文献情報
文献番号
201449012A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の抗ウイルス治療法選択を目的とした新規検査系に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 文孝(虎の門病院 肝臓センター)
研究分担者(所属機関)
- 狩野 吉康(札幌厚生病院 消化器科)
- 前川 伸哉(山梨大学医学部 第一内科)
- 宇都 浩文(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 消化器疾患・生活習慣病学)
- 平賀 伸彦(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 消化器・代謝内科学 肝臓病学)
- 荒井 邦明(金沢大学付属病院 消化器内科)
- 瀬崎 ひとみ(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
- 小松 通治(信州大学医学部内科学 第二教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
C型慢性肝疾患の治療は近年ウイルス蛋白を直接阻害するDirect acting antivirals (DAAs) による治療が開始され、インターフェロン(IFN)に抵抗性の症例や合併症にてIFN療法が困難な症例にIFNフリーの治療であるプロテアーゼ阻害剤とNS5A阻害剤の内服治療が開始されている。この際NS3, NS5A領域の治療前における遺伝子変異(耐性ウイルス)の存在はDAAsの治療効果を予測する因子となることが報告されている。本研究は、HCV感染例を対象とし、新規薬剤であるDAAs等の治療を行う際の治療効果に関係するHCV遺伝子変異の新規測定系の確立と臨床応用を目的とする。
研究方法
現在C型肝炎の治療としてプロテアーゼ阻害剤とペグインターフェロン+リバビリン併用療法が行なわれているが、インターフェロン不適格/不耐容例およびインターフェロン療法の無効例(non response)にはプロテアーゼ阻害剤、NS5A阻害剤やポリメラーゼ阻害剤を組み合わせたIFNフリーの治療が行われている。しかし、これらの薬剤は、NS3, NS5A領域の治療前における遺伝子変異の存在がDAAsの治療効果を予測する因子となることが報告されている。今年度は、新規測定系であるInvader 法 NS5A aaY93H 相対定量系の測定の確立とともに変異測定結果とNS5A阻害剤(Daclatasvir;DCV)、プロテアーゼ阻害剤(Asunaplevir;ASV)併用療法の治療効果の検討を研究班でおこなった。さらに各業務担当者の創意工夫に基づいて、それぞれの研究を施行した。
結果と考察
IFNフリーの新規治療薬であるDAAs治療の効果に関係するNS5A領域aaY93Hの変異を測定するInvader法による相対定量系を確立した。この測定系は、従来のPCR-direct sequence法よりも簡便、安価でかつ定量測定可能な新規検査系である。
この測定系を用いてDCVとASV併用療法を施行しSVR判定可能な130例において治療前の血清よりInvader 法にてNS5A-Y93H変異の相対定量測定を行った。治療前Y93H相対定量が陰性(変異型混在比率;<1%)であった症例では97%(92/95)のSVR率であり非常に高率な効果が得られた。またaaY93H相対定量値とSVR率にも相関が認められた。さらにNS3-D168EまたはNS5A-L31Mの変異を認めず、治療前Y93H相対定量系が陰性(<1%)であった症例では100%(92/92)の予測率であり、耐性ウイルス測定の重要性が示された。特にDCV+ASV治療においてはNS5A-Y93の耐性変異率が27%で認められており、この領域の測定は治療効果予測に重要である。
一方PCR Direct-sequence法でのNS5A-Y93H変異の測定とInvader assay相対定量測定との測定結果の一致率は96%(125/130)であった。Direct-sequence法で耐性ウイルスが検出されずnon-SVRになった1例ではY93H相対定量系で耐性ウイルスが検出され(5%)、Invader法の有用性が示された。
またInvader 法定性系NS3-D168E/T/V、NS5A-L31M/V測定では、陽性例の治療効果との関係は示されたが、弱陽性例ではSVR例が多く認められ今後測定系の改良が必要と考えられた。
この測定系を用いてDCVとASV併用療法を施行しSVR判定可能な130例において治療前の血清よりInvader 法にてNS5A-Y93H変異の相対定量測定を行った。治療前Y93H相対定量が陰性(変異型混在比率;<1%)であった症例では97%(92/95)のSVR率であり非常に高率な効果が得られた。またaaY93H相対定量値とSVR率にも相関が認められた。さらにNS3-D168EまたはNS5A-L31Mの変異を認めず、治療前Y93H相対定量系が陰性(<1%)であった症例では100%(92/92)の予測率であり、耐性ウイルス測定の重要性が示された。特にDCV+ASV治療においてはNS5A-Y93の耐性変異率が27%で認められており、この領域の測定は治療効果予測に重要である。
一方PCR Direct-sequence法でのNS5A-Y93H変異の測定とInvader assay相対定量測定との測定結果の一致率は96%(125/130)であった。Direct-sequence法で耐性ウイルスが検出されずnon-SVRになった1例ではY93H相対定量系で耐性ウイルスが検出され(5%)、Invader法の有用性が示された。
またInvader 法定性系NS3-D168E/T/V、NS5A-L31M/V測定では、陽性例の治療効果との関係は示されたが、弱陽性例ではSVR例が多く認められ今後測定系の改良が必要と考えられた。
結論
IFNフリーの新規治療薬であるDAAs治療の効果に関係するNS5A領域Y93Hの変異を測定するInvader法による相対定量系を確立した。この測定系を用いたDCV+ASV治療の治験症例の成績を解析し、測定系の有用性を認めた。この測定系は、従来のPCR-direct sequence法よりも簡便、安価でかつ定量測定可能な新規検査系であり、IFNフリーの内服治療(DCV+ASV等)の効果予測に重要な情報を提供できる。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-