文献情報
文献番号
201449006A
報告書区分
総括
研究課題名
肝疾患病態指標血清マーカーの開発と低侵襲かつ効率的に評価・予測する新規検査系の実用化
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
成松 久(独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖創薬技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
- 梶 裕之(独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖創薬技術研究センター)
- 久野 敦(独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖創薬技術研究センター)
- 栂谷内 晶(独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖創薬技術研究センター)
- 佐藤 隆(独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖創薬技術研究センター)
- 伊藤 浩美(福島県立医科大学 医学部 生化学講座)
- 末松 誠(慶應義塾大学 医学部 医化学教室)
- 坂元 亨宇(慶應義塾大学 医学部 病理学教室)
- 調 憲(国立大学法人九州大学大学院 医学研究院 消化器・総合外科学分野(第二外科))
- 是永 匡紹(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
- 武冨 紹信(北海道大学大学院 医学研究科 外科学講座 消化器外科学分野I(第一外科))
- 髭 修平(北海道厚生農業協同組合連合会札幌厚生病院 第三消化器内科)
- 上野 義之(国立大学法人山形大学 医学部 内科学第二講座(消化器内科学))
- 泉 並木(日本赤十字社武蔵野赤十字病院 消化器科)
- 渡辺 純夫(順天堂大学 医学部 消化器内科)
- 齋藤 英胤(慶應義塾大学大学院 薬学研究科 薬物治療学教室)
- 橋本 悦子(東京女子医科大学 医学部 消化器内科)
- 松本 晶博(国立大学法人信州大学医学部付属病院 肝疾患診療相談センター)
- 熊田 卓(大垣市民病院 消化器内科)
- 米田 政志(学校法人愛知医科大学 医学部 内科学講座(消化器内科))
- 伊藤 清顕(学校法人愛知医科大学 医学部 内科学講座(消化器内科))
- 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
- 阿部 雅則(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
- 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
C型慢性肝炎患者の多くは、肝線維化が進展し、肝硬変を経て、やがて肝がんを発症する。この慢性肝炎の治療には抗ウイルス療法が適用されるが、その効果判定や肝硬変、肝がんハイリスク群の囲い込みには肝線維化の程度を知ることが重要である。しかしその判定は高侵襲性の生検によるため、臨床上の隘路となっている。また、現行の肝がんマーカーでは、早期発見は難しい。我々はこれまでに肝臓由来血清糖タンパク質の糖鎖構造が、肝疾患の進展に伴って変化することに着目し、独自の糖鎖バイオマーカー開発プラットフォームにより肝線維化マーカーを実用化してきた。本研究では、肝細胞がんなど異なる目的のマーカー開発のため、関連技術を改良・最適化すると共に、新たなマーカーの探索、正当性検証を経て、実用化することを目的とする。
研究方法
1)マーカー探索班:分子病態マーカーを適宜併用し、客観的な指標によって病理学的に規定された組織標本のきわめて微小な領域(<0.5mm2)をレーザーマイクロダイセクションにより単離し、レクチンアレイによる比較糖鎖解析で、肝がんに特徴的な糖鎖変化を検出すると同時に、最適なプローブ(レクチン)を選抜する。この実験で適当なプローブレクチンが見出され、適用可能な組織試料が入手可能であるなら、標的糖タンパク質の同定と構造検証を行う。その他に技術開発として、本年度は培養肝がん細胞やマウス肝臓をモデル試料として、質量分析による糖タンパク質同定、糖鎖構造分析技術の微小化、高感度化、高効率化を進める。
2)キット開発班:肝硬変の予後予測を可能とする血清バイオマーカーの迅速測定系を開発する。安定な測定を可能にするキャリブレーターを作製する技術を、特定糖鎖を有するリコンビナント糖タンパク質合成ノウハウをもとに開発する。
3)バリデーション班:国立国際医療研究センター肝炎情報センターを中核とした15施設の共同研究体制により、臨床情報が整った5,000検体レベルのライブラリを維持し、多施設多検体解析を進める。検討されるマーカーに応じて使用する検体を組み替え、複数の検討項目を起案、実施する。本年度は肝硬変予後予測マーカーについてライブラリを構築する。
2)キット開発班:肝硬変の予後予測を可能とする血清バイオマーカーの迅速測定系を開発する。安定な測定を可能にするキャリブレーターを作製する技術を、特定糖鎖を有するリコンビナント糖タンパク質合成ノウハウをもとに開発する。
3)バリデーション班:国立国際医療研究センター肝炎情報センターを中核とした15施設の共同研究体制により、臨床情報が整った5,000検体レベルのライブラリを維持し、多施設多検体解析を進める。検討されるマーカーに応じて使用する検体を組み替え、複数の検討項目を起案、実施する。本年度は肝硬変予後予測マーカーについてライブラリを構築する。
結果と考察
背景肝に影響されず、肝がん関連糖鎖変化を反映する新規レクチンNPAに対する反応性の高い肝がん培養細胞株2種を選択し、NPA反応性糖タンパク質(マーカー候補)を370種同定した。また、組織標本のレクチン染色より、NPA反応性はがん部で強度が高いだけでなく、局在も変化していることが判明した。並行して、より疾患特異度の高い糖鎖マーカーを同定・検証するため、分析法の微量化など改善を進めた。開発の先行している肝硬変マーカー候補WFA+-CSF1Rについては、市販の抗体、レクチンを用いたELISA系を構築し、収集した検体約1,000件に対し正当性検証を進めた。その結果、このマーカーは肝がん高発がん群の同定、高危険患者囲い込みに有効である可能性が見出された。今後このマーカーを迅速測定するための分析キット開発を進め、分析キャリブレーターの安定産生、供給系を確立した。このキャリブレーターは市販CSF1Rの約7.8倍の反応性を示した。
結論
新規マーカーWFA+-CSF1Rの臨床的有用性(高発がん群の同定)の可能性が見出された。検証数を増やし、迅速測定系を確立して、有用性検証を進めると共に、新規肝がんマーカーの絞り込み、検証を進める。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-