文献情報
文献番号
201447009A
報告書区分
総括
研究課題名
原虫・寄生虫に対する監視・制御に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
- 渡辺 恒二(国立国際医療研究センター戸山病院エイズ治療研究開発センター)
- 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 平井 誠(順天堂大学 医学部)
- 山崎 浩(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国内で感染伝播の起こっている原虫・寄生虫症を中心として、その感染実態を詳細に把握するため、病原性や寄生様式の解明に向けた基盤的研究を行うとともに、感染実態調査等により、監視法の確立を目指す研究を行う。
研究方法
1.赤痢アメーバの遺伝的多様性と薬剤耐性の解析
国内の赤痢アメーバ臨床株のゲノム多様性の解析を目的として、国内の臨床株の分離を行い、新規標準ゲノム整備の準備を行う。ゲノム解析はIllumina社の次世代シーケンサーにより行う。臨床分離株は国際医療研究セとの共同で行った。
赤痢アメーバの薬剤耐性機構を理解するため、インビトロで赤痢アメーバの薬剤(オーラノフィン)耐性株を作製した。
2.腸管原虫症の感染実態調査および感受性の遺伝的解析
HIV/AIDSのコホート集団における腸管原虫症(赤痢アメーバ症・ジアルジア症・クリプトスポリジウム症)の感染浸淫状況を鏡検、PCR並びに抗原補足法により調査した。
腸管原虫症の臨床病理像の研究と感受性の相関を明らかにするために、国内の赤痢アメーバ感染既往者を症状に応じて集め、分類し、その感染病理を解析した。
3.腸管原虫症の検査診断法開発
ジアルジアの糞便内検出キットの評価を行う。クリプトスポリジウム検出系の試作版を作製する。赤痢アメーバのキットを作製するのに必要な単クローン抗体を作成するのに適切な抗原の準備を行った。
4.原虫ゲノム情報の整備
日本で発生したアカントアメーバ角膜炎症例から分離された代表的な分離株、共存ウイルス等のゲノム解析を行った。
5.マラリア薬剤耐性機構・遺伝子の解析
熱帯熱マラリアの超高速変異導入株を作成し、変異体ライブラリーを準備した。インビトロでアルテミシニン耐性株の選択を行った。
更に、熱帯熱マラリアで近年報告されているアルテミシニン耐性への関与が指摘されるSNPsが、薬剤使用以前には存在するかどうかをアーカイブサンプルで検証した。
6.寄生蠕虫症の検査診断法開発、条虫の食品汚染等感染実態調査
陽性血清を収集すると共に、組換トキソカラ抗原および組換顎口虫抗原を調製し、診断キットを試作した。
更に、魚類からの条虫の感染実態調査として日本近海産魚介類からの虫体を検出し、季節別の寄生状況把握した。分子同定に資する配列領域を決定し、迅速同定法を開発した。
また、エキノコックス検査キットの評価のために、国内外から単包虫症・多包虫症の患者血清を収集する。既存の商業キットによる評価を行った。
7.蠕虫症の感染実態調査および食品汚染実態調査
レセプト等の各種データベースを利用して国内の寄生蠕虫症の感染実態を解析した。
更に、魚類からの線虫の感染実態調査として日本近海産魚介類からのアニサキスを検出し、季節別の寄生状況把握した。分子同定に資する配列領域を決定し、迅速同定法を開発した。
国内の赤痢アメーバ臨床株のゲノム多様性の解析を目的として、国内の臨床株の分離を行い、新規標準ゲノム整備の準備を行う。ゲノム解析はIllumina社の次世代シーケンサーにより行う。臨床分離株は国際医療研究セとの共同で行った。
赤痢アメーバの薬剤耐性機構を理解するため、インビトロで赤痢アメーバの薬剤(オーラノフィン)耐性株を作製した。
2.腸管原虫症の感染実態調査および感受性の遺伝的解析
HIV/AIDSのコホート集団における腸管原虫症(赤痢アメーバ症・ジアルジア症・クリプトスポリジウム症)の感染浸淫状況を鏡検、PCR並びに抗原補足法により調査した。
腸管原虫症の臨床病理像の研究と感受性の相関を明らかにするために、国内の赤痢アメーバ感染既往者を症状に応じて集め、分類し、その感染病理を解析した。
3.腸管原虫症の検査診断法開発
ジアルジアの糞便内検出キットの評価を行う。クリプトスポリジウム検出系の試作版を作製する。赤痢アメーバのキットを作製するのに必要な単クローン抗体を作成するのに適切な抗原の準備を行った。
4.原虫ゲノム情報の整備
