文献情報
文献番号
201446002A
報告書区分
総括
研究課題名
障害福祉データの利活用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩谷 力(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
- 加藤誠志(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 中島八十一(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 勝又幸子(国立社会保障・人口問題研究所)
- 小澤 温(筑波大学大学院)
- 竹島 正(国立精神・神経医療研究センター)
- 北村弥生(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 我澤賢之(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 寺島 彰(浦和大学)
- 高橋 競(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
障害福祉政策を実証的に行うことの必要性と、そのために障害に関するデータの整備と活用が必要なことは、国内外で指摘されている。本研究では、障害に関するデータの活用方法と活用した成果を明らかにすることを目的とする。
研究方法
活用例としては、平成23年度に厚生労働省により実施された「生活のしづらさなどに関する調査」(以下、「生活のしづらさ調査」)の詳細統計を作成し、設問の妥当性、追加された障害種別対象者(発達障害、高次脳機能障害、難病、認知症など)の抽出状況、障害の重複状況、サービス利用状況、ADLおよびIADLなどを明らかにし、平成28年度に実施が見込まれる厚生労働省による全国在宅障害者実態調査における設問の設計について提言する。
データを再利用する有効な仕組みについては、平成26年度に文部科学省と厚生労働省で取りまとめた研究倫理指針による調査データの二次利用の可能性を整理した。
また、欧米諸国およびわが国における障害及び経済に関する項目が含まれたパネルデータの状況とパネルデータから得られる研究成果を概観した。
データを再利用する有効な仕組みについては、平成26年度に文部科学省と厚生労働省で取りまとめた研究倫理指針による調査データの二次利用の可能性を整理した。
また、欧米諸国およびわが国における障害及び経済に関する項目が含まれたパネルデータの状況とパネルデータから得られる研究成果を概観した。
結果と考察
「生活のしづらさ調査」の詳細統計の一部を作成し、(1)障害者手帳所持と非所持に関わらず障害の重複状況が極めて多様であったこと、(2)手帳所持者は過去の全国調査と同等の抽出率であったが、発達障害・難病・精神障害者保健福祉手帳非所持で自立支援医療給付(精神)受給者の抽出率は低かったこと、(3)自立支援法および介護保険法によるサービスの利用ニーズは、障害者手帳非所持者は所持者と同等であったこと、(4)下肢障害、知的障害、精神障害では、障害手帳所持者の障害等級とADLの自立度は対応したが、内部障害では対応しなかったこと、(5)ADL・IADLは未成年者と高齢者で自立度が低く、障害者手帳非所持の高次脳機能障害者では自己記入者は他者記入者に比べて自立度が高かったこと、(6)ADL・IADLには性差があったことを明らかにした。
新しい研究倫理指針では、研究計画時に倫理審査申請書に二次利用の可能性を記載し、二次利用時に、再度、倫理審査を行うことで、二次利用を実現できる見込みがあることを見出した。
また、欧米で整備されているパネルデータからは施策の効果を示せることを明らかにした。
新しい研究倫理指針では、研究計画時に倫理審査申請書に二次利用の可能性を記載し、二次利用時に、再度、倫理審査を行うことで、二次利用を実現できる見込みがあることを見出した。
また、欧米で整備されているパネルデータからは施策の効果を示せることを明らかにした。
結論
詳細統計の一部から、平成28年度に実施が見込まれる厚生労働省による全国在宅障害者実態調査に向けた提言の暫定版を作成した。
1) 調査票の配布率と回収率の調査地区間のばらつきを少なくし、回収率をあげる工夫をする。
2) 高齢者をこの調査でどのように扱うかを検討する。
3) 調査票に、回答者のimpairment(診断名)、 activity limitation(生活困難度、または不自由)、participation restriction (社会参加上の制約)が回答できるような項目を追加する。Activity limitationは、国際障害統計ワシントングループが開発した尺度の採用も有効と考える。ただし、ワシントングループが開発した尺度にはない内部障害に関する項目は追加の必要がある。
4) 年齢段階別に統計を作成する。
5) 自由記述は分析しやすい方法にする。
6) 重複障害者について、障害の発生順を尋ねる項目を追加する。
7) サービスニーズについては、機能制限の設問に続いて、「その制限に対するサービスはあるか?」「どんなサービスを利用しているか」、「利用していなければ、利用したいか」を質問する。
8) 地方公共団体による障害福祉サービス利用状況把握も進んでいることから、国は、地方公共団体がもつ行政データを集積して全国の状況を把握するための仕組みを整備する。障害者手帳の年齢階層別データも行政データの集積から作成できる。
9) 地方公共団体が行っていないが有用な調査としては、症状が軽度であるためにサービス対象にならない健康上の困難を持つ者の把握のために、限定した地区での住民悉皆調査(生活のしづらさ調査のような調査)を国が支援することは有効であると考える。WHOが障害者の出現率が20%と指摘するような調査結果は、サービス対象者ではなく、このような幅広い調査で抽出されると考えられるからである。
10) 希少障害については地方公共団体の調査では標本数が少なく、状況が明らかになりにくいために、全国的な調査を国が支援する。
11) 国の調査としては、パネルデータにより障害者のライフステージと時代変化に応じた施策構築に役立てるようにすることも重要である。
12)他の公的統計(例えば、国民生活基礎調査)に障害に関する調査項目を加えることにより、「障害者」と国民全体との間で、社会生活(健康、教育、就労、余暇活動)の比較が可能になり、障害福祉施策の効果を示すことができる。
1) 調査票の配布率と回収率の調査地区間のばらつきを少なくし、回収率をあげる工夫をする。
2) 高齢者をこの調査でどのように扱うかを検討する。
3) 調査票に、回答者のimpairment(診断名)、 activity limitation(生活困難度、または不自由)、participation restriction (社会参加上の制約)が回答できるような項目を追加する。Activity limitationは、国際障害統計ワシントングループが開発した尺度の採用も有効と考える。ただし、ワシントングループが開発した尺度にはない内部障害に関する項目は追加の必要がある。
4) 年齢段階別に統計を作成する。
5) 自由記述は分析しやすい方法にする。
6) 重複障害者について、障害の発生順を尋ねる項目を追加する。
7) サービスニーズについては、機能制限の設問に続いて、「その制限に対するサービスはあるか?」「どんなサービスを利用しているか」、「利用していなければ、利用したいか」を質問する。
8) 地方公共団体による障害福祉サービス利用状況把握も進んでいることから、国は、地方公共団体がもつ行政データを集積して全国の状況を把握するための仕組みを整備する。障害者手帳の年齢階層別データも行政データの集積から作成できる。
9) 地方公共団体が行っていないが有用な調査としては、症状が軽度であるためにサービス対象にならない健康上の困難を持つ者の把握のために、限定した地区での住民悉皆調査(生活のしづらさ調査のような調査)を国が支援することは有効であると考える。WHOが障害者の出現率が20%と指摘するような調査結果は、サービス対象者ではなく、このような幅広い調査で抽出されると考えられるからである。
10) 希少障害については地方公共団体の調査では標本数が少なく、状況が明らかになりにくいために、全国的な調査を国が支援する。
11) 国の調査としては、パネルデータにより障害者のライフステージと時代変化に応じた施策構築に役立てるようにすることも重要である。
12)他の公的統計(例えば、国民生活基礎調査)に障害に関する調査項目を加えることにより、「障害者」と国民全体との間で、社会生活(健康、教育、就労、余暇活動)の比較が可能になり、障害福祉施策の効果を示すことができる。
公開日・更新日
公開日
2015-09-17
更新日
-