アルツハイマー病に対するポリフェノールの安全性と有効性に関する研究

文献情報

文献番号
201445009A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病に対するポリフェノールの安全性と有効性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
篠原 もえ子(金沢大学 医薬保健研究域医学系 脳老化・神経病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正仁(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 小林 彰子(東京大学大学院 農学生命科学研究科 食の安全センター)
  • 永井 俊匡(高崎健康福祉大学 健康福祉学部 健康栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 認知症研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
金沢大学神経内科では、in vitroおよびin vivoの実験系で植物性ポリフェノールの一種である、ロスマリン酸(RA)のアルツハイマー病(AD)病理予防効果を解明してきた。Melissa officinalis(レモンバーム)より抽出したRAを用いて試験食品を作製し、AD患者に長期間レモンバーム抽出RAを経口投与した時の安全性と有効性を検証する。また、クーロアレイHPLCを用いたヒト血清中のRA/ RA代謝物濃度の測定法を確立し、ヒトにレモンバーム抽出RAを経口投与した際に検出される血清中RAおよびRA代謝物の種類および濃度を明らかにする。
研究方法
1) ポリフェノールの安全性と忍容性およびADに対する有効性の証明:金沢大学病院外来にて、60歳以上の軽度AD患者を対象にレモンバーム抽出RAの無作為化、プラセボ対照、二重盲検、第I/ II相臨床試験を実施した。主要評価項目はレモンバーム抽出RAの安全性、副次評価項目はレモンバーム抽出RAのADに対する有効性とした。2) ポリフェノールの代謝動態解明:クーロアレイHPLCを用いた、ヒト血清中のRA/ RA代謝物濃度の測定法の検討として、酢酸エチル抽出法とメタノール沈殿法の二つを比較検討した。3)ポリフェノール代謝物の抗アミロイド作用の解明:健常人にレモンバーム抽出RA 500 mgを経口投与し投与前~投与48時間後の血清RA/ RA代謝物濃度を測定した。
結果と考察
1) ポリフェノールの安全性と忍容性およびADに対する有効性の証明:平成24年5月より平成27年1月末までにAD患者16名に対して試験食品(プラセボまたはレモンバーム抽出RA)の48週間投与を完了した。有害事象は5件報告があり、いずれも軽症で、完遂率は88.9%であった。2) ポリフェノールの代謝動態解明:酢酸エチル抽出法はRA検出限界が20 nMと低濃度のRAも検出できたが、脱抱合化反応を至適pHで行えない欠点があり、メタノール沈殿法はRA検出限界が50 nMと低濃度のRA検出にはやや劣るが、脱抱合化反応は至適pHで実施できた。酢酸エチル抽出法、メタノール沈殿法ともにRA回収率は十分高かった。3)ポリフェノール代謝物の抗アミロイド作用の解明:総RA血中濃度-時間曲線下面積(AUC)は832.13 nmol・hour/ Lであり、フリー体型RA、抱合体型RAのAUCはそれぞれ、228.77 nmol・hour/ L、603.36 nmol・hour/ Lであった。
結論
レモンバーム抽出RA試験食品 500 mg/日の長期間投与の安全性および忍容性は高いと思われた。クーロアレイHPLCを用いたヒト血清中のRA/ RA代謝物濃度の測定では、脱抱合化反応を至適pHで行えるメタノール沈殿法が適していた。レモンバーム抽出RA経口摂取後のヒト体内ではフリー体型RAよりも抱合体型RAが多く存在することを明らかにした。今後、試験管内アミロイドβ線維およびオリゴマー形成反応モデルを用いて、抱合体型RAの抗アミロイド作用の解明を行う。

公開日・更新日

公開日
2016-03-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201445009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ポリフェノール代謝動態の解明に関する研究では、クーロアレイHPLCを用いたヒト血清中ロスマリン酸(RA)/RA代謝物測定に、メタノール沈殿法を用いた前処理が適していることが明らかとなった。また、レモンバーム抽出RA内服後、ヒト体内ではフリー体型RAよりも抱合体型RAが多く存在することが明らかとなった。


臨床的観点からの成果
アルツハイマー病に対するポリフェノールの安全性と有効性に関する研究では、高齢の軽度アルツハイマー病患者における、レモンバーム抽出ロスマリン酸(RA) 500 mg/日の長期間投与の安全性および忍容性は高いとおもわれた。臨床試験終了後にレモンバーム抽出RA群、プラセボ群の開鍵を行ったあと、再度レモンバーム抽出RAの安全性、忍容性および有効性について検討を行う。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Noguchi-Shinohara M, Ono K, Hamaguchi T, et al.
Pharmacokinetics, safety and tolerability of Melissa officinalis extract which contained rosmarinic acid in healthy individuals: A randomized controlled trial
PLoS ONE  (2015)
DOI:10.1371/journal.pone.0126422

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2016-06-24

収支報告書

文献番号
201445009Z