文献情報
文献番号
201446018A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患患者早期介入のための医療従事者向け研修プログラム開発ーメンタルヘルス・ファーストエイドの応用ー
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 隆弘(九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点)
研究分担者(所属機関)
- 大塚耕太郎(岩手医科大学医学部神経精神科学講座)
- 鈴木友理子((独)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神保健研究部)
- 赤司浩一(九州大学医学研究院病態修復内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,830,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
うつ病など精神疾患をもつ患者が、最初から精神科・心療内科を受診することは稀で、多くは身体症状などを訴えて身体科を受診するため、適切な精神医学的対応は遅れがちで、慢性化や症状増悪、あるいは、自殺対応への遅れが懸念される。しかるに、精神医療を専門としない医療従事者(研修医・医師・看護師など)が精神疾患患者への早期対応法を習得することは、精神疾患患者の早期対応・早期治療に直結するため、厚生労働行政上急務である。
オーストラリアでは、精神保健知識や精神疾患をもつ患者への初期対処法を習得するために、精神障害者に対応する可能性の高い人々(消防、救急隊、聖職者など)や一般市民を対象に、うつ・自殺念慮など地域生活において直面する可能性のある精神状態像にどのように初期対応し、その後円滑に専門家の支援につなげるかを実践的に習得できる研修プログラム(メンタルヘルス・ファーストエイド: MHFA)が開発され、数万人規模で普及し、その効果が量的研究、質的研究の両面で実証されている。
本研究では、我々がこれまで推進してきた我が国でのMHFA普及啓蒙活動の経験を踏まえ、「医療現場に特化した精神疾患患者への対応スキルが向上する研修プログラム」を新たに開発し、その効果を検証することを目的とする。初年度は、その暫定版の作成を行った。
オーストラリアでは、精神保健知識や精神疾患をもつ患者への初期対処法を習得するために、精神障害者に対応する可能性の高い人々(消防、救急隊、聖職者など)や一般市民を対象に、うつ・自殺念慮など地域生活において直面する可能性のある精神状態像にどのように初期対応し、その後円滑に専門家の支援につなげるかを実践的に習得できる研修プログラム(メンタルヘルス・ファーストエイド: MHFA)が開発され、数万人規模で普及し、その効果が量的研究、質的研究の両面で実証されている。
本研究では、我々がこれまで推進してきた我が国でのMHFA普及啓蒙活動の経験を踏まえ、「医療現場に特化した精神疾患患者への対応スキルが向上する研修プログラム」を新たに開発し、その効果を検証することを目的とする。初年度は、その暫定版の作成を行った。
研究方法
我々は、2007年メルボルンにてMHFAプログラム創始者からMHFA講習会(第一版)を直接受講し、MHFAを日本語に翻訳し、MHFAを基にした精神保健に関する短期研修プログラムを我が国で実施し、普及啓蒙活動に従事してきた。日本初のMHFAを活用した講習会は、研究代表者(加藤)の所属する九州大学病院にて初期臨床研修医オリエンテーションの中で2時間コースとして実施され、前向き研究にて臨床研修医の知識、スキル、自信が向上したことを明らかにした(Katoら2010)。研究代表者は2008年以降、毎春の九州大学病院初期臨床研修医オリエンテーションに加えて、毎月精神科病棟にローテイトしてくる臨床研修医・医学生向けのMHFA講習会を継続しており、本プログラムの有用性を実感するとともに、今後改定すべき課題も見いだしてきており、本研究では、こうした実践を踏まえて、初年度・第2年度前半にかけて、「医療現場に特化した精神疾患患者への対応スキルが向上する研修プログラム」の新たな開発に取り組んできた。
結果と考察
精神神経研究センターでは、プログラムの質の改善と次年度からの介入試験における研究デザインを検討した。オーストラリアにおけるMHFA開発と日本における医療従事者向けの研修プログラムへの適応について論点を整理し、今後の研修プログラムを開発するにあたっての留意点を検討することができた。
岩手医科大学では、医療現場での対応を理解するための地域向けの視覚教材を活用した教育モデルの構築を行い、次年度以降の医療現場での視覚教材作成に向けての予備的検討を行った。2014年に作成したMHFAに基づいた対応に関する視覚教材を活用する上で、2008年に作成した視覚教材を運用した上での問題点を整理することを試みた。 MHFAに基づく対応を効果的に理解することを促すことが期待できる視覚教材であるが、良い対応や悪い対応を対比させながら、ビニエットに基づいた内容で、実践を促すことが良いと考えられた。
九州大学病院 臨床教育研修センター・精神科では、効果的プログラムの開発に向けて、毎月精神科にローテイトしてくる臨床研修医に対して、暫定版プログラムを実施し、参加者から寄せられる毎回のフィードバックを元に、プログラムの改良を断続的に行った。加えて、看護師・保健師など医療福祉関連に従事している方を対象とした3時間の研修会も実施し、その効果をビネット症例への対応法をMHFAの5ステップに則して尋ねるという形で評価し、概ね良好な結果を得た。
加えて、MHFAの講師・インストラクター育成のためのMHFA講習会を実施し、インストラクター養成に成功している。こうしたインストラクターが、次年度以降の多施設共同研究の実働を担う予定である。
このように、今年度の計画は予定通りに進捗しており、暫定版のプログラム開発に成功した。現時点では、2時間程度の演習を盛り込んだ教育研修プログラムが望ましいと示唆される。
岩手医科大学では、医療現場での対応を理解するための地域向けの視覚教材を活用した教育モデルの構築を行い、次年度以降の医療現場での視覚教材作成に向けての予備的検討を行った。2014年に作成したMHFAに基づいた対応に関する視覚教材を活用する上で、2008年に作成した視覚教材を運用した上での問題点を整理することを試みた。 MHFAに基づく対応を効果的に理解することを促すことが期待できる視覚教材であるが、良い対応や悪い対応を対比させながら、ビニエットに基づいた内容で、実践を促すことが良いと考えられた。
九州大学病院 臨床教育研修センター・精神科では、効果的プログラムの開発に向けて、毎月精神科にローテイトしてくる臨床研修医に対して、暫定版プログラムを実施し、参加者から寄せられる毎回のフィードバックを元に、プログラムの改良を断続的に行った。加えて、看護師・保健師など医療福祉関連に従事している方を対象とした3時間の研修会も実施し、その効果をビネット症例への対応法をMHFAの5ステップに則して尋ねるという形で評価し、概ね良好な結果を得た。
加えて、MHFAの講師・インストラクター育成のためのMHFA講習会を実施し、インストラクター養成に成功している。こうしたインストラクターが、次年度以降の多施設共同研究の実働を担う予定である。
このように、今年度の計画は予定通りに進捗しており、暫定版のプログラム開発に成功した。現時点では、2時間程度の演習を盛り込んだ教育研修プログラムが望ましいと示唆される。
結論
日本における「医療現場に特化した精神疾患患者への対応スキルが向上する研修プログラム」の作成に向けて、開発を進めている段階にあり、当初の計画通りに実行することができた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-17
更新日
-