腎臓機能障害者に対する安全で効果的な腹膜透析法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
201446011A
報告書区分
総括
研究課題名
腎臓機能障害者に対する安全で効果的な腹膜透析法の開発等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
猪阪 善隆(大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 清一(名古屋大学大学院医学系研究科・腎臓内科学)
  • 新田 孝作(東京女子医科大学・第四内科学分野)
  • 中元 秀友(埼玉医科大学・総合診療内科)
  • 伊藤 恭彦(名古屋大学大学院医学系研究科・腎不全総合治療学寄附講座)
  • 中山 昌明(福島県立医科大学・腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座)
  • 杉山 斉(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科慢性腎臓病対策 腎不全治療学)
  • 鶴屋 和彦(九州大学大学院包括的腎不全治療学・腎臓内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性透析患者のうち腹膜透析(PD)患者は2.9%に過ぎない。そこで本研究では、腎代替療法を選択するうえで、PD療法をより推進するための方策を探ることを第一の目的としている。また、高齢者の在宅医療を推進するための患者教育補助ツールを開発するとともに、高齢者対策のサポートシステム、地域連携モデルを確立する。また施設間で連携してPD・血液透析(HD)併用療法を行う管理連携パスの使用の有効性も検証する。さらに、日本透析医学会統計調査委員会によるPDレジストリや大学病院などを中心としたPDレジストリにより、PD患者の実態把握や予後に関与する因子のエビデンスを確立するとともに、中性透析液を用いた透析液による効果を検討する。
研究方法
①PD療法推進のための方策の構築および高齢者支援対策
透析施設等へのアンケート調査をもとにPD療法推進のための方策を探る。高齢透析患者の在宅医療をより推進するためのPD療法指導関連ツールの作成し、全国多施設で共有できるようなツールを構築する。
②PD・HD併用療法における連携パスの効果の検討
PD・HD併用療法管理連携パスを作成使用し、連携パス使用による透析の管理状況及び合併症等を患者毎の連携パス使用事例を集計、分析、評価する。
③PD患者レジストリからの予後決定因子の探索
日本透析医学会統計調査委員会のPDレジストリより、PD 患者の長期予後、特に継続率、生存率、さらに合併症発症率等を検討する。また、大学病院を中心としてPD患者レジストリをもとに、PD患者の予後決定因子を検討する。
④PD患者における安全な透析液の検討
緩衝剤として重炭酸塩を用いた透析液と乳酸塩を用いた透析液を比較することで、安全なPD療法を行ううえでの透析液の関与について検討する。
結果と考察
①PD療法推進のための方策の構築および高齢者支援対策
高齢者のPD療法導入にあたりより安全にかつ能率的に行える患者教育用補助ツール、パンフレットを作成した。1動作を1枚とし、1枚ずつ常に確認しながらバック交換をする習慣を身につけていただくことでバック交換操作が可能となる事例を多く経験した。
②PD・HD併用療法における連携パスの効果の検討
PD・HD併用療法を行っているPD患者を対象としたPD・HD併用療法管理連携パスを作成使用し、その効果を検証するための臨床研究を行い、開始6か月後に患者アンケートを行い、パスの効用が有効であることが確認できた。
③PD患者レジストリからの予後決定因子の探索
大学病院を中心としたPD患者レジストリ(PDR-CS)では227名が登録され、多施設前向きコホート研究により、PD患者の血清β2-マイクログロブリン(β2MG)値がPDの継続ならびに患者生存の有意な予後決定因子であることを明らかにした。PD離脱の原因として腹膜炎、溢水、透析不全が多くを占め、死因は虚血性心疾患と悪性腫瘍が最多であった。
2009年度よりPD患者の全数調査「PDレジストリ」が開始され、その後毎年のPD患者の現状が報告されている。その結果PD患者の約20%はHDを併用しており、残存腎機能は4年から8年で平均500ml維持される事等が明らかとなった。PDレジストリ開始後5年目の本年はその生存率と生存率に影響を与える因子を明らかにして行く予定である。
④PD患者における安全な透析液の検討
PD治療に伴う腹膜障害の最初のステップとなるのが中皮細胞傷害である。重炭酸を用いた透析液が、現行の乳酸塩透析液より中皮細胞傷害の程度が抑制されているかを検討するために、予備的検討として、ラット中皮細胞の腹膜障害関連因子のmRNA発現を検討した。乳酸塩透析液では創傷治癒の関連因子の発現が抑制されていたが、重炭酸透析液ではその程度が少ない傾向を示した。
結論
PD導入率の改善や高齢者の在宅医療推進のための方策を検討するとともに、PD・HD併用療法管理連携パスを作成した。PD患者レジストリを用いて予後を検討するとともに、安全な透析液の効果を検討している。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446011C

収支報告書

文献番号
201446011Z