文献情報
文献番号
201443006A
報告書区分
総括
研究課題名
線維筋痛症の病因・病態の解明と客観的診断・評価法の開発及びトータルマネジメントの確立に関する戦略的総合研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松本 美富士(東京医科大学 医学部医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 横田 俊平(横浜市立大学医学部小児科学)
- 倉恒 弘彦(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
- 西岡 健弥(順天堂大学 医学部脳神経内科学)
- 磯村 達也(東京医科大学 医学部医学総合研究所)
- 臼井 千恵(順天堂大学 医学部附属練馬病院メンタルクリニック)
- 菊地 雅子(横浜市立大学 医学部附属病院小児科)
- 長田 賢一(聖マリアンナ医科大学 医学部神経精神科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 慢性の痛み解明研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし
研究報告書(概要版)
研究目的
線維筋痛症(FM)の病因・病態解明のため、脳内神経炎症とネットワーク機能障害との想定で、脳機能画像解析、FMの客観的診断法・評価法確立のためにFM疼痛をsmall fiber neuropathyと捉え、“医療機器X“による測定法の有用性の検討、特に若年性FM(JFM)の発症要因の解析ためにワクチン接種との関連について疫学調査、および米国リウマチ学会(ACR)2010年診断予備基準の小児例への有用性の検証、さらに、本邦200万人のFM患者の医療経済指標の推計を行う。
研究方法
脳機能画像解析は、FDG-PETによる糖代謝(脳血流を含む)の検討、脳内神経炎症の検討は活性型ミクログリアに発現するTranslocator proteinの特異的リガンド、[11C]PK-11195を使用)を用いて検討した。ワクチンとJFMの関連の検討のために、厚生労働省のホームページで公開されている子宮頸がん予防ワクチン副反応報告一覧2,463例の記載内容を解析し、FMについてはACR2010年診断予備基準を、慢性疲労症候群(CFS)につては厚労省改定基準(2007年)を参考にした。客観的診断法・評価法の開発“医療機器X”によるsmall fiber neuropathyの疼痛の定量的解析のパイロット試験のためにACR2010年診断予備基準を満たすFM症例を用いた。FMの医療経済指標の推計には文献検索を行い、推計のために必要な情報を収集する。また、前研究班の全国疫学調査のデータを精査し、使用可能か否か検討した。
結果と考察
FMを脳内神経炎症による脳ネットワーク機能異常と捉え、年齢、性をマッチさせた健常人と比較して、18FDG-PET解析で上前頭回、中前頭回、下前頭回、島、角回での代謝の上昇が認められた。FM合併の慢性疲労症候群(CFS)の3症例について脳内炎症マーカーである活性型ミクログリアに特異的リガンド、[11C]PK-11195の結合度を調べたところ、いずれの症例も中脳、視床、海馬、帯状回の結合度が高く、FMの病因・病態にミクログリアの活性化(神経炎症)が深くかかわっている可能性が示された。FMの発症とワクチン接種との関連が知られていることから、human papilloma virus (HPV)ワクチン接種後に副反応報告例を解析した。HPVワクチン副反応報告に6例がJFM、1例がJCFSの診断名がなされており、副反応報告の2,047例について副反応症状・徴候を検討し、JFMが71/2,463例 (3.1%)、JCFSが24/2,463例 (0.96%)に存在した。JFM診断のために米国リウマチ学会2010年診断予備基準の有用性を検討し感度、特異度ともに高く、小児でも十分使用可能であることが示された。さらに多施設症例での検討が必要である。次に、FMの疼痛をsmall fiber neuropathy測定器機器である“医療機器X”による解析から、神経障害性疼痛である可能性がうかがわれ、“医療機器X“を用いたオフセット現象、オフセット消失現象が、FMのバイオマーカーになる可能性が示唆された。また、FMの医療経済指標の推計
FMのトータルマネジメント、国の医療政策資料として、FMの医療経済的評価は本邦のみでなく,海外にも有用であると思われるが,既存の調査データを活用する場合には追加データが必要であることが、予備的検討で明らかにされ、今後、医療経済指標の推計のために患者調査を予定する。
FMのトータルマネジメント、国の医療政策資料として、FMの医療経済的評価は本邦のみでなく,海外にも有用であると思われるが,既存の調査データを活用する場合には追加データが必要であることが、予備的検討で明らかにされ、今後、医療経済指標の推計のために患者調査を予定する。
結論
FMの18FDG-PET解析で特定の部位に糖代謝異常の存在が確認され、FMが脳機能に何らかの障害があることへのエビデンスを与えるとともに、認知機能の関与を明らかにした。一方、FM併発のCFSの3症例についてミクログリア活性化を指標にPET解析では、いずれの症例も中脳、視床、海馬、帯状回の結合度が高く、FMの病因・病態にミクログリアの活性化で代表される神経炎症が深くかかわっている可能性が明らかになった。国から公開されているHPVワクチン接種後の副反応報告例にJFM/JCFSの発症例の存在が示唆されたことから、報告例全例を解析したところ、JFMが71/2,463例 (3.1%)、JCFSが24/2,463例 (0.96%)の存在が強く疑われた。一方、ACR2010年のFM診断予備基準は、小児でも有用であることが確認された。FMの疼痛は神経障害性疼痛となることを“医療機器X“を用いて確認され、オフセット現象、オフセット消失現象がFMのバイオマーカーになる可能性が示唆された。FMの医療経済的評価は本邦のみでなく,海外にも有用であると思われるが,既存の調査データを活用する場合には追加データが必要である.
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-