文献情報
文献番号
201447019A
報告書区分
総括
研究課題名
「顧みられない動物由来感染症」の対策及び検査法・治療法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
- 松山 州徳(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 加来 義浩(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 福士 秀悦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 今岡 浩一(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 鈴木 道雄(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 宇田 晶彦(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
多くの動物由来の新興・再興感染症は散発的に患者が発生するため、「顧みられない動物由来感染症」として公衆衛生的にも臨床的にもあまり重視されていない。本研究では、動物由来ウイルス感染症と動物由来細菌感染症に関して以下の研究を行い、これら「顧みられない動物由来感染症」の制御に繋がる成果を得ることを目的とする。本研究では、MERS、ニパウイルス感染症、ネルソンベイオルソレオウイルス感染症、イシククル熱、ブルセラ症、カプノサイトファーガ感染症、野兎病を対象としてポイントを絞った研究を実施し、これらの「顧みられない動物由来感染症」の対策に資することを目的とした。
研究方法
中東呼吸器症候群(MERS)のリスク評価と診断法、ニパウイルス感染症の血清診断法、コウモリレオウイルスのゲノム情報と診断法、イシククル熱の診断法、新規ブルセラ属菌の遺伝子情報と診断法、野兎病弱毒株の作出とワクチン効果に関して、遺伝子組み換え的手法、血清学的手法、メタゲノム解析、動物実験等を目的に応じて実施した。
結果と考察
1) 中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスに、ブタは感受性が高いことからブタを感染源として流行が起きる可能性がある。異なる動物に感染して変異が生じても現在開発されたMERSの遺伝子診断法は対応可能である。
2) マレーシア、バングラデシュ、インドに加えてフィリピンでも流行が確認されたニパウイルス感染症の血清診断法として、組換え抗原によるIgG, IgM抗体検出法(ELISA, IF)及び陽性対照サル血清を作製した。
3) 東南アジアで重篤な急性呼吸器感染症をおこすコウモリレオウイルスの診断法として、組換えウイルス蛋白質を用いた抗体検出系、遺伝子診断法を開発した。
4) 中央アジアで流行しているダニ媒介性ウイルス感染症のイシククル熱の患者は確認されていないが、国内のダニからイシククルウイルスが分離されたため、その遺伝子配列を決定し遺伝子診断法を開発した。
5) カエル由来の新規ブルセラ属菌2株のほぼ全塩基配列の解析から、カエルがnovelブルセラ属菌の宿主の一つであると考えられた。これらを識別可能な遺伝子検査法を開発した。
6) イヌ、ネコの咬傷等により感染するカプノサイトファーガ属菌感染症患者から分離された新規菌株3株は、DNA hybridization及び全遺伝子配列の解析からカプノサイトファーガ属の新菌種と確認された。得られた遺伝子配列情報からPCR法による鑑別診断系を確立した。
7) 病原性遺伝子pdpC遺伝子をKOした野兎病菌の生ワクチンとしての有効性を検証した。
2) マレーシア、バングラデシュ、インドに加えてフィリピンでも流行が確認されたニパウイルス感染症の血清診断法として、組換え抗原によるIgG, IgM抗体検出法(ELISA, IF)及び陽性対照サル血清を作製した。
3) 東南アジアで重篤な急性呼吸器感染症をおこすコウモリレオウイルスの診断法として、組換えウイルス蛋白質を用いた抗体検出系、遺伝子診断法を開発した。
4) 中央アジアで流行しているダニ媒介性ウイルス感染症のイシククル熱の患者は確認されていないが、国内のダニからイシククルウイルスが分離されたため、その遺伝子配列を決定し遺伝子診断法を開発した。
5) カエル由来の新規ブルセラ属菌2株のほぼ全塩基配列の解析から、カエルがnovelブルセラ属菌の宿主の一つであると考えられた。これらを識別可能な遺伝子検査法を開発した。
6) イヌ、ネコの咬傷等により感染するカプノサイトファーガ属菌感染症患者から分離された新規菌株3株は、DNA hybridization及び全遺伝子配列の解析からカプノサイトファーガ属の新菌種と確認された。得られた遺伝子配列情報からPCR法による鑑別診断系を確立した。
7) 病原性遺伝子pdpC遺伝子をKOした野兎病菌の生ワクチンとしての有効性を検証した。
結論
1)MERS-CoVは多くの動物に感染し得るが既存のMERSの遺伝子診断法は対応できる、2) ニパウイルス感染症の血清診断法を開発した、3)コウモリレオウイルス感染症の抗体検出系と遺伝子診断法を開発した、4)国内のダニから分離されたイシククル様ウイルスの遺伝子配列を決定し遺伝子診断法を開発した、5) カエル由来ブルセラ属菌株はnovelブルセラ属菌の宿主の一つと考えられ、識別可能な遺伝子検査法も開発した、6) カプノサイトファーガ属菌感染症患者から新菌種を分離・同定し、鑑別診断可能なPCR法を開発した、7) pdpC遺伝子をKOした野兎病菌株が生ワクチン候補株として有用であることを示した。
公開日・更新日
公開日
2015-04-08
更新日
-