文献情報
文献番号
201446020A
報告書区分
総括
研究課題名
カルボニルストレス関連分子による統合失調症バイオマーカーの探索
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
糸川 昌成(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 新里和弘(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野 )
- 吉田寿美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、末梢血のカルボニルストレス関連分子の異常を客観的指標として、統合失調症の早期診断法を確立することである。申請者は、カルボニル化合物の分解酵素GLO1に50%活性低下をもたらすフレームシフト変異を持った家系を同定し、それをきっかけとして内科合併症を持たない統合失調症の46.7%で末梢血にAGEsの蓄積を同定した(Arch Gen Psychiatry 2010、読売新聞6月8日)。AGEs濃度は陰性症状、および総合精神病理評価尺度との間に有意な正の相関が認められた。また、外来症例は入院症例より有意にAGEs濃度が低かった。縦断追跡が行われた5例でも全例が退院後にAGEsが低下しGLO1活性が上昇していた(精神神経学会2010)。これらから、AGEs濃度やGLO1活性は、患者の重症度のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
研究方法
(I)カルボニルストレス関連分子の測定(糸川昌成担当)
統合失調症の末梢血、髄液、尿中のカルボニルストレス関連分子を計測する。また、プロテオミクス解析により、新たなバイオマーカーの検索も行う。マウスにAGEsを投与しビタミン欠乏食の有無で特徴的に変動する分子を同定し、患者検体でその物質と臨床情報の関連を検討して新しいバイオマーカーを同定する。27年度開始が内定している活性型ビタミンB6(ピリドキサミン)を用いた治験において、候補マーカーの動きをモニターして症状改善との関連を検証する。(II) 統合失調症の末梢血、尿および臨床情報の収集(新里和弘担当) 統合失調症の末梢血、尿およびPANSS、投薬内容、DSM-IV、年齢、性別、発症年齢、家族歴など臨床情報を収集する。27年度は治験を実施し、バイオマーカーの妥当性を検証する。(III) 統合失調症の髄液、末梢血、尿の収集(吉田寿美子担当)ナショナルセンター・バイオバンクの血液を提供する。また、その結果を再現するために、臨床検査使用後の余剰検体として廃棄予定の髄液、末梢血、尿を収集する。(I)で検討され末梢でバイオマーカーとして有望な分子が髄液中での動態を反映しているか検討するために活用する。
統合失調症の末梢血、髄液、尿中のカルボニルストレス関連分子を計測する。また、プロテオミクス解析により、新たなバイオマーカーの検索も行う。マウスにAGEsを投与しビタミン欠乏食の有無で特徴的に変動する分子を同定し、患者検体でその物質と臨床情報の関連を検討して新しいバイオマーカーを同定する。27年度開始が内定している活性型ビタミンB6(ピリドキサミン)を用いた治験において、候補マーカーの動きをモニターして症状改善との関連を検証する。(II) 統合失調症の末梢血、尿および臨床情報の収集(新里和弘担当) 統合失調症の末梢血、尿およびPANSS、投薬内容、DSM-IV、年齢、性別、発症年齢、家族歴など臨床情報を収集する。27年度は治験を実施し、バイオマーカーの妥当性を検証する。(III) 統合失調症の髄液、末梢血、尿の収集(吉田寿美子担当)ナショナルセンター・バイオバンクの血液を提供する。また、その結果を再現するために、臨床検査使用後の余剰検体として廃棄予定の髄液、末梢血、尿を収集する。(I)で検討され末梢でバイオマーカーとして有望な分子が髄液中での動態を反映しているか検討するために活用する。
結果と考察
ペントシジンとビタミンB6を用いて糖尿病と腎機能障害を除外した163名の統合失調症患者を4群に分類し、カルテ調査と統合失調症の精神症状評価尺度であるPositive And Negative Syndrome Scale (PANSS) を実施して臨床特徴を比較検討した。その結果、カルボニルストレスを呈する患者群(カルボニル群、group 4)では、カルボニルストレスの無い患者群(非カルボニル群、group 1)と比較して、入院患者の割合が高く(カルボニル群:80.8%、非カルボニル群:23.9%、p<0.0001)、入院期間が4.2倍と長期に及び(カルボニル群:17.4±16.9、非カルボニル群4.2±9.2、p<0.001、単位:年)、投与されている抗精神病薬の量が多い(カルボニル群:1143.9±743.6、非カルボニル群773.8±652.4、p<0.05、単位:mg/日、CP換算)という特徴が明らかになった(Miyashita et al. Schizoph. Bull. 2014)。統合失調症を対象とし、Manchester Scale日本語版によって精神症状を評価し、Wechsler Adult Intelligence Scale 3rd とWisconsin Card Sorting Test慶応F-S versionにより認知機能を調べた。ペントシジンとピリドキサールの濃度により被験者を4群に分けて認知機能検査、精神症状評価の結果を統計解析した。29名の被験者のデータを収集し解析を行った。その結果、カルボニルストレス性統合失調症では作動記憶、視覚的長期記憶、即時記憶の低下、概念を見失う傾向にあることが確認された(Kobori et al. CBSM2014-Yonsei BK21plus Joint symposium 2014)
結論
カルボニルストレスを治療抵抗性や認知機能のバイオマーカーとして期待できる可能性が示唆されており、より詳細な検討を継続する意義がある。
公開日・更新日
公開日
2015-09-17
更新日
-