文献情報
文献番号
201449001A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト肝細胞キメラマウスを用いた薬剤耐性、臓器不全等治療困難症例に対する病態解析と根治的治療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 立野 知世 (向谷知世) ((株)フェニックスバイオ)
- 島上 哲朗(金沢大学付属病院)
- 土方 誠(京都大学ウイルス研究所)
- 高倉 喜信(京都大学大学院薬学研究科)
- 前川 伸哉(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
- 松浦 善治(大阪大学微生物研究所)
- 大段 秀樹(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
- 脇田 隆字(国立感染症研究所)
- 正木 崇生(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
- 川上 由育(広島大学病院)
- 三木 大樹(理化学研究所統合生命医科学研究センター)
- 平賀 伸彦(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
直接作用型抗ウイルス剤によりC型慢性肝炎に対する治療は飛躍的に向上するが,一部では,完治に至らない症例も出現する.本研究では,これらの症例に対する治療法開発を目的とし,検討を行い知見を得た.
研究方法
1)薬剤耐性のウイルスに対する既存の薬剤による有効な治療法の開発では,我々がこれまでに作製したinfectious cloneであるKT-9クローンに変異を加え,現在開発されているDAAに対する各種耐性株を作製しヒト肝細胞キメラマウスに感染させ,異なるDAAの組み合わせなどによる治療効果を検証する実験を行った。(2)新しい抗ウイルス薬の開発と評価では,現状のDAA以外の薬剤の治療効果および既存のDAAに対する薬剤耐性の抗HCV効果を検証した。(3)宿主因子を標的とする新規薬剤の開発では,これまで我々が発見してきた宿主の蛋白を標的とした治療を開発するため,Ezetimib,cox2 阻害剤,Thromboxan A2阻害剤などの抗ウイルス効果を増強させる方法を検討し,これらの組み合わせによりどのような抗ウイルス効果が得られるか検討した.(4)抗ウイルス性サイトカインを利用した新規治療法の開発では,HCVの増殖に寄与する宿主因子に関して,HCV感染前後のトランスクリプトームを解析してライブラリーを作製し,HCV感染により,特異的に発現が亢進あるいは抑制される因子を同定し,IFN以外の抗ウイルス因子の研究を行った.このような因子はhydrodynamic法によりキメラマウスに強制発現し,その抗ウイルス効果を検証した.また臓器不全合併症例に対する治療法を確立するため,肝移植,腎移植,透析中,非代償性肝硬変など,臓器不全や免疫抑制などのリスクを負う症例に対して臨床研究を計画し,最適な治療法を検討した.
結果と考察
(1)薬剤耐性や種々のgenotypeのHCVに対する既存の薬剤による有効な治療法の開発
プロテアーゼ阻害剤/PEG-IFN/RBV併用療法において,次世代シークエンサーを用いて,治療後超早期のウイルスゲノム多様性の変化はIFL3 SNPに有意な関連があり,治療効果を予測しうる因子となる可能性を示した.HCV感染マウスを用いてNS3 D168変異が約10%以下の場合にはダクラタスビル+アスナプレビル併用投与によりHCV排除が可能なことを見いだした.培養細胞系を用いて,HCVが異なる細胞に感染する際,新たなquasispeciesを出現すること,さらにHCV感染マウスでは,培養細胞とは異なるquasispeciesが選択されることを明らかにした.
(2)現在開発が行われている以外のウイルス蛋白をターゲットとした治療薬の開発
HCV培養細胞系を用いてビタミンA誘導体がHCV複製抑制効果を有しており,中でも,肝癌のchemopreventionの有用性が報告されているPeretinoin(NIK333)が最も強力であることを見いだした.
(3)宿主因子をターゲットとした治療薬の開発
培養細胞系を用いてHCV感染を阻害する化合物をスクリーニングし,ウイルス粒子形成または分泌過程を阻害することが推測される12種類の化合物を見いだした.うち脂質代謝に関与する化合物Aの持つPLD阻害活性が感染性HCV産生阻害に重要であり,PLD阻害剤がHCV粒子の分泌を阻害し,HCV感染の拡大を阻止することを見いだした.HCV感染ヒト肝細胞キメラマウスからヒト肝細胞を分離培養したところ,培養上清にHCV RNAが放出されることが確認された.
