文献情報
文献番号
201443004A
報告書区分
総括
研究課題名
自律神経障害性疼痛の診断基準作成と新規治療法を開発するための研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
池田 修一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 岩崎 倫政(北海道大学 大学院医学研究科)
- 加藤 博之(国立大学法人信州大学 医学部)
- 川真田 樹人(国立大学法人信州大学 医学部)
- 塩沢 丹里(国立大学法人信州大学 医学部)
- 平田 仁(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 神田 隆(山口大学大学院医学系研究科)
- 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 慢性の痛み解明研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は過去3年間に神経痛性筋萎縮症の診断基準の作成と国内の疫学調査を行って来た。また痛みと麻痺を主症状とする特発性正中神経前骨間・橈骨神経後骨間神経麻痺の患者の実態調査と治療法を確立することを目指して、多施設研究グループ(inPS-Japan)を2012年2月に立ち上げた。特に近年、子宮頸がんワクチン接種後の副反応として四肢の難治性疼痛が高頻度に報告されており、その病態はCRPR、自律神経障害性疼痛とみなされている。平成25年9月26日に研究班としての診療指針を公表し、各班員の施設で診療を開始した。6ヶ月間に班全体では60余名(代表者の池田は40名)を診察した。四肢の疼痛の原因として末梢性交感神経障害や関節炎が関与している所見を得た。本研究では自律神経障害性疼痛の簡便・明瞭な診断基準の作成を行う。特に子宮頸がんワクチン接種後の副反応については全国患者の登録を行い、詳しい実態調査、ステロイドパルス療法、免疫グロブリンの大量静注療法(IVIg)、血液浄化療法等の効果を検討する。
研究方法
1、疼痛部会 平成26年度はCRPSの診断ガイドラインを作成する。inPS-Japanでは症例登録を増やし、本患者群の治療指針を示すと同時に、手根管症候群(CTS)患者の手術前後の疼痛改善度を調査する。
2、子宮頸がんワクチン副反応部会 平成25年度に続き子宮頸がんワクチン接種後の副反応を訴える患者を診察して、その全体像を掌握する。また交感神経障害の原因として血清中にganglionic acetylcholine re-ceptor autoantibodiesが存在するかどうかを検討する。また子宮頸がんワクチン副反応の診断と治療ガイドラインを作成する。さらに自己免疫疾患の素因を有するNF-κBp50欠損マウスを用いて、HPVワクチンの接種が、抗NMDA抗体の産生を誘導するか検討する。
2、子宮頸がんワクチン副反応部会 平成25年度に続き子宮頸がんワクチン接種後の副反応を訴える患者を診察して、その全体像を掌握する。また交感神経障害の原因として血清中にganglionic acetylcholine re-ceptor autoantibodiesが存在するかどうかを検討する。また子宮頸がんワクチン副反応の診断と治療ガイドラインを作成する。さらに自己免疫疾患の素因を有するNF-κBp50欠損マウスを用いて、HPVワクチンの接種が、抗NMDA抗体の産生を誘導するか検討する。
結果と考察
結果
1、疼痛部会
CRPSを含めた自律神経障害性疼痛の診断ガイドラインを作成中である。CTS患者57名の手根管解放術後2年間の経過観察では、26%に手の痛み・しびれが改善されていなかった。inPS-Japanへ登録された前骨間神経麻痺は42例、後骨間神経麻痺は31例となった。前者の21例に対して神経束間剥離術が行われ、17例で原因と考えられる神経束のくびれが見出された。
2、子宮頸がんワクチン副反応部会
子宮頸がんワクチン接種後の副反応を呈する患者は今年度、班全体で50名余を診察し、代表者の池田は昨年度からの経過観察者を含めて合計で82名の患者を診察し分析を行った。その結果、以下の2点が新たに判明した。i)主症状であり、末梢性交感神経障害が関与していると推測される頭痛(68%)、四肢の疼痛・振え(45%)は約 80%の頻度で改善傾向がみられる、ii)新たな症状として学習障害(42%)、過眠症(15%)がみられる。前者については9名で高次脳機能検査(WAIS-III、TMT試験)、脳SPECTを行い、脳内の処理速度が著しく低下していること、また前頭葉から側頭葉内側部の血流低下がはることが判明した。また四肢の疼痛症状と脳の高次機能障害の発現には時相のずれがあり、後者が遅れて発現している。その結果、四肢の症状が軽快しても高次脳機能障害の遅延発現により罹患女児が学校へ行けない状態が継続していると判断された。
四肢の疼痛、運動障害に対して免疫調整療法として、鹿児島大高嶋が血液浄化療法を10名に、信州大池田がIVIg療法を1名に実施した。血液浄化療法は2名で著効が得られた。過眠症についてはナルコレプシーの治療薬であるモディオダールが有効な印象を得た。また、HPVワクチンを接種したNF-κBp50欠損マウスにおいて、中枢神経細胞に発現している蛋白質を認識する自己抗体の産生が認められた。
1、疼痛部会
CRPSを含めた自律神経障害性疼痛の診断ガイドラインを作成中である。CTS患者57名の手根管解放術後2年間の経過観察では、26%に手の痛み・しびれが改善されていなかった。inPS-Japanへ登録された前骨間神経麻痺は42例、後骨間神経麻痺は31例となった。前者の21例に対して神経束間剥離術が行われ、17例で原因と考えられる神経束のくびれが見出された。
2、子宮頸がんワクチン副反応部会
子宮頸がんワクチン接種後の副反応を呈する患者は今年度、班全体で50名余を診察し、代表者の池田は昨年度からの経過観察者を含めて合計で82名の患者を診察し分析を行った。その結果、以下の2点が新たに判明した。i)主症状であり、末梢性交感神経障害が関与していると推測される頭痛(68%)、四肢の疼痛・振え(45%)は約 80%の頻度で改善傾向がみられる、ii)新たな症状として学習障害(42%)、過眠症(15%)がみられる。前者については9名で高次脳機能検査(WAIS-III、TMT試験)、脳SPECTを行い、脳内の処理速度が著しく低下していること、また前頭葉から側頭葉内側部の血流低下がはることが判明した。また四肢の疼痛症状と脳の高次機能障害の発現には時相のずれがあり、後者が遅れて発現している。その結果、四肢の症状が軽快しても高次脳機能障害の遅延発現により罹患女児が学校へ行けない状態が継続していると判断された。
四肢の疼痛、運動障害に対して免疫調整療法として、鹿児島大高嶋が血液浄化療法を10名に、信州大池田がIVIg療法を1名に実施した。血液浄化療法は2名で著効が得られた。過眠症についてはナルコレプシーの治療薬であるモディオダールが有効な印象を得た。また、HPVワクチンを接種したNF-κBp50欠損マウスにおいて、中枢神経細胞に発現している蛋白質を認識する自己抗体の産生が認められた。
結論
子宮頸がんワクチン接種後の副反応としての四肢の疼痛はCRPS類似であり、その発現には末梢性交感神経障害が関与している。
同症状を呈する女児は時相を違えて学習障害、過眠症等の中枢神経障害が出現することがある。末梢性交感神経障害と中枢神経障害にはHPVワクチンに関連した共通の自己抗体が関与していることが推測される。
同症状を呈する女児は時相を違えて学習障害、過眠症等の中枢神経障害が出現することがある。末梢性交感神経障害と中枢神経障害にはHPVワクチンに関連した共通の自己抗体が関与していることが推測される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-