色素性乾皮症のiPS細胞を用いた病態解明と治療法の開発

文献情報

文献番号
201442036A
報告書区分
総括
研究課題名
色素性乾皮症のiPS細胞を用いた病態解明と治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(難治性疾患実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201442036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)XPDタンパクの変異によりATP結合能が低下することが、D群の症状の重症度に寄与するので(JID)、ATP結合能を回復させる候補薬をin silicoで絞り込み、そのうち1つの化合物の処理によりXP-D細胞での紫外線照射後の損傷DNAの修復が回復していることを本研究で開発した非RI法での測定により確認した。(2)XP-iPS細胞の樹立と標的臓器細胞への分化に成功した。(3)XPAマウスにXPA 遺伝子含有HVJ envelopeを外用し、紫外線DNA損傷量の減少と皮膚障害の改善がみられた。
臨床的観点からの成果
(1)XPの診断に必須であった不定期DNA合成能(UDS)に代わる方法として、非-RIで細胞周期毎の修復能(DNA損傷の除去率)評価を開発し、UDSとの相関性の高いことを示し研究皮膚科学会で口頭発表した。(2)次世代シークエンサーも駆使して、診断に難渋したA群以外のXP20例について遺伝子変異を同定した。(3)ナンセンス変異を有するXP症例(XP12RO)でゲンタマイシンによるread throughを試み、1、3日後のXPAタンパクの回復を確認した。
ガイドライン等の開発
日本人のXPにおける遺伝子型-症状相関を検討した結果、日本のXP-D群患者では欧米と異り、神経症状を伴いにくいこと、その理由が日本のXP-D群患者におけるXPD遺伝子の変異が欧米に多く見られる変異と異なり、ATP結合能が残っているためであることを明らかにし、その点について“色素性乾皮症の診療ガイドライン”に盛り込み、発表した(日皮会誌125(11):2013-2022,2015.10)。英語版の作成も行なった。
その他行政的観点からの成果
XPの発達障害、神経障害に対するメラトニンの効果についてその有効性について preliminaryな臨床試験を施設内で行っており、有用性を示唆するデータが出ているので、医師主導型で多施設共同治験を進める準備をしている。この治療法がXPの神経症状の改善に有用であると判断されれば、治療薬としての申請を行うことも視野に入れて研究を進めている。
その他のインパクト
2015年米国で開催のXP expert meetingで“XP in Japan”の講演を行い、日本で重症の神経症状を伴うXP-A群が多いことを報告した。2015年12月に開催された日本研究皮膚科学会の「難病治療の国際シンポジウム」で治療開発について発表した。2016年日本皮膚科学会中部支部総会に於いて、XP-D群の創薬の可能性を話した。iPS細胞からの培養色素幹細胞の確立方法について論文が公表後、テレビ(NHK)、新聞(日経, 読売, 時事通信)に取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
53件
その他論文(和文)
47件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
88件
学会発表(国際学会等)
36件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
12件

特許

特許の名称
色素幹細胞の製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2015-242724
発明者名: 錦織千佳子、青井貴之、保坂千恵子、国定充、青井三千代
権利者名: 国立大学法人神戸大学
出願年月日: 20151210
国内外の別: 国内
特許の名称
XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2017-229111
発明者名: 菅澤薫、錦織千佳子、高岡裕
権利者名: 国立大学法人神戸大学
出願年月日: 20171129
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakano E, Takeuchi S, Ono R et al.
Xeroderma Pigmentosum Diagnosis Using a Flow Cytometry-Based Nucleotide Excision Repair Assay.
J Invest Dermatol , 138 (2) , 467-470  (2018)
10.1016/j.jid.2017.08.046
原著論文2
Kunisada M, Hosaka C, Takemori C et al.
CXCL1 Inhibition Regulates UVB-Induced Skin Inflammation and Tumorigenesis in Xpa-Deficient Mice.
J Invest Dermatol , 137 (9) , 1975-1983  (2017)
10.1016/j.jid.2017.04.034
原著論文3
Hosaka C, Kunisada M, Koyanagi-Aoi M et al.
Induced pluripotent stem cell-derived melanocyte precursor cells undergoing differentiation into melanocytes.
Pigment Cell Melanoma Res  (2019)
10.1111/php.12972

公開日・更新日

公開日
2016-05-24
更新日
2019-06-04

収支報告書

文献番号
201442036Z