文献情報
文献番号
201445007A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリマー製フォトニック結晶を用いたアルツハイマー病高感度診断用センサーの開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 達郎(大阪府立大学 大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 認知症研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢化社会が本格化するなか、日本の認知症患者は400万人を超えるといわれる。認知症は介護負担が大きく、社会に対する負の経済的インパクトも大きいことから、認知症疾患の中でも最も頻度の高いアルツハイマー病(AD)の治療法開発は急務である。しかし治療薬の効果判定に不可欠な正しい診断と進行度評価の標準化を実現するためのADの客観的指標は現在のところ存在しない。そのため、AD進行および予備軍である軽度認知障害(MCI)からADへの変化を反映する代理バイオマーカー確立を目指し、米国および日本で正常者・患者群の大規模観察研究が進行している。代理バイオマーカーとして有望視されているのは、体液生化学マーカーである。生化学マーカーには髄液中のアミロイドβ(Aβ)やタウといったタンパク質濃度が調べられているが、ELISA法やWestern blot法、質量分析法が用いられることが多かった。しかしこれら測定法は①操作が煩雑②専門技師が必要③専門機関への検査委託が必要④高コストといった課題があり、特に市中病院での検査は困難という課題があった。
これら課題を解決するため、本研究の目的は、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)にて作製した光学デバイス「フォトニック結晶(PhC)」が、抗原抗体反応に起因する屈折率変化によって光学特性が変化することを利用し、簡便にADの生化学バイオマーカー定量が可能なバイオセンサー開発を行うことにある。
これら課題を解決するため、本研究の目的は、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)にて作製した光学デバイス「フォトニック結晶(PhC)」が、抗原抗体反応に起因する屈折率変化によって光学特性が変化することを利用し、簡便にADの生化学バイオマーカー定量が可能なバイオセンサー開発を行うことにある。
研究方法
(1)PhCを用いたデバイス作製
アミロイドβを光学顕微鏡で観察可能なデバイスの試作を実施した。デバイスには、ナノインプリントリソグラフィーを用いて作製したポリマー製PhC(ピラー径・間隔:230 nm, 深さ:200 nm)と並行して、TiO2、Auを基材として用いたPhC作製も実施し、コスト・作製簡便性を比較した。なお、TiO2製PhCは、液相析出法、Au製PhCは真空蒸着法を用いて作製した。
(2)光学測定系の構築
本研究で開発するデバイスは、市中病院でも所有している光学顕微鏡へ測定器を搭載するだけで診断が可能となることを志向している。そこで、生物顕微鏡にCCDカメラおよびマルチファイバー分光光度計を搭載した光学測定系の構築及び作製したポリマー製PhCの光学特性評価を行った。
(3)抗原抗体反応を用いたAβの検出・定量
NILを用いて作製したポリマー製PhCを用いてADのバイオマーカー候補であるAβ(1-42)を抗原抗体反応を用いて検出・定量実験を行った。
加えて、抗原抗体反応の検出と並行して、Aβ(1-42)の凝集挙動の非染色検出も試みた。
アミロイドβを光学顕微鏡で観察可能なデバイスの試作を実施した。デバイスには、ナノインプリントリソグラフィーを用いて作製したポリマー製PhC(ピラー径・間隔:230 nm, 深さ:200 nm)と並行して、TiO2、Auを基材として用いたPhC作製も実施し、コスト・作製簡便性を比較した。なお、TiO2製PhCは、液相析出法、Au製PhCは真空蒸着法を用いて作製した。
(2)光学測定系の構築
本研究で開発するデバイスは、市中病院でも所有している光学顕微鏡へ測定器を搭載するだけで診断が可能となることを志向している。そこで、生物顕微鏡にCCDカメラおよびマルチファイバー分光光度計を搭載した光学測定系の構築及び作製したポリマー製PhCの光学特性評価を行った。