(4)IFN,その他の抗ウイルス性サイトカインを利用したウイルス排除法の開発
HCV感染に対するIFN-λ3遺伝子治療法の開発を試み,HCVレプリコン細胞にIFN-λ3発現プラスミドを導入したところ抗HCV効果が確認された.またHCVレプリコン細胞を用いて薬剤ライブラリーによってHCV複製を抑制する新たな薬剤をスクリーニングすることにより,ステアリルCoAデサチュラーゼ(SCD)阻害薬が効果的にHCVゲノム複製を抑制すること,SCD阻害薬をDAAやIFNと併用することで相加的および相乗効果的に作用することを見いだした.
透析患者および肝移植患者に対するダクラタスビル+アスナプレビル併用療法の安全性および有効性を検討する臨床研究を行っていく.
プロテアーゼ阻害剤/PEG-IFN/RBV併用療法において,次世代シークエンサーを用いて,治療後超早期のウイルスゲノム多様性の変化はIFL3 SNPに有意な関連があり,治療効果を予測しうる因子となる可能性を示した.HCV感染マウスを用いてNS3 D168変異が約10%以下の場合にはダクラタスビル+アスナプレビル併用投与によりHCV排除が可能なことを見いだした.培養細胞系を用いて,HCVが異なる細胞に感染する際,新たなquasispeciesを出現すること,さらにHCV感染マウスでは,培養細胞とは異なるquasispeciesが選択されることを明らかにした.
(2)現在開発が行われている以外のウイルス蛋白をターゲットとした治療薬の開発
HCV培養細胞系を用いてビタミンA誘導体がHCV複製抑制効果を有しており,中でも,肝癌のchemopreventionの有用性が報告されているPeretinoin(NIK333)が最も強力であることを見いだした.
(3)宿主因子をターゲットとした治療薬の開発
培養細胞系を用いてHCV感染を阻害する化合物をスクリーニングし,ウイルス粒子形成または分泌過程を阻害することが推測される12種類の化合物を見いだした.うち脂質代謝に関与する化合物Aの持つPLD阻害活性が感染性HCV産生阻害に重要であり,PLD阻害剤がHCV粒子の分泌を阻害し,HCV感染の拡大を阻止することを見いだした.HCV感染ヒト肝細胞キメラマウスからヒト肝細胞を分離培養したところ,培養上清にHCV RNAが放出されることが確認された.
(4)IFN,その他の抗ウイルス性サイトカインを利用したウイルス排除法の開発
HCV感染に対するIFN-λ3遺伝子治療法の開発を試み,HCVレプリコン細胞にIFN-λ3発現プラスミドを導入したところ抗HCV効果が確認された.またHCVレプリコン細胞を用いて薬剤ライブラリーによってHCV複製を抑制する新たな薬剤をスクリーニングすることにより,ステアリルCoAデサチュラーゼ(SCD)阻害薬が効果的にHCVゲノム複製を抑制すること,SCD阻害薬をDAAやIFNと併用することで相加的および相乗効果的に作用することを見いだした.
透析患者および肝移植患者に対するダクラタスビル+アスナプレビル併用療法の安全性および有効性を検討する臨床研究を行っていく.
結論
臨床検体,HCV培養系,HCV感染マウスを用いて(1)薬剤耐性や種々のgenotypeのHCVに対する既存の薬剤による有効な治療法の開発(2)NS2阻害剤のような現在開発が行われている以外のウイルス蛋白をターゲットとした治療薬の開発(3)耐性出現の可能性の少ない宿主因子をターゲットとした治療薬の開発(4)IFN,その他の抗ウイルス性サイトカインを利用したウイルス排除法の開発に関する研究を行った.
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-