文献情報
文献番号
201447014A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1予防ワクチンの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
- 俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
- 梁 明秀(横浜市立大学大学院 医学研究科)
- 外丸 詩野(北海道大学大学院 医学研究科)
- 田中 正和(関西医科大学 微生物学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HTLV-1感染症にはいまだ有効なワクチンが存在せず、感染コントロールのために、HTLV-1感染予防ワクチンの開発が求められている。そこで本研究では、HTLV-1感染予防ワクチンの開発を目的とする。
研究方法
最も有力な感染防御抗原候補であるEnvタンパク質を抗原とした不活化ワクチン開発を目指し、実用的なワクチン抗原製造系として実績のある昆虫細胞タンパク質合成系を用いてEnvタンパク質合成系の構築を試みた。またこれまでにコムギ無細胞タンパク質合成系により作製した可溶化全長HTLV-1ウイルスタンパク質と簡便で迅速な検出が可能な化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ、アルファスクリーン法を用いた抗原抗体反応の検出系を構築し、HTLV-1感染患者およびATL患者の血清に含まれる抗HTLV-1ウイルスタンパク質抗体の検出を行なった。全長Gag、Tax-1、Envに対する抗体が検出された患者血清を用いて、抗体認識部位の同定およびHTLV-1感染ヒト化マウスにおける抗HTLV-1抗体の検出を試みた。HTLV-1感染後のATL発症には免疫老化の関連が示唆されている。ワクチン効果を判定する目的、あるいはHTLV-1関連疾患の免疫病態を解析する目的で、あらたなモデルであるTax/β5tダブルトランスジェニックマウス(Tax/β5t-Tg)を作製した。
結果と考察
主要な中和抗体誘導抗原として考えられているHTLV-1のエンベロープであるEnvタンパク質の細胞外ドメインに三量体化シグナルを誘導し感染性ウイルスのエンベロープと同様の構造、抗原性を持つEnvキメラタンパク質をバキュロウイルス発現ベクターシステムにより製造を行った。Envキメラタンパク質を、ポリヘドリン遺伝子と相同組換えした組換えバキュロウイルスを作製し、特異抗体によるスクリーニングでEnvキメラタンパク質を発現するクローンを得た。ウエスタンブロットにより60 kDa及び50 kDa付近に主たる2本のバンドとして検出された。当初計画では、培養上清への分泌を期待したが、発現培養条件の検討の結果、細胞画分の不溶画分に多く回収された。時間経過とともに不溶画分には60 kDa付近のバンドだけでなく、高分子から低分子まで複数のバンドが検出されることになった。これらのバンドは、Envキメラタンパク質由来と考えられる。 60 kDaよりもサイズの小さいバンドは分解物と考えられ、サイズの大きなバンドは細胞内で強固な凝集体を形成し、SDSにより可溶化できなかったものと考えた。播種後48時間の培養上清には、非常に弱いバンドであるが、目的タンパク質を検出したことより、目的タンパク質の一部は培養上清に分泌されていたと考えられた。今後、大量培養を行い、培養上清から目的タンパク質の精製を試みるが、発現効率自体の改善のために中和エピトープが集まるSU以外を削っていくなど抗原設計の変更を考慮する必要があると考えられた。
HTLV-1感染ヒト化マウスの系において、Taxペプチドワクチンの皮下および経鼻投与で、いずれも感染細胞の増殖抑制効果が認められた。今後、この抑制が感染の抑制によるものか、あるいは感染細胞の増殖抑制によるものかを明らかにすることが必要である。
HTLV-1感染ヒト化マウスの系において、Taxペプチドワクチンの皮下および経鼻投与で、いずれも感染細胞の増殖抑制効果が認められた。今後、この抑制が感染の抑制によるものか、あるいは感染細胞の増殖抑制によるものかを明らかにすることが必要である。
結論
HTLV-1感染予防ワクチンの開発のために最も有力な感染防御抗原候補であるEnvタンパク質抗原を実用的なワクチン抗原製造系として実績のある昆虫細胞タンパク質合成系を用いてEnvタンパク質合成系の構築を試みた。目的のタンパク質合成に成功したが、その収量は多くなく、今後さらなる改良が必要と考えられた。
これまでに開発したコムギ無細胞系とアルファスクリーン法を組み合わせた抗体検出系を用い、HTLV-1 Gag, Tax-1, Envに関して抗体が検出された患者血清に含まれる抗HTLV-1抗体の認識部位を同定した。また、モデル動物において誘導された微量抗HTLV-1抗体の検出にも成功した。今後は本法を用いて、HTLV-1感染に伴う抗体誘導の詳細な解析を行う予定である。HTLV-1感染ヒト化マウスの系で、Taxペプチドワクチンの皮下および経鼻投与により感染細胞の増殖抑制効果が認められ、ヒト免疫系を基盤としたHTLV-1発症予防ワクチン開発での有用な評価系を提供出来うるマウスモデルであることが示された。
更にHTLV-1関連疾患の免疫病態、発症予防ワクチンの解析に有用なマウスモデルの作製を目指し、引き続きTax/β5t-Tgマウスの解析、新たなモデルの作製を推進する。
これまでに開発したコムギ無細胞系とアルファスクリーン法を組み合わせた抗体検出系を用い、HTLV-1 Gag, Tax-1, Envに関して抗体が検出された患者血清に含まれる抗HTLV-1抗体の認識部位を同定した。また、モデル動物において誘導された微量抗HTLV-1抗体の検出にも成功した。今後は本法を用いて、HTLV-1感染に伴う抗体誘導の詳細な解析を行う予定である。HTLV-1感染ヒト化マウスの系で、Taxペプチドワクチンの皮下および経鼻投与により感染細胞の増殖抑制効果が認められ、ヒト免疫系を基盤としたHTLV-1発症予防ワクチン開発での有用な評価系を提供出来うるマウスモデルであることが示された。
更にHTLV-1関連疾患の免疫病態、発症予防ワクチンの解析に有用なマウスモデルの作製を目指し、引き続きTax/β5t-Tgマウスの解析、新たなモデルの作製を推進する。
公開日・更新日
公開日
2015-05-20
更新日
-