(3)抗原抗体反応を用いたAβの検出・定量
NILを用いて作製したポリマー製PhCを用いてADのバイオマーカー候補であるAβ(1-42)を抗原抗体反応を用いて検出・定量実験を行った。
加えて、抗原抗体反応の検出と並行して、Aβ(1-42)の凝集挙動の非染色検出も試みた。
結果と考察
(1)PhCを用いたデバイス作製
いずれのPhCも特異的な色彩を呈し、PhCに起因することが明らかとなった。加えて、それぞれのセンサー性能評価を行った結果、いずれのPhCも良好な感度を有することが明らかとなった。
(2)光学測定系の構築
構築した光学系は、デバイスより観察される色彩の画像撮影およびスペクトル測定を並行して実施可能であり、市販の光学部品を使用することから特注の装置・部品を必要とせず光学特性評価が可能であった。
(3)抗原抗体反応を用いたAβの検出・定量
抗体を固定化させたポリマー製PhC表面へ異なる濃度に調製したAβ(1-42)溶液を滴下し、抗原抗体反応前後の光学特性変化を観察した。その結果、Aβ(1-42)濃度1 pmol/Lから光学特性変化を観察することが可能であった。また、Aβ(1-42)を固定化し、高濃度のAβ(1-42)溶液滴下による凝集挙動の観察を行った結果、静置時間が長くなるにつれて光学特性変化量が顕著となることが観察された。
いずれのPhCも特異的な色彩を呈し、PhCに起因することが明らかとなった。加えて、それぞれのセンサー性能評価を行った結果、いずれのPhCも良好な感度を有することが明らかとなった。
(2)光学測定系の構築
構築した光学系は、デバイスより観察される色彩の画像撮影およびスペクトル測定を並行して実施可能であり、市販の光学部品を使用することから特注の装置・部品を必要とせず光学特性評価が可能であった。
(3)抗原抗体反応を用いたAβの検出・定量
抗体を固定化させたポリマー製PhC表面へ異なる濃度に調製したAβ(1-42)溶液を滴下し、抗原抗体反応前後の光学特性変化を観察した。その結果、Aβ(1-42)濃度1 pmol/Lから光学特性変化を観察することが可能であった。また、Aβ(1-42)を固定化し、高濃度のAβ(1-42)溶液滴下による凝集挙動の観察を行った結果、静置時間が長くなるにつれて光学特性変化量が顕著となることが観察された。
結論
(1)PhCを用いたデバイス作製
本研究で作製したPhCは、いずれの基材においてもセンサーとして有効であることを示唆することができた。
(2)光学測定系の構築
市中病院では、検査・診断に必要な装置を新たに導入するのは難しい。しかし、多くの市中病院では光学顕微鏡は設置している。この光学顕微鏡に追加として測定器を導入することができれば、高額な費用を必要とせず、ADの診断が可能であることを明らかにすることができた。
(3)抗原抗体反応用いたAβの検出・定量
本研究で作製したPhCは、抗原抗体反応や、ペプチド凝集によってPhC周囲の屈折率が増加する。この屈折率増加によってPhCへ光を照射した際に回折・反射特性が顕著に変化する。ここへ抗原抗体反応や凝集が生じることで周期性が乱される。これら特徴により、酵素や蛍光標識した二次抗体を使用することなく、高感度にAβ(1-42)を検出することに成功した。
本研究で作製したPhCは、いずれの基材においてもセンサーとして有効であることを示唆することができた。
(2)光学測定系の構築
市中病院では、検査・診断に必要な装置を新たに導入するのは難しい。しかし、多くの市中病院では光学顕微鏡は設置している。この光学顕微鏡に追加として測定器を導入することができれば、高額な費用を必要とせず、ADの診断が可能であることを明らかにすることができた。
(3)抗原抗体反応用いたAβの検出・定量
本研究で作製したPhCは、抗原抗体反応や、ペプチド凝集によってPhC周囲の屈折率が増加する。この屈折率増加によってPhCへ光を照射した際に回折・反射特性が顕著に変化する。ここへ抗原抗体反応や凝集が生じることで周期性が乱される。これら特徴により、酵素や蛍光標識した二次抗体を使用することなく、高感度にAβ(1-42)を検出することに成功した。
公開日・更新日
公開日
2016-03-14
更新日
-