ポリジェニック脳神経画像解析による統合失調症の早期診断法の開発

文献情報

文献番号
201446022A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリジェニック脳神経画像解析による統合失調症の早期診断法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 亮太(国立大学法人大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター疾患関連分子解析部門 )
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 清登(東京大学医学部附属病院神経精神科)
  • 鈴木 道雄(富山大学大学院医学薬学研究部(医学)神経精神医学講座)
  • 根本 清貴(筑波大学医学医療系・精神医学)
  • 福永 雅喜(自然科学研究機構 生理学研究所 大脳皮質機能研究系 心理生理学研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 福永雅喜 所属機関名: 大阪大学・免疫学フロンティア研究センター・生体機能イメージング( 平成22年4月1日~26年3月31日)→ 所属機関名:自然科学研究機構 生理学研究所 大脳皮質機能研究系 心理生理学研究部門(平成26年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
精神疾患の診断は医師が症状を診ることによりなされており、客観的な検査等による診断法は未だ確立しておらず、客観的・科学的診断法の開発が必要とされている。本研究は、ポリジェニック解析による遺伝学的なリスク、脳神経画像による構造脆弱性、そして現在の脳病態を反映する安静時脳機能画像を組み合わせて統合失調症の診断法を開発することを目的とする。 本研究業務においては、DNAと脳神経画像を多施設で収集するにあたって、共通の収集プロトコールを作成し、各施設でサンプル収集を開始し、統合失調症と健常者合わせて600例以上のデータ収集を行った。本業務において収集したデータ・サンプルは、本業務の推進に不可欠なものであり、今後も引き続き収集を進めていく予定である。
研究方法
大阪大学医学部附属病院の統合失調症専門外来(橋本、福永)、東京大学医学部附属病院のこころのリスク外来(笠井)、富山大学医学部附属病院のこころのリスク相談・外来(鈴木)の3つの専門施設で、統合失調症患者の被験者をリクルートし、DNAを収集し、脳構造画像と安静時機能的MRI画像の撮像を行う。また、それぞれの研究施設にて、健常者についても同様にリクルートを行う。それぞれのサイトでの被験者数の合計は1000を超えているが、DNA、脳構造画像、安静時機能的MRI画像のすべてがそろったサンプルは、100例程度であるため、今後研究期間の3年間を通じて行い、一年間に100例以上の集積を目標とする。
結果と考察
遺伝子解析とポリジェニック解析においては、Imaging geneticsの手法を用いて研究を行った。ENIGMA(Enhancing Neuro Imaging Genetics through Meta-Analysis)に参画し、3万以上のサンプルを用いたメタアナリシスにより皮質下部位(海馬、扁桃体、視床、側坐核、尾状核、被核、淡蒼球、側脳室)の全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、海馬、被殻、尾状核に関連するSNPを見出した(Nature, 2015)。
上前頭回は統合失調症において皮質の体積減少が知られている自己認識と感情に関与する部位である。上前頭回皮質体積におけるGWASはなされていないため、158例の統合失調症患者と378例の健常者の脳MRI画像から、左右の上前頭回皮質体積を抽出してGWASを行った。その結果、1p36の5つの多型がゲノムワイド有意に右の上前頭回皮質体積と関連し、最も強いものは転写因子であるEIF4G3のイントロンにあるrs4654899であった。rs4654899は、ヒトの上前頭回皮質に発現するHP1BP3遺伝子とCAPN14遺伝子の発現に影響することが示された(Trans Psychiatr, 2014)。
統合失調症のポリジェニックリスクスコアと部位特異的な脳構造の異常を世界で初めて検討し、統合失調症においては上側頭回の皮質体積の減少と相関し、健常者においてはそのような相関が認められないことを見出した(Cortex, 2014)。
これらの成果は、本研究手法の妥当性を示すものであり、今後、継続して発展させていきたいと考えている。
脳構造画像解析においては、脳構造画像における統合失調症の関心領域を決定すると同時に、ノーマルデータベースの構築およびユーザビリティの高い画像解析プログラムの開発を行った。この結果、年齢と性別を入力するだけで全自動にて構造画像の観点での統合失調症らしさを解析するプログラムを構築することができ、80%の精度で統合失調症を判別することができた。本研究手法を、さらに発展させることにより、他のコホートにおいても、再現性の高い判別方法の開発を行っていく予定である。
安静時脳機能画像解析においては、これを用いたコネクティビティ解析から、脳領域間の機能的結合性について定量的評価を実施した。統合失調症では、全般に健常者よりコネクティビティが低かったが、特に9つのネットワークにおいて高い再現性を示した。また、統合失調症の陽性症状の重症度と相関の高いネットワークを、左右の楔前部に同定した。コネクティビティ情報を用いた統合失調症の判別解析では、統合失調症・健常者間の有意差において再現性の高かった9つすべてのコネクティビティを判別子とした場合、約65.8%の判別率を得た。また、これらの判別子を3つに削減することで判別率が68.5に改善することを見出した。判別率の向上のためには、適切な判別子の選択が肝要であり、その選択について改良を進めたいと考えている。
結論
本研究は、予定よりも順調に進捗しており、今後、さらなるデータの蓄積と解析を行うことにより、統合失調症の新たな診断法の確立に貢献できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201446022C

収支報告書

文献番号
201446022Z