梅毒の新たな検査手法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
201447023A
報告書区分
総括
研究課題名
梅毒の新たな検査手法の開発等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 周一(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 山岸 拓也(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 三宅 啓文(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 川畑 拓也(大阪府公衆衛生研究所 )
  • 尾上 智彦(東京慈恵会医大 葛 飾医療センター皮膚 科 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の梅毒報告数の増加をうけて、発生動向調査の整理、新規診断法の開発を目的とした。梅毒トレポネーマは他の一般細菌と異なり一般の培養が不能である。そのため、特徴的な皮膚病変をもとに梅毒を疑い、パーカーインク染色による顕微鏡検査をするか、暗視野顕微鏡を用いたらせん菌体の確認を行うことが、血清学的検査が診断のもととなる。しかしながら、顕微鏡観察実施可能な医療機関が減少してきたことから、早期の第I期梅毒を診断することが困難である。そこで、PCR法等を用いた梅毒トレポネーマ核酸診断系の開発を目指した。また、疫学調査と検査診断系開発を試みた。また、MSMポピュレーションにおける疫学調査ならびに啓発活動に資する情報の取得と、受診しやすい体制の仕組みを検討することを目的とした。
研究方法
梅毒感染症における早期診断のための検査診断法の開発及び確立のために、PCR法、リアルタイムPCR法
核酸クロマトグラフィー法、LAMP法、梅毒トレポネーマ分子タイピングおよびこれらの多施設間比較を実施した。
感染経路や感染のリスク等の疫学情報の把握のために、感染症発生動向調査から見た梅毒発生状況を調査した。また、
症例対照研究質問紙の妥当性評価をおこなった。診療所を受診したMSMで研究内容を説明し同意を得た患者に質問紙を記入してもらい、質問用紙の妥当性を評価した。
結果と考察
PCR法については、感度(10 copy genome/反応)は良好であり、感染研、東京都健康安全研究センター、大阪府公衆衛生研究所の3カ所について利用可能となった。用いたreal-time PCR法は使用機器によって利用できない場合があり、さらなる検討が必要であった。核酸クロマトグラフィー法によるPCR産物検出は、非特異的シグナルの除去が達成されなかった。LAMP法は感度(検出限界は、200 copy genome/反応)がPCR法に比べ劣ることが明らかとなった。
核酸診断法はI期梅毒初期に有用であり、血清診断による陽性前に診断に至る可能性が示された。一方で偽陰性を示す場合もあり、補助的診断として利用するのが妥当であると考えられた。
インターネットを用いた梅毒予防啓蒙活動のためのウェッブサイトを制作し公開した。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の検査場リストを掲載した。受診行動を促すために、ゲイ向け出会い系アプリ「9monsters」で広告掲載を行った。梅毒予防に対する対面カウンセリングおよび情報提供を実施した結果、梅毒の感染ルートや予防方法、検査の方法についての相談項目が多く、これらの対応策について検討が必要であることが示された。全国保健所•支所等577カ所へ梅毒検査体制についてアンケート調査を実施し、457カ所から有効回答を得た。467回答中308の保健所においてはHIV検査事業の中で梅毒検査を実施していた。そのうち梅毒陽性結果を得ていた保健所は171カ所であった。H26年中に総計49,335の検査実績があり、うち698件の陽性結果が得られていた。即日検査が実施されていることは61ヵ所であることが判明した。
結論
梅毒の第I期皮膚病変を標的とした核酸診断は重要なツールである。特に、梅毒トレポネーマの直接的間接的検出を試みない医療機関が増えている状況では、第I期の早期(血清診断陽転前)の梅毒を見逃している可能性がある。これらの症例がしばらくの間、感染源として未治療で残されている可能性は否定できない。血清学的検査は、今後も重要な診断ツールであるが、核酸検査の開発とその利用に向けて体制を構築していく必要がある。PCR法に関しては、国立感染症研究所、東京都健康安全研究センター、大阪府公衆衛生研究所の3カ所で実施可能な体制となった。異性間性的接触による感染の増加が見られることにも注意が必要である。また、LAMP法の開発の初期検討が完了しているが、更なる検討を進めることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201447023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
梅毒トレポネーマのゲノムDNAを感染研を含む3箇所の公的機関において共有し、補助的診断法としての役割、ならびに分子疫学解析に利用できるよう体制を整えた。国外では報告があるマクロライド耐性株がすでに国内にも存在することを見出し、国際的な伝播が起きていること、我が国にも波及している可能性が示された。
臨床的観点からの成果
梅毒診断のために核酸診断法の利用を検討した。梅毒I期の早期(血清診断が陽性化する前)においても、梅毒トレポネーマDNAの検出が可能であることを示した。診断が困難な症例においては、価値が高いと考えらえれる。今後、新生児梅毒においても利用可能であると考えられる。
ガイドライン等の開発
性感染症 診断・治療 ガイドラインの次回改定時に、その利用方法を検討する予定である。しかしながら、製品化は困難である。研究用試薬として利用できるように検討する必要がある。公的試験機関においては、普及を進めていくことを検討する。
その他行政的観点からの成果
梅毒の近年の増加において、保健所等での梅毒検査体制について調査した。MSMへの情報提供等を積極的に実施した。
その他のインパクト
MSMポピュレーションでの広がりについては、一般への情報公開には十分に配慮する必要があった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2018-06-29

収支報告書

文献番号
201447023Z