文献情報
文献番号
201444010A
報告書区分
総括
研究課題名
大腿骨近位部骨折術後1年の要介護状態ハイリスク患者に対する介護予防や要介護度の重度化予防
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 亮(広島国際大学 総合リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
- 小澤 淳也(広島国際大学 総合リハビリテーション学部 )
- 木藤 伸宏(広島国際大学 総合リハビリテーション学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 長寿科学研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,135,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,大腿骨近位部骨折術後1年の要介護状態悪化のリスク要因を特定し,ハイリスク患者に対するリハビリテーションマネジメントによって実際の1年後の要介護状態悪化を予防できるか,検証することである.我々は本研究を2つの研究課題に分け,平成26年度は,大腿骨近位部骨折術後1年に要介護状態が悪化する患者を早期に発見するためのスクリーニングツールを開発するためのデータ収集を行った.もう1つの研究課題である「大腿骨近位部骨折術後患者に対する免荷式リフトを使用した歩行練習がADL回復に及ぼす効果」は平成27年度-平成28年度に実施,報告する予定である.
研究方法
1.研究デザイン
本研究の研究デザインは前向きコホート研究とした.大腿骨近位部骨折術後患者の術後1年の要介護状態の悪化を予測するためのデータを収集した.
2.対象
本研究は,広島県呉市にある2病院に入院した大腿骨近位部骨折患者を対象とした.データの収集は,平成26年8月から開始したが,1病院においては平成25年から開始していた別の研究のために記録していたデータも含めた.データを収集した病院および研究代表者が所属する倫理委員会から研究実施の承認を得た.
組み入れ基準は,組み入れ基準は「厚生労働省の障害老人日常生活自立度判定基準でJ・A」および「認知症老人の日常生活自立度判定基準でⅠ・Ⅱ,認知症がない」であった.除外基準は,反対側に大腿骨近位部骨折がある,その他の部位に骨折がある,とした.これらの情報は,カルテおよび問診から収集された.対象者の選定方法は便宜的サンプリングとした.事前のサンプルサイズの計算は行わなかった.
3.観察項目・内容・時期
年齢,性別といった人口統計学的変数に加え,骨折型,術式,受傷前の歩行様式,生活場所,認知症,介護保険申請の有無,要介護度,術後のADL(バーセルインデックス),合併症の有無,運動機能(CS-30),疼痛(VASおよびNRS),在院日数を調べた.
4.統計解析
本研究は2年計画であり,平成26年度は1年目にあたる.そのため,術後1年のデータが十分に得られていない.したがって,大腿骨近位部骨折術後患者の術後1年の要介護状態の悪化を予測するための統計解析は平成27年度以降に行うこととする.今年度は,患者の受傷前および受傷時のデータを集計し,患者の個人特性や術後2週の運動機能およびADLについて考察する.
本研究の研究デザインは前向きコホート研究とした.大腿骨近位部骨折術後患者の術後1年の要介護状態の悪化を予測するためのデータを収集した.
2.対象
本研究は,広島県呉市にある2病院に入院した大腿骨近位部骨折患者を対象とした.データの収集は,平成26年8月から開始したが,1病院においては平成25年から開始していた別の研究のために記録していたデータも含めた.データを収集した病院および研究代表者が所属する倫理委員会から研究実施の承認を得た.
組み入れ基準は,組み入れ基準は「厚生労働省の障害老人日常生活自立度判定基準でJ・A」および「認知症老人の日常生活自立度判定基準でⅠ・Ⅱ,認知症がない」であった.除外基準は,反対側に大腿骨近位部骨折がある,その他の部位に骨折がある,とした.これらの情報は,カルテおよび問診から収集された.対象者の選定方法は便宜的サンプリングとした.事前のサンプルサイズの計算は行わなかった.
3.観察項目・内容・時期
年齢,性別といった人口統計学的変数に加え,骨折型,術式,受傷前の歩行様式,生活場所,認知症,介護保険申請の有無,要介護度,術後のADL(バーセルインデックス),合併症の有無,運動機能(CS-30),疼痛(VASおよびNRS),在院日数を調べた.