日本で発生したアカントアメーバ角膜炎症例から分離された代表的な分離株、共存ウイルス等のゲノム解析を行った。
5.マラリア薬剤耐性機構・遺伝子の解析
熱帯熱マラリアの超高速変異導入株を作成し、変異体ライブラリーを準備した。インビトロでアルテミシニン耐性株の選択を行った。
更に、熱帯熱マラリアで近年報告されているアルテミシニン耐性への関与が指摘されるSNPsが、薬剤使用以前には存在するかどうかをアーカイブサンプルで検証した。
6.寄生蠕虫症の検査診断法開発、条虫の食品汚染等感染実態調査
陽性血清を収集すると共に、組換トキソカラ抗原および組換顎口虫抗原を調製し、診断キットを試作した。
更に、魚類からの条虫の感染実態調査として日本近海産魚介類からの虫体を検出し、季節別の寄生状況把握した。分子同定に資する配列領域を決定し、迅速同定法を開発した。
また、エキノコックス検査キットの評価のために、国内外から単包虫症・多包虫症の患者血清を収集する。既存の商業キットによる評価を行った。
7.蠕虫症の感染実態調査および食品汚染実態調査
レセプト等の各種データベースを利用して国内の寄生蠕虫症の感染実態を解析した。
更に、魚類からの線虫の感染実態調査として日本近海産魚介類からのアニサキスを検出し、季節別の寄生状況把握した。分子同定に資する配列領域を決定し、迅速同定法を開発した。
結果と考察
本研究は国内で問題となる主要な原虫・寄生虫症の(1)検査・診断法キットの確立、(2)感染抵抗性・薬剤耐性機構の解明、(3)リファレンス・サーベイランスシステムの構築を目指しているが、着実に成果を挙げた。
研究の継続により、中・長期的に以下の具体的成果が期待される。(1)まず、HIV陽性者や知的障害者において高度に感染のひろがる腸管感染症の病原体診断迅速キットが実用化される。次に、国内で最も検査依頼の多い幼虫移行症の血清診断キットが統合・実用化されることが期待される。(2)赤痢アメーバ症の易感染・感染抵抗性に関与するヒト側・病原体側因子が解明され、感染予後予測に資するマーカーが同定される。更に、マラリア・赤痢アメーバの新規薬剤耐性機構が解明され、薬剤耐性のモニタリングが可能となるであろう。(3)検査・診断キットの実現により、国内における腸管原虫症、主要な蠕虫症のサーベイランスが確立される。また、赤痢アメーバ・アカントアメーバ等の標準株のゲノム情報が蓄積され、診断用国内標準品として国内に供与する標準株を制定されると共に診断に有効なマーカーが提示可能となる。
更に、次年度以降は特に赤痢アメーバ・アカントアメーバを含めた原虫・寄生虫ゲノム情報の拡充を強化し、細菌・ウイルス感染症で整備されつつあるのと同様な、全ゲノム情報を基盤とした分子疫学的解析が可能となるように、原虫・寄生虫ゲノム情報の整備を強化する予定である。
研究の継続により、中・長期的に以下の具体的成果が期待される。(1)まず、HIV陽性者や知的障害者において高度に感染のひろがる腸管感染症の病原体診断迅速キットが実用化される。次に、国内で最も検査依頼の多い幼虫移行症の血清診断キットが統合・実用化されることが期待される。(2)赤痢アメーバ症の易感染・感染抵抗性に関与するヒト側・病原体側因子が解明され、感染予後予測に資するマーカーが同定される。更に、マラリア・赤痢アメーバの新規薬剤耐性機構が解明され、薬剤耐性のモニタリングが可能となるであろう。(3)検査・診断キットの実現により、国内における腸管原虫症、主要な蠕虫症のサーベイランスが確立される。また、赤痢アメーバ・アカントアメーバ等の標準株のゲノム情報が蓄積され、診断用国内標準品として国内に供与する標準株を制定されると共に診断に有効なマーカーが提示可能となる。
更に、次年度以降は特に赤痢アメーバ・アカントアメーバを含めた原虫・寄生虫ゲノム情報の拡充を強化し、細菌・ウイルス感染症で整備されつつあるのと同様な、全ゲノム情報を基盤とした分子疫学的解析が可能となるように、原虫・寄生虫ゲノム情報の整備を強化する予定である。
結論
本年度、本研究班はほぼ研究計画通りの成果を挙げるとともに、来年度への十分な準備となる研究成果を生んだ。本研究成果は、検査診断キットの開発・普及、検査診断基準のガイドラインの策定、国内の感染実態の解明に資すると期待される。また、他の寄生虫症を含めた寄生虫症の新規薬剤・ワクチン開発の基盤整備に資すると期待される。これらはWHO等国際機関との連携に際しても極めて重要である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-27
更新日
-