し、流産、早産、胎児形態異常ならびに治療を要した新生児疾病罹患率などを評価した。
3)妊婦薬物療法に関する適正使用情報のあり方を明らかにするために、日本、米国、英国の医療用医薬品添付文書記載内容を調査した。
【産婦人科診療ガイドライン-産科編2014収載のガイドライン項目の有用性調査準備】
1)新しい産婦人科診療ガイドラインに妊娠・授乳期における医療用医薬品の使用上の注意に関する適正情報を収載することを目的として、現行の産婦人科診療ガイドライン-産科編2014収載のガイドライン項目に関する産婦人科医師の意識調査を行った。
【処方実態調査・データベース作成および情報発信】
1)上記の【産婦人科診療ガイドライン-産科編2014収載のガイドライン項目の有用性調査準備】の研究成果をも踏まえて、ガイドラインに追加記載すべき医薬品を検討するために、特に妊娠初期の女性に対する処方実態調査を行った。本調査は、何らかの医薬品投与を受けている可能性の高い総合周産期母子医療センターを受診した妊娠女性を対象とすることにした。
2)さらに「妊娠と薬情報センター」の相談実態の現状を解析した。
【産婦人科診療ガイドライン-産科編の改正案の検討】
上記の一連の成果を踏まえて、研究代表者および全研究分担者による総合検討会を実施し、現時点での産婦人科診療ガイドライン-産科編の改正案を検討した。
結果と考察
【文献調査・データベース作成および情報発信】
1)妊婦ARB服用発見時に児状態が急速遂娩適応とならなかった場合や羊水量が正常であった場合、あるいはARB中止後羊水量が回復した場合には良好な児予後が期待できることが明らかとなった。
2)妊娠中に投与されたラニナミビルは児予後も含めた妊娠転帰不良例を増加させないことが示唆された。
3)米国、英国では市販後の薬剤疫学研究の成績に基づき添付文書の記載が充実化されており、我が国の添付文書とは大きく異なっていた。これは、わが国における医薬品の適正使用を推進する上で大きな問題と考えられた。医学・薬学専門家の意見を反映して添付文書の記載内容の充実化が図られることが必要と考えられた。
なお、これら1)~3)で得られたデータをデータベース化することができた。
【産婦人科診療ガイドライン-産科編2014収載のガイドライン項目の有用性調査準備】
1)現行のガイドライン項目については、いずれも90%以上の医師が有用と回答した。ガイドラインで推奨されている国立成育医療センター内「妊娠と薬情報センター」については、49%の医師が利用したことがあると回答し、同websiteの「授乳と薬」の項目については48%の医師が参照したことがあると回答した。さらに、ガイドラインに追加収載を希望する複数の医薬品が挙げられた。
【処方実態調査・データベース作成および情報発信】
1)2014年6月16日~11月15日に筑波大学附属病院で分娩した妊婦415名のうち、妊娠16週未満に当院を初診した235名について診療録を後方視的に検討し、その成果をもとにデータベース化を開始することができた。
2)「妊娠と薬情報センター」の相談実態から妊婦の医薬品使用状況(処方実態)が明らかとなった。
これら1)と2)の処方実態をデータベース化することができた。
【産婦人科診療ガイドライン-産科編の改正案の検討】
上記の一連の成果から、現時点での産婦人科診療ガイドライン-産科編の改正案を示すことができた。
結論
今年度の研究成果により、学会ガイドラインの改訂につながる結果が得られ、現時点での産婦人科診療ガイドライン-産科編の改正案を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201451002C

収支報告書

文献番号
201451002Z