4.統計解析
本研究は2年計画であり,平成26年度は1年目にあたる.そのため,術後1年のデータが十分に得られていない.したがって,大腿骨近位部骨折術後患者の術後1年の要介護状態の悪化を予測するための統計解析は平成27年度以降に行うこととする.今年度は,患者の受傷前および受傷時のデータを集計し,患者の個人特性や術後2週の運動機能およびADLについて考察する.
結果と考察
1.患者の参加状況
2病院から合計79名の患者が本研究に参加した.12名は術後1年の観察を終えており,61名が観察中であった.6名は転倒・骨折および死亡のため観察から脱落した.
2.リハビリテーション開始時の患者特性
患者の年齢は81.0±10.8歳であり,男性20名,女性58名であった(確認中1名).骨折型は,52名(66%)が「頚部骨折」であり,39名(49%)が「人工骨頭置換術」を施行されていた.受傷前の歩行様式は,46名(58%)が「独歩」であり,生活場所は66名(84%)が「自宅」であった.
3.合併症
1例が肺炎を発症していたが,その他の者は深刻な合併症を発症しなかった.
4.運動機能および疼痛
CS-30を実施できた者は32名であり,回数は7.3±3.8回/30秒であった.一方,疼痛は3.3±2.9であった.
5.要介護度およびADL
「要介護度なし」が39名(49%)であり,約半数を占めていた.受傷前のADLも,半数以上が自立していた.術後2週では,整容,トイレ,入浴,歩行,階段,および着替において,中央値が受傷前よりも低値であり,ADLの低下が示されていた.
6. 考察
対象者のほぼ半数以上は,受傷前に自宅で自立した生活を送っており,大腿骨頸部の骨折にて人工骨頭置換術が施行されていた.そして,入院中に深刻な合併症はほとんど発生していなかった.そのような特徴を持つ集団の一部は,術後2週時にCS-30のテストが実施できず.一定の疼痛を有していたことがうかがえた.これらの機能障害により,術後2週の整容,トイレ,入浴,歩行,階段,および着替の能力が低下していた可能性が考えられた.これらADLが1年後に改善されているか調べ,要介護状態の悪化の有無とともにそのリスク要因を探る必要がある.
2病院から合計79名の患者が本研究に参加した.12名は術後1年の観察を終えており,61名が観察中であった.6名は転倒・骨折および死亡のため観察から脱落した.
2.リハビリテーション開始時の患者特性
患者の年齢は81.0±10.8歳であり,男性20名,女性58名であった(確認中1名).骨折型は,52名(66%)が「頚部骨折」であり,39名(49%)が「人工骨頭置換術」を施行されていた.受傷前の歩行様式は,46名(58%)が「独歩」であり,生活場所は66名(84%)が「自宅」であった.
3.合併症
1例が肺炎を発症していたが,その他の者は深刻な合併症を発症しなかった.
4.運動機能および疼痛
CS-30を実施できた者は32名であり,回数は7.3±3.8回/30秒であった.一方,疼痛は3.3±2.9であった.
5.要介護度およびADL
「要介護度なし」が39名(49%)であり,約半数を占めていた.受傷前のADLも,半数以上が自立していた.術後2週では,整容,トイレ,入浴,歩行,階段,および着替において,中央値が受傷前よりも低値であり,ADLの低下が示されていた.
6. 考察
対象者のほぼ半数以上は,受傷前に自宅で自立した生活を送っており,大腿骨頸部の骨折にて人工骨頭置換術が施行されていた.そして,入院中に深刻な合併症はほとんど発生していなかった.そのような特徴を持つ集団の一部は,術後2週時にCS-30のテストが実施できず.一定の疼痛を有していたことがうかがえた.これらの機能障害により,術後2週の整容,トイレ,入浴,歩行,階段,および着替の能力が低下していた可能性が考えられた.これらADLが1年後に改善されているか調べ,要介護状態の悪化の有無とともにそのリスク要因を探る必要がある.
結論
大腿骨近位部骨折術後患者のデータは概ね順調に収集された.本研究は2年計画であり,平成26年度は1年目にあたるため,術後1年のデータは12名しか得られなかった.大腿骨近位部骨折術後1年に要介護状態が悪化する患者を早期に発見するためのスクリーニングツールの開発は,多くの患者の術後1年のデータが収集できる平成27年度に実施される予定である.
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
-