文献情報
文献番号
201450009A
報告書区分
総括
研究課題名
頭頸部がん放射線療法による口腔乾燥症に対する鍼治療を用いた統合医療的介入の効果
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 壽記(大阪大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 前田 和久(大阪大学大学院医学系研究科)
- 林 紀行(大阪大学大学院医学系研究科)
- 福田 文彦(明治国際医療大学)
- 山本 佳史(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
頭頸部がんに対する放射線療法は、腫瘍感受性が高く、手術療法に比し低侵襲であることから患者負担が少なく高齢者にも適応できる治療法である。一方、口腔粘膜炎や皮膚炎、唾液分泌障害、骨髄炎、骨壊死など様々な副作用を生じ患者のQOLは著しく低下する。中でも、唾液分泌障害は口腔乾燥を生じ、咀嚼・嚥下、味覚などの機能障害だけでなく、齲歯や口臭の原因ともなる。この唾液分泌障害は頭頸部への放射線療法を受けた患者の90%以上に認められ、治療後も長らく持続して日常生活上でのQOLの低下を引き起こしている。しかし、口腔乾燥症状に対しては含嗽剤やトローチ、口腔用軟膏、人口唾液、ガムなどの対症療法が殆どであり、エビデンスにも乏しいのが現状である。
我々は、これまでに有効な治療法のない、がん治療の有害事象に対し症状軽減やQOL向上を目的とした、鍼治療による統合医療的アプローチを実施してきた。現在までに、化学療法(タキサン系)による末梢神経障害(しびれ、痛み)に対して、症状軽減や予防効果を明らかにしてきた。本邦では病態は異なるが、シェーグレン症候群の口腔乾燥症に対する鍼治療の有効性が報告されているが、放射線療法による口腔乾燥症に対する鍼治療の効果については、これまでに報告はない。海外では2、3の症例報告がされているが、症例数が少なく試験デザインが不十分であり、また治療部位や治療開始時期が一定せず、安全性に関する記載もみられない。また、鍼治療の機序としては、施術局所での血流増加とそれによる神経再生が報告されている。
そこで、本研究では頭頸部がん患者の放射線療法後の口腔乾燥症状(唾液分泌障害)に対して、鍼治療の臨床試験を実施し、その安全性ならびに有効性を検証することを目的とした。
我々は、これまでに有効な治療法のない、がん治療の有害事象に対し症状軽減やQOL向上を目的とした、鍼治療による統合医療的アプローチを実施してきた。現在までに、化学療法(タキサン系)による末梢神経障害(しびれ、痛み)に対して、症状軽減や予防効果を明らかにしてきた。本邦では病態は異なるが、シェーグレン症候群の口腔乾燥症に対する鍼治療の有効性が報告されているが、放射線療法による口腔乾燥症に対する鍼治療の効果については、これまでに報告はない。海外では2、3の症例報告がされているが、症例数が少なく試験デザインが不十分であり、また治療部位や治療開始時期が一定せず、安全性に関する記載もみられない。また、鍼治療の機序としては、施術局所での血流増加とそれによる神経再生が報告されている。
そこで、本研究では頭頸部がん患者の放射線療法後の口腔乾燥症状(唾液分泌障害)に対して、鍼治療の臨床試験を実施し、その安全性ならびに有効性を検証することを目的とした。
研究方法
鍼治療の頻度は1週間に1回で8週間の合計8回行った。治療部位は、これまでの放射線療法後の口腔乾燥症状に対する鍼治療の報告で顔面・頸部の経穴(ツボ)でよく用いられていた部位およびシェーグレン症候群による口腔乾燥症状に対する鍼治療で用いられていた部位を参考に経穴の選択を行った。治療部位としては大迎(ST5)、頬車(ST6)、下関(ST7)、翳風(TE17)、天容(SI17)を用いた。下関、翳風に関しては鍼治療2回目以降、低周波鍼通電療法を行った。鍼はセイリン社製ディスポーザブル鍼40mm 20号鍼のLc Typeを用いた。
主要評価項目として、安全性の評価は鍼治療時の医師による問診および鍼灸師が行った。自覚症状の変化は、口渇・咀嚼・嚥下・味覚をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて行った。
