適正な抗HIV療法開発のための研究

文献情報

文献番号
201448001A
報告書区分
総括
研究課題名
適正な抗HIV療法開発のための研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
潟永 博之((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 康男(帝京大学医学部内科学講座)
  • 杉浦 亙((独)国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部)
  • 川村 龍吉(山梨大学医学部附属病院皮膚科)
  • 児玉 栄一(東北大学大学院医学系研究科宮城地域医療支援寄附講座)
  • 本田 元人((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 エイズ対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
14,699,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の日本の抗HIV療法は、欧米で行われた臨床試験に基づいた治療ガイドラインを参考にしており、体格差・人種差による副作用の発現頻度の違いは無視した状態にある。日本人感染者に対して適正な治療法を開発するためには、多数の症例の詳細な解析が必要である。本研究は、日本人症例における副作用症例・併用困難薬投与例・薬剤耐性症例などの臨床症例を解析し、その原因となる機序の解明・適正な治療法を開発し、日本人に適した抗HIV療法を実践可能にすることを目的とする。
研究方法
テノホビル長期投与の腎臓への影響を解析するため、792人のHIV-1感染患者を対象とした、観察期間10年の単施設後方視的観察研究を行い、テノホビル投与群422人の糸球体濾過率に対し、アバカビル投与群の370人を対照として比較した。ラルテグラビル髄液移行性を解析するために、血漿中・髄液中のラルテグラビルの濃度を測定し、トランスポーター遺伝子SNPと関連を調べた。MaravirocなどのCCR5阻害薬の感受性を調べるため指向性検査が必要であるが、subtype Bを基準にしてアルゴリズムが作られており、日本で2番目に多いCRF01_AEについてそのまま適用できるかどうかを検討した。新規抗HIV薬の開発のため、東北大で分離・精製された化合物ライブラリーより抗HIV活性のあるものをスクリーニングした。また、epigenome modulatorを応用して新規天然物を分離・精製し、その抗HIV活性を検討した。性行為におけるHIV感染は、主に粘膜・皮膚上皮内ランゲルハンス細胞の感染を介して成立するが、そのex vivoモデルとして、健常ボランティアの末梢血から得た単球をGM-CSF/IL-4/TGF-β存在下で一週間培養することにより単球由来ランゲルハンス細胞を作成し使用した。このHIV感染系において、各薬剤の感染阻止効果を調べた。
結果と考察
テノホビル使用群の糸球体濾過率は、対照群と比較して、1年後に3.8ml/min per 1.73m2、2年後に3.6ml/min per 1.73m2、3年後に5.5ml/min per 1.73m2、4年後に6.6ml/min per 1.73m2、5年後に10.3ml/min per 1.73m2ほど平均して低下しており、長期に亘る経時的な腎機能の低下が示された。ラルテグラビル常用量を内服中の31人の血漿と14人の髄液のラルテグラビル濃度を測定し、ABCB1とABCB2の遺伝子のSNPとの相関を調べたところ、血漿中濃度はいずれのSNPとも関連はなかったが、髄液中濃度は、ABCG2遺伝子の421 C>Aと関連していた。最も広く使用されているアルゴリズムであるGeno2Pheno Co-receptorと、新しい評価アルゴリズムであるNGS-SangerでCRF01_AEである356例の分離株を解析したところ、X4指向性と判断される比率はそれぞれ53.9%と13.8%であった。Epigenomic modulatorを応用して得られた約70の化合物をスクリーニングしたところ、そのうちの一つに抗HIV活性があった。単球由来ランゲルハンス細胞のHIV感染系で、新規逆転写酵素阻害薬役であるEFdAとインテグラーゼ阻害薬であるラルテグラビルは、感染阻止効果を示した。
結論
小柄な日本人を中心とする我々のコホート研究で、テノホビルの長期使用による腎機能への影響が明らかになった。ラルテグラビルは髄液移行性がよいとされているが、髄液で検出できない症例も存在し、注意が必要である。CRF01_AEの指向性は、Geno2Pheno Co-receprorをそのまま用いるのではなく、他のアルゴリズムを取り入れると改良できる可能性がある。Epigenomic modulatorを応用して得られた化合物から、抗HIV活性のあるものを見いだした。EFdAとラルテグラビルは、感染阻止効果を示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201448001C

収支報告書

文献番号
201448001Z