角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の医師主導治験

文献情報

文献番号
201442007A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の医師主導治験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 仁(関西労災病院 眼科)
  • 井上 幸次(鳥取大学 医学部医学科 視覚病態学分野)
  • 岡田 潔(大阪大学 医学部附属病院 未来医療開発部)
  • 嶋澤 るみ子(大阪大学 大学院医学系研究科 最先端医療イノベーションセンター)
  • 新谷 歩(大阪大学 大学院医学系研究科 臨床統計疫学寄附講座)
  • 山田 知美(大阪大学 大学院医学系研究科 臨床統計疫学寄附講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(難治性疾患実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
73,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜上皮幹細胞疲弊症に対する従来治療法の治療成績は極めて不良であり、全身的副作用も問題となっている。さらに、わが国では献眼数が絶対的に少なく、ドナーが不足している。我々はこれらの問題を解決しうる、自己口腔粘膜を細胞源とした独自の培養口腔粘膜上皮細胞シート移植法を開発した。本細胞シートの薬事承認には治験実施が必須であることから、本研究事業の3年間において医師主導治験を実施し総括報告書を完成することを目標とし、その成果を元に連携先企業より製造販売承認申請を行い、承認取得、保健医療化することを最終目標とする。
研究方法
3年計画の初年度である本年は、PMDAにおける薬事戦略相談(品質・治験プロトコル)を引き続き行い、医師主導治験の治験プロトコル、症例報告書、治験製品概要書、各種SOP等の作成を進めた。文書作成にあたっては、「医薬品医療機器等法」、「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)」及びその他の関連する指針等の規制要件を遵守し、要件を全て満たすよう考慮した。さらに治験製品の製造委託先であるJ-TEC社への培養口腔粘膜上皮細胞シートの製造および品質検査技術移転を行い、治験内容の詳細を最終決定した。
結果と考察
治験製品である培養口腔粘膜上皮細胞シートの品質および治験プロトコルに関して、PMDAでの薬事戦略相談を行った。品質については、原材料の生物由来原材料基準への適合性、製造場所の変更に伴う品質の一貫性、輸送方法と製品安定性、不純物残留の評価について対面助言で確認し、これらについて現在の対応で治験を開始することで問題ないことを確認した。治験プロトコルについては、対象疾患および選択・除外基準の適切性、主要評価項目および副次評価項目の適切性等について対面助言で確認し、治験内容の詳細を最終決定した。また治験製品の製造委託先であるJ-TEC社に対する製造および品質検査技術移転を行った。具体的には、製造SOPの読み合わせ、大阪大学における細胞シート評価時の立会い、培養法についての合同会議を行った。さらに、治験での製造工程および品質評価方法が、大阪大学における臨床研究時のものから変更になることから、これらの同等性について培養口腔粘膜上皮細胞を用いて確認した。以上の段階を経て、治験届の準備を進めることができた。角膜上幹細胞疲弊症に対する培養口腔粘膜上皮細胞シートを承認・製品化した例は、国内外を通じてなく、本研究を基にした培養口腔粘膜上皮細胞シートの承認取得は、日本初のシーズによる世界に先駆けた製品となるものである。
結論
来年度開始予定の医師主導治験について、予定通り平成27年度中に実施できるよう準備ができた。本研究事業における進捗は順調であり、予定通りに進んでいる。本年度の成果をもとにして、来年度も分担研究者およびJ-TEC社と共にプロジェクトを推進し、来年度には患者治療および経過観察を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201442007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
角膜上皮幹細胞疲弊症に対して、従来献眼による他家角膜輪部移植が実施されてきたが、拒絶反応の発症率が高くドナーも慢性的に不足している。これらの問題を解決するために、我々は自己口腔粘膜を細胞源とした培養口腔粘膜上皮細胞シート移植法を開発した。現在、本治療法の多施設共同臨床研究において、細胞シートを移植施設外で製造・輸送した場合も含めた有効性・安全性を検証している段階である。一方、本細胞シートの薬事承認には治験実施が必須であることから、本研究にて医師主導治験を行った。
臨床的観点からの成果
医師主導治験において、全被験者の組入れ及び治験製品移植を完了し、登録症例6例全例において経過観察を完了した。治療成績は良好であり、シート移植との因果関係が否定できない重篤な有害事象は発生していない。治験実施と同時に治験製品の安全性情報を収集し、PMDAに年次報告を提出した。類似製品の安全性情報についても6ヶ月毎に3つのデータベースを用いて収集し、厚生労働省へ報告すべき外国症例情報、措置報告(外国)、研究報告はないことを確認している。また総括報告書を完成している。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究は「再生医療等製品」としての承認を目指した医師主導治験であり、本研究の成果は今後の再生医療等製品治験のモデルケースとなることが期待される。また、角膜上皮幹細胞疲弊症に対する培養口腔粘膜上皮細胞シートを承認・製品化した例は国内外通じてなく、本研究を基にした培養口腔粘膜上皮細胞シートの承認取得は日本初のシーズによる世界に先駆けた製品化となるものである。
その他のインパクト
2017年2月18日に開かれた健康増進セミナー in 大阪において一般市民に向けた講演を行い、自家口腔粘膜幹細胞を細胞源とする口腔粘膜上皮細胞シート移植(COMET)を我々が世界で初めて開発し、本法を標準医療として定着させるため、医師主導治験を実施中であることを紹介した。また、2016年4月7日の毎日新聞において、第15回日本再生医療学会総会で会長講演を行った際の記事が掲載され、本治療法が数年後には使用許諾され、認可を経て広く利用できる見通しであることが紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
・第7回「目の健康講座」シンポジウム ・2014年7月30日 毎日新聞掲載記事 ・第69回日本臨床眼科学会 市民公開講座 ・2016年4月7日 毎日新聞掲載記事 ・健康増進セミナーin大阪

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
2019-06-04

収支報告書

文献番号
201442007Z