文献情報
文献番号
201450010A
報告書区分
総括
研究課題名
非侵襲的高精細温熱制御治療装置による加熱量の定量化による灸治療のエビデンス創出
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
関 隆志(東北大学 サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター 高齢者高次脳医学研究部門)
研究分担者(所属機関)
- 圓山 重直(東北大学 流体科学研究所)
- 岡島 淳之介(東北大学 流体科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,228,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は、0.1℃単位の温度制御を精密におこなう温熱治療器を開発し、臨床に用いてきた.しかしながら、加熱面の精密な温度制御はできても、人体に与える熱を定量的に評価・制御することはできていなかった.同じ温度でも与える熱量が異なれば加熱面の温度が同じでも治療効果が異なる可能性がある.そこで本研究では,長時間加熱による生体の熱的応答を定量的に明らかにすることを目的とする.
研究方法
実験1:血液灌流率の温度依存性
腹部を任意の温度で 10 分間加熱し,その際の熱流束を計測することで,腹部の熱的特性の温度依存性や個体差を評価する. 21~30歳の健常男性16名の腹部を32℃で10分間加熱したときの熱流束を測定する。
実験2:30 分加熱時の血液灌流率の時間変化
腹部を任意の温度で 30 分間加熱し,その際の熱流束の時間変化を計測することで,腹部の熱的特性の時間変化を評価することを目的とする. 20代の健常男性6名の腹部を32℃で30分間加熱したときの熱流束を測定する。
腹部を任意の温度で 10 分間加熱し,その際の熱流束を計測することで,腹部の熱的特性の温度依存性や個体差を評価する. 21~30歳の健常男性16名の腹部を32℃で10分間加熱したときの熱流束を測定する。
実験2:30 分加熱時の血液灌流率の時間変化
腹部を任意の温度で 30 分間加熱し,その際の熱流束の時間変化を計測することで,腹部の熱的特性の時間変化を評価することを目的とする. 20代の健常男性6名の腹部を32℃で30分間加熱したときの熱流束を測定する。
結果と考察
実験1:血液灌流率の温度依存性
腹部表面温度は加熱開始1分間で昇温し,その後一定値で安定した.一方で熱流束は加熱開始直後に急激に上昇し,減少した後,一定値をとった.
この実験結果から高い温度で施術すると腹部の血行が良くなるという経験則を定量的に説明できた.血液灌流率およびその温度依存性の個人差も明確に観察され,最適な温熱治療時の腹部表面温度は被験者毎に異なるという経験則の裏付けもできた.
実験2:30 分加熱時の血液灌流率の時間変化
腹部表面温度が高いほど, 高い熱流束の値を得ていることがわかる. 腹部表面温度が 39.5°C のとき,600 秒以降, 熱流束は一定値へ収束していることがわかる.その一方で,腹部表面温度が 40°C 以上の場合は時間の経過とともに,特に 600s 経過後,熱流束が増加している. すなわち腹部の熱的特性が時間とともに変化していることを表している. 腹部表面温度の違いで 30 分後の熱流束は大きく異なることが実験から示された.熱流束の違いは 血液灌流率の違いに相当するので,30 分後の血液灌流率が大きく変化することを示唆している.
腹部表面温度は加熱開始1分間で昇温し,その後一定値で安定した.一方で熱流束は加熱開始直後に急激に上昇し,減少した後,一定値をとった.
この実験結果から高い温度で施術すると腹部の血行が良くなるという経験則を定量的に説明できた.血液灌流率およびその温度依存性の個人差も明確に観察され,最適な温熱治療時の腹部表面温度は被験者毎に異なるという経験則の裏付けもできた.
実験2:30 分加熱時の血液灌流率の時間変化
腹部表面温度が高いほど, 高い熱流束の値を得ていることがわかる. 腹部表面温度が 39.5°C のとき,600 秒以降, 熱流束は一定値へ収束していることがわかる.その一方で,腹部表面温度が 40°C 以上の場合は時間の経過とともに,特に 600s 経過後,熱流束が増加している. すなわち腹部の熱的特性が時間とともに変化していることを表している. 腹部表面温度の違いで 30 分後の熱流束は大きく異なることが実験から示された.熱流束の違いは 血液灌流率の違いに相当するので,30 分後の血液灌流率が大きく変化することを示唆している.
結論
温熱治療の機序の解明に貢献できるデータになることが期待できる.さらに,カラードップラー法による動脈の血流量測定などと組み合わせて評価することにより,体表面から超音波エコーなどよりも容易に臓器や組織の血流量を推測できる手法としての発展も期待できる.
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
-