副次評価項目として、唾液量は2分間のサクソンテストを用い、QOL評価はXerostomia Inventory(XI)、MDアンダーソン症状評価表日本語版(MDASI-J)、QOL-RTI(Quality of Life Radiation Therapy Instrument)日本語版を用いた。
評価時期はVAS、サクソンテストは毎回の治療時に行い、それ以外の評価は治療開始1週間前、1診目、治療終了1週間後に行った。
なお、本研究は大阪大学医学部附属病院臨床研究倫理審査委員会の承認(13122-2)を得て実施した。
主要評価項目として、安全性の評価は鍼治療時の医師による問診および鍼灸師が行った。自覚症状の変化は、口渇・咀嚼・嚥下・味覚をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて行った。
副次評価項目として、唾液量は2分間のサクソンテストを用い、QOL評価はXerostomia Inventory(XI)、MDアンダーソン症状評価表日本語版(MDASI-J)、QOL-RTI(Quality of Life Radiation Therapy Instrument)日本語版を用いた。
評価時期はVAS、サクソンテストは毎回の治療時に行い、それ以外の評価は治療開始1週間前、1診目、治療終了1週間後に行った。
なお、本研究は大阪大学医学部附属病院臨床研究倫理審査委員会の承認(13122-2)を得て実施した。
結果と考察
1.患者背景
患者は男性10名、女性3名で平均年齢は63.6 ± 11.0歳(mean ± SD)であり、がんの部位は上咽頭が2例、中咽頭が4例、下咽頭が3例、喉頭が2例、その他が2例であった。総放射線量は60-70Gyであり、鍼治療を開始するまでの期間は2-13か月であった。
2.安全性について
抜鍼時の軽微な出血はあったが、施術部位の内出血や治療後の倦怠感も認められなかった。また、顔面神経の損傷もなかった。
3.自覚症状について
自覚症状の内、口渇及び味覚については有意な改善を認めたが、咀嚼及び嚥下については有意な変化はみられなかった。
4.QOLについて
QOLで用いたXIは口腔や鼻粘膜などの乾燥状態であるが、有意な変化を認めなかった。
MDASI-Jはがん患者の症状の強さとそれらによる生活の支障の項目からなっており、症状の強さは治療前後で有意な改善を示したが、生活の支障については変化を認めなかった。
QOL-RTIは放射線治療を受けた患者に対するQOL評価であり、全般用と頭頸部用の項目からなっており、全般用では治療前後では有意な変化は認められなかったが、頭頸部用では有意な改善を認めた。
5.唾液量について
唾液量は治療前に比し有意に増加した。
患者は男性10名、女性3名で平均年齢は63.6 ± 11.0歳(mean ± SD)であり、がんの部位は上咽頭が2例、中咽頭が4例、下咽頭が3例、喉頭が2例、その他が2例であった。総放射線量は60-70Gyであり、鍼治療を開始するまでの期間は2-13か月であった。
2.安全性について
抜鍼時の軽微な出血はあったが、施術部位の内出血や治療後の倦怠感も認められなかった。また、顔面神経の損傷もなかった。
3.自覚症状について
自覚症状の内、口渇及び味覚については有意な改善を認めたが、咀嚼及び嚥下については有意な変化はみられなかった。
4.QOLについて
QOLで用いたXIは口腔や鼻粘膜などの乾燥状態であるが、有意な変化を認めなかった。
MDASI-Jはがん患者の症状の強さとそれらによる生活の支障の項目からなっており、症状の強さは治療前後で有意な改善を示したが、生活の支障については変化を認めなかった。
QOL-RTIは放射線治療を受けた患者に対するQOL評価であり、全般用と頭頸部用の項目からなっており、全般用では治療前後では有意な変化は認められなかったが、頭頸部用では有意な改善を認めた。
5.唾液量について
唾液量は治療前に比し有意に増加した。
結論
頭頸部がん患者への放射線療法後の口腔乾燥症状に対する頭頸部への鍼治療は安全で自覚症状の改善やQOLの向上に繋がるものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2016-02-12
更新日
-