先天性難聴に対する保存臍帯を用いた胎内先天性風疹ウイルス感染検索方法の新規開発

文献情報

文献番号
201446016A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性難聴に対する保存臍帯を用いた胎内先天性風疹ウイルス感染検索方法の新規開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
守本 倫子(国立研究開発法人成育医療研究センター 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮入 烈(国立研究開発法人成育医療研究センター感染症科)
  • 齋藤 昭彦(新潟大学医学部小児科)
  • 仲野 敦子(千葉県こども病院耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はRNAが不安定であるために不可能とされていた風疹ウイルスRNAを保存臍帯から同定することに世界で初めて成功した。本研究は、申請者らの開発した保存臍帯を用いた風疹ウイルス遺伝子同定法の信頼度を高めること、さらに本法を用いて潜在性の先天性風疹症候群(CRS)の出生頻度を明らかにし、CRS児の早期発見・介入とリハビリや自立支援の促進につなげることを目的とする。
研究方法
国立成育医療研究センターおよび千葉こども病院において、原因が明らかではない難聴症例から同意を得た上で保存臍帯の提供を受ける。臍帯の一部を採取し、RNAを抽出・精製し、リアルタイムPCRにより風疹ウイルスの同定を行い、さらにウイルスの遺伝子型を決定し、出生時期に流行が報告されている遺伝子株と比較検討を行う。
①CRS例と対照例の検査を行い、本手技の感度・特異度を算出し、さらに汎用化するための簡略化を検討する。
②原因不明の先天性難聴児の臍帯検査を行い、潜在性CRSを検索する。
③風疹の胎盤感染と難聴発症の関係を明らかにし、早期介入の有用性や効果を評価する。
結果と考察
① 感度および特異度: 9例のCRS症例(1982年生まれ~2013年生まれ)の臍帯検査では9例共に風疹ウイルスのRNAが検出された。そのうち2例についてはDNA解析が可能であり、当時流行していたウイルス株と一致した。2例のコントロール症例はすべて陰性であった。現時点では感度はほぼ100%となった。ただし、遺伝子型については、9例中2例のみ決定でき、どちらも同時期に流行していた株と一致した。今後他の検体についても条件を変えて検討を行う必要がある。
② 対象症例の抽出: 千葉子ども病院および成育医療研究センターを受診した先天性難聴患者のうち、それぞれの難聴遺伝子検査および臍帯を用いたサイトメガロウイルス胎内感染検査について検討を行った。千葉子ども病院では難聴186例中難聴遺伝子変異例が76例、CMV陽性が4例、原因不明が106例であった。成育医療センターでは難聴185例中難聴遺伝子変異例は80例、CMV陽性が9例、原因不明が96例であった。原因不明の先天性難聴はそれぞれ先天性難聴と診断された症例の57%、52%であった。
③ 検査工程の般用化:1検体のRNAの抽出工程では6時間以上を要するため、工程の簡略化による作業時間の短縮が必要であることが明らかになった。今後保存臍帯に残存するウイルスRNAを効率良く確実に得るため、裁断方法を標準化し、抽出作業を汎用化する方法を検討している。また、抽出されるRNA溶液に含まれている夾雑物質の組成が後の測定に影響を与えないよう多くの検体を処理してトラブルシューティングを作成することが重要である。
④ 早期診断・早期介入の体制構築:難聴の早期診断と介入は児の発達を促すために重要であることはすでに明らかである。しかし、個別に調査したところ難聴医療および療育が十分にうけられていない児が少なくないことが判明した。疾患の特徴が明確になると、言語訓練や人工内耳手術などの医学的介入による効果も評価することが可能であり、それにより疾患に適した診療や療育体制の構築が可能となるため、今後実態を調査して体制の問題点を検証していく必要がある。
結論
本手法を用いた臍帯からの風疹ウイルス感染検索は検査の感度はほぼ100%と考えられた。今後信頼性を高めること、および遺伝子型決定の条件を変えて検討する必要があると考えられた。さらに実用的な検査手技とするために手順を簡略化することが求められる。また、原因不明難聴症例の風疹ウイルス検査を開始する準備は整ったため、今後検体検査を行い先天性風疹ウイルス感染が難聴を起こすメカニズムを明らかにすることが可能になることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446016C

収支報告書

文献番号
201446016Z