ノイズ様前庭電気刺激を利用した末梢前庭障害患者に対するバランス障害改善機器の開発

文献情報

文献番号
201446014A
報告書区分
総括
研究課題名
ノイズ様前庭電気刺激を利用した末梢前庭障害患者に対するバランス障害改善機器の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 真一(東京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 義春(東京大学 教育学部)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部 )
  • 狩野 章太郎(東京大学 医学部 )
  • 藤本 千里(東京大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,361,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経皮的前庭電気刺激(galvanic vestibular stimulation: GVS)は、耳後部に貼付した電極より電流を流すことで前庭神経を直接刺激する方法で、従来、前庭機能検査に使用されている。近年、微弱な入力信号に対する非線形の応答がノイズを与えることによって補強されるという確率共振現象が注目されており、微弱なGVSがパーキンソン病などの変性疾患における自律神経反射やパフォーマンスの向上に有効であることが示されている。本研究では、確率共振を前庭神経に応用し、ノイズ様GVSによって末梢前庭障害によるめまい・平衡障害に対する新たな治療法の開発を目的とする。
研究方法
1.ノイズ様GVSの歩行に対する影響
0~700Aの様々な強度のノイズ様GVSを与えた状態で10m歩行させ、歩行分析機によって、歩行の速度、周期、動揺の程度についての解析を行う。
2.ノイズ様GVS長期刺激の効果
これまでの研究で、短時間(30秒間)のノイズ様GVSによって、健常者および両側末梢前庭障害患者の立位時の体平衡を改善可能であることについては、既に確認済みである(Iwasaki et al. Neurology 2014)が、長時間の刺激が、体平衡の改善に有効かどうかは必ずしも明らかではない。また、これまでの実験において、刺激終了後もGVSの刺激が残存する持ち越し効果があることを確認している。
 そこで、本年度の研究では、ノイズ様GVSの長期刺激の安全性と刺激終了後の持ち越し効果、反復刺激の効果について検討することを目的として、耳疾患の既往のない健常成人を対象とした、クロスオーバー試験を計画した。
適格性が確認された被験者のうち、ノイズ様GVSで体平衡機能が改善される、最適刺激が存在する被験者のみを登録する。
登録された被験者は、30分刺激による持ち越し効果と反復刺激の効果を評価した後、3時間刺激の持ち越し効果を評価する群、また、その逆の順番で持ち越し効果と反復刺激の効果(30分刺激のみ)を評価する群の2群にランダム割り付けされる。なお、1回目の評価の後、2回目の評価までに7日以上の期間を空けることとする。
結果と考察
1.ノイズ様GVSの歩行に対する影響
ノイズ様刺激の歩行への影響については、現在健常成人10名に対して検討を行い、7名において、歩高速とおよび歩行周期の改善を認めている。
2.ノイズ様GVS長期刺激の効果
現時点で、日本品質保証機構・安全電磁センターによる前庭電気刺激装置の安全性に関する承認(2014年12月1日)、上記臨床試験に関する臨床試験審査委員会の承認を得て(2014年12月24日 : P2014052-11Y)、2015年1月7日より、臨床試験を開始する予定となっている。              
目標症例数の30名については、文京区シルバー人材センターより既に登録済みである。
結論
ノイズ様前庭電気刺激の歩行への影響に関しては、順調に進められており、健常者においては期待されたデータがえられている。
ノイズ様前庭電気刺激の長期刺激の検討については、健常者における安全性および持ち越し効果・反復効果について検討する臨床試験の承認がようやく得られた段階である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446014C

収支報告書

文献番号
201446014Z