血液バイオマーカーを用いたうつ病と双極性障害の鑑別診断法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201446025A
報告書区分
総括
研究課題名
血液バイオマーカーを用いたうつ病と双極性障害の鑑別診断法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 謙二(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院)
  • 中込 和幸(国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 岩田 泰秀(浜松医科大学医学部)
  • 戸田 重誠(金沢大学医学部附属病院)
  • 山森 英長(大阪大学医学系研究科)
  • 菱本 明豊(神戸大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
うつ病は、10-20%と高い生涯有病率を有し、わが国で社会問題になっている自殺との関連も指摘されている。双極性障害のうつ病は、治療抵抗性の大うつ病性障害と誤診されることも多く、過去の(軽)躁病相の特定や高い不安障害との合併率から確定診断されるまでに約8年近くを要し、現在うつ病として治療されている人の約30%が双極性障害と言われている。一方、うつ病の治療には抗うつ薬が使用され、双極性障害の治療には気分安定薬が使用されるなど、両疾患では治療法も全く異なることから、早期に鑑別診断できるバイオマーカーの開発が臨床現場において切望されている。
脳由来神経栄養因子(BDNF: Brain-derived neurotrophic factor)は、うつ病などの精神・神経疾患の病態および治療メカニズムに関わっていることが判ってきた。研究代表者らは、2003年に未治療うつ病患者の血清BDNF濃度が、年齢・性別等を合致させた健常者と比較して有意に低いこと、およびうつ症状の重症度の間に負の相関があることを報告した。この報告は、国内外の多くの研究者により引用され、その後の多くのメタ解析で支持されている。しかしながら、これまでの全ての報告は、ELISAキットに使用されているBDNF抗体の特異性から、proBDNF (BDNFの前駆体)と成熟型BDNF含めた値である。一方、proBDNFと成熟型BDNFは、異なる受容体(p75NTR and TrkB)に結合し、逆の生理学的作用を示す事が知られている。以上の事から、研究代表者らは、proBDNFと成熟型BDNFを別々に測定する重要性を提言してきた。
今回、スウェーデンとの共同研究として、双極性障害患者および健常者の血液中の成熟型BDNFおよびproBDNF濃度を測定した。さらに、今年度、国内の6医療施設(千葉大学、国立精神・神経医療研究センター、浜松医科大学、金沢大学、大阪大学、神戸大学)における多施設共同研究として、研究を開始した。
研究方法
双極性障害患者(215名および47名)および健常者(112名および43名)の血液サンプルは、それぞれ共同研究機関であるスウェーデンのカロリンスカ研究所およびエーテボリ大学の病院で採取した。
血液中のproBDNFおよび成熟型BDNF濃度を市販のELISAキットを用いて測定した。スウェーデンの共同研究機関(カロリンスカ研究所およびエーテボリ大学)との共同研究の実施については、千葉大学大学院医学研究院の倫理審査委員会の承認を得てから実施した。
今年度から開始した6医療施設における共同研究に関しては、各施設の倫理委員会で承認後、サンプル収集を開始した。
結果と考察
双極性障害患者の血清中の成熟型 BDNF濃度は、健常者の値と比較して有意に高かった。一方、患者群の血清中のproBDNF濃度は健常者の値と比較して有意に低かった。これらの結果は、独立した二施設(カロリンスカ研究所およびエーテボリ大学)のサンプルでも同様の結果であった。
以前、我々はうつ病患者の血清中の成熟型BDNF濃度は、健常者と比較して有意に低下している事を報告した。今回、双極性障害患者の血清中の成熟型BDNF濃度は、健常者と比較して有意に増加していた。このことは、うつ病と双極性障害では、成熟型BDNF濃度が健常者と比較して逆であることが判った。
また今回の双極性障害のサンプルはすべてスウェーデン人のサンプルであるため、日本人に当てはまるかわからない。本研究計画では、わが国おける6医療機関において、日本人のうつ病患者、双極性障害患者、健常者の血液中の成熟型BDNFおよびproBDNF濃度を測定することにより、両疾患の鑑別補助診断として有用かを明らかにする研究を開始した
現在の臨床現場において、うつ病患者および双極性障害のうつ症状の鑑別は、非常に難しく、これまで診断されてきた治療抵抗性うつ病患者の一部は、双極性障害である可能性が指摘されている。本研究により、両者を鑑別診断する補助法として応用できる可能性があると考えられる。
結論
以上の事から、血清中のproBDNFおよび成熟型BDNF濃度を測定することにより、うつ病と双極性障害の鑑別診断に応用できる可能性が示唆された。現在、国内の6医療施設間でのサンプルを用いて、うつ病と双極性障害の鑑別診断に応用できるか、多施設間共同研究を開始した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446025C

収支報告書

文献番号
201446025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,500,000円
(2)補助金確定額
19,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,181,444円
人件費・謝金 1,753,060円
旅費 78,700円
その他 2,117,076円
間接経費 4,500,000円
合計 19,630,280円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と、支出の「合計」に差異(130,280円)があるが、これは自己充当額として処理した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-