文献情報
文献番号
201444004A
報告書区分
総括
研究課題名
地域包括ケアにおける摂食嚥下および栄養支援のための評価ツールの開発とその有用性に関する検討
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
菊谷 武(日本歯科大学 大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)
研究分担者(所属機関)
- 呉屋朝幸(杏林大学医学部外科学教室)
- 神崎恒一(杏林大学医学部高齢医学)
- 長島文夫 (杏林大学医学部内科学腫瘍科)
- 田中良典(武蔵野赤十字病院 泌尿器科)
- 道脇幸博 (武蔵野赤十字病院特殊歯科・口腔外科)
- 八重垣健(日本歯科大学生命歯学部 衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 長寿科学研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
在宅療養高齢者が住み慣れた地域で食べる楽しみを享受する上で必要な強化因子、悪化因子を明らかにする。
研究① 在宅療養高齢者における介護負担と食事との関連
在宅療養高齢者を介護する家族の介護負担の関連因子を明らかにする。
研究② 在宅療養高齢者における口腔と全身状態に関する予後関連因子の検討
在宅療養高齢者の予後と摂食・嚥下機能、身体・精神機能、栄養状態との関連を明らかにする。
研究③ 在宅療養要介護高齢者におけるADLの低下に関連する因子の検討
在宅療養要介護高齢者における口腔機能とADLの変化との関連を明らかにする。
研究④ 在宅療養中の胃瘻患者に対する意識および実態調査
在宅療養中胃瘻利用者の安全な経口摂取を行うために必要な支援内容を明らかにする。
研究⑤ 在宅療養中の摂食嚥下障害患者の実態および支援の効果
地域に在住する在宅療養中の摂食嚥下障害患者の実態と、摂食嚥下リハビリテーションの効果について明らかにする。
研究⑥ 在宅療養高齢者の継続的経口摂取のための地域支援体制の検討
入院中における摂食嚥下機能支援や栄養支援と退院後の地域におけるそれらの支援状況を調査しその実態を明らかにする。
研究① 在宅療養高齢者における介護負担と食事との関連
在宅療養高齢者を介護する家族の介護負担の関連因子を明らかにする。
研究② 在宅療養高齢者における口腔と全身状態に関する予後関連因子の検討
在宅療養高齢者の予後と摂食・嚥下機能、身体・精神機能、栄養状態との関連を明らかにする。
研究③ 在宅療養要介護高齢者におけるADLの低下に関連する因子の検討
在宅療養要介護高齢者における口腔機能とADLの変化との関連を明らかにする。
研究④ 在宅療養中の胃瘻患者に対する意識および実態調査
在宅療養中胃瘻利用者の安全な経口摂取を行うために必要な支援内容を明らかにする。
研究⑤ 在宅療養中の摂食嚥下障害患者の実態および支援の効果
地域に在住する在宅療養中の摂食嚥下障害患者の実態と、摂食嚥下リハビリテーションの効果について明らかにする。
研究⑥ 在宅療養高齢者の継続的経口摂取のための地域支援体制の検討
入院中における摂食嚥下機能支援や栄養支援と退院後の地域におけるそれらの支援状況を調査しその実態を明らかにする。
研究方法
研究①在宅療養高齢者241名と主たる介護者を対象とした。BIC(The Burden Index of Caregivers)を用い、それぞれの療養者に対する主たる介護者に対して、介護負担度を調査し関連を検討した。
研究②在宅療養高齢者511名を1年間追跡調査を行い、死亡、入院をアウトカムに関連因子の検討をおこなった。
研究③在宅療養要介護高齢者716名を対象とし、1年間追跡調査を行った。ADLの低下とその関連因子の検討を行った。
研究④在宅療養中胃瘻患者44名に対してアンケート調査を行い、患者および患者家族、介護支援専門員の経口摂取に関する意識について調査した。
研究⑤在宅摂食嚥下障害患者131名を対象とし、在宅診療にて介入を行った。その効果を検討した。
研究⑥東京都北多摩地区に立地する病院4か所に入院する患者を対象とした。原疾患、入院期間、ADL、FAST分類、口腔内状況、栄養状態、嚥下機能状態、摂食嚥下段階、重症度分類、食事摂食状況、退院時支援状況 退院時カンファレンス開催の有無、栄養支援情報提供の有無、摂食嚥下支援情報提供の有無、食事摂取状況について調査し、担当の介護支援専門員は、在宅において受けているサービスの状況、栄養状態、摂食嚥下段階、肺炎発症、入院、死亡等の転機について記述する。地域で2年間の追跡を行う。
研究②在宅療養高齢者511名を1年間追跡調査を行い、死亡、入院をアウトカムに関連因子の検討をおこなった。
研究③在宅療養要介護高齢者716名を対象とし、1年間追跡調査を行った。ADLの低下とその関連因子の検討を行った。
研究④在宅療養中胃瘻患者44名に対してアンケート調査を行い、患者および患者家族、介護支援専門員の経口摂取に関する意識について調査した。
研究⑤在宅摂食嚥下障害患者131名を対象とし、在宅診療にて介入を行った。その効果を検討した。
研究⑥東京都北多摩地区に立地する病院4か所に入院する患者を対象とした。原疾患、入院期間、ADL、FAST分類、口腔内状況、栄養状態、嚥下機能状態、摂食嚥下段階、重症度分類、食事摂食状況、退院時支援状況 退院時カンファレンス開催の有無、栄養支援情報提供の有無、摂食嚥下支援情報提供の有無、食事摂取状況について調査し、担当の介護支援専門員は、在宅において受けているサービスの状況、栄養状態、摂食嚥下段階、肺炎発症、入院、死亡等の転機について記述する。地域で2年間の追跡を行う。
結果と考察
研究①介護負担を示すBIC値に影響を与えている因子において、バーサルインデックスの値をいれたモデルと、バーサルインデックスを含まないモデルを設定し、ロジスティック解析を行った。その結果、前者では、バーサルインデックス、食形態の調整、排便の介助が、後者では、食形態の調整、排尿の介助が寄与率の高い因子として抽出された。
研究②予後良好群と不良群との間で有意差を認めた項目は、ADL低下群では性別、MNA®-SF、ADL維持群では性別、年齢、Charlson Comorbidity Indexであった。
研究③ADL維持・改善群は150名(46.6%)、悪化群は172名(53.4%)であり、維持・改善群と悪化群との間で関連を認めた項目は、咬合支持の有無、訪問看護サービスの利用の有無が関連因子として抽出された。
研究④経口摂取の希望を本人・家族および介護支援専門員にアンケートを実施した。意思表示ができる者の過半数が、また家族の過半数が経口摂取を希望している状況にあり、重度要介護状態であっても経口摂取移行のニーズは大きいことが推測された。介護支援専門員と本人・家族からの回答を比較したところ、経口摂取希望の思いに差があることが認められ、介護支援専門員は本人・家族の経口摂取に対する希望を捉えきれていない可能性が示された。
研究⑤経口摂取状況と摂食嚥下機能の推奨レベルには乖離が認められ、重度の者には正の乖離が、軽度の者には負の乖離が認められた。介入により摂食状況は有意に改善を示した。経口摂取を行っていなかった患者の多くは摂食が可能になった。摂食機能の評価とそれに基づいた介入は在宅摂食嚥下障害患者に有効であることが示された。
研究⑥登録を開始し、登録者に対して、退院後に在宅に出向き、面接調査を開始した。
研究②予後良好群と不良群との間で有意差を認めた項目は、ADL低下群では性別、MNA®-SF、ADL維持群では性別、年齢、Charlson Comorbidity Indexであった。
研究③ADL維持・改善群は150名(46.6%)、悪化群は172名(53.4%)であり、維持・改善群と悪化群との間で関連を認めた項目は、咬合支持の有無、訪問看護サービスの利用の有無が関連因子として抽出された。
研究④経口摂取の希望を本人・家族および介護支援専門員にアンケートを実施した。意思表示ができる者の過半数が、また家族の過半数が経口摂取を希望している状況にあり、重度要介護状態であっても経口摂取移行のニーズは大きいことが推測された。介護支援専門員と本人・家族からの回答を比較したところ、経口摂取希望の思いに差があることが認められ、介護支援専門員は本人・家族の経口摂取に対する希望を捉えきれていない可能性が示された。
研究⑤経口摂取状況と摂食嚥下機能の推奨レベルには乖離が認められ、重度の者には正の乖離が、軽度の者には負の乖離が認められた。介入により摂食状況は有意に改善を示した。経口摂取を行っていなかった患者の多くは摂食が可能になった。摂食機能の評価とそれに基づいた介入は在宅摂食嚥下障害患者に有効であることが示された。
研究⑥登録を開始し、登録者に対して、退院後に在宅に出向き、面接調査を開始した。
結論
摂食嚥下機能の維持は、介護負担の軽減、ADLの維持、予後の改善に寄与する。在宅療養摂食嚥下障害患者において、経口摂取をしていない摂食状況の悪化した者でも、適切なかかわりで経口摂取の再開が可能である。一方で、経口摂取の維持や再開に向けた地域での取り組みは十分ではなく、経口摂取維持、再開を的確に取り組めるシステムの構築が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-17
更新日
-