特発性大腿骨頭壊死症におけるbFGF含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生治療の開発

文献情報

文献番号
201442001A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症におけるbFGF含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生治療の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 治彦(国立大学法人岐阜大学 医学研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(難治性疾患実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
76,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の一部が血流の一時的途絶により骨壊死に陥り、壊死骨の圧潰による疼痛や歩行障害を引き起こす進行性の疾患である。本邦ではステロイド大量投与、アルコール多飲により発生するが、骨壊死が起こる機序は明確になっていない。本邦の患者数は約10,000人(新規罹患約3,000人/年)と希少疾患に該当する。骨頭圧潰前の本疾患に対する治療法は、基本的に、免荷歩行等の対症療法のみであり、患者の70%以上が特別な治療を行うことなく骨頭圧潰をきたし、その多くが人工股関節置換術を施行される。しかし、本置換術は極めて侵襲の大きい手術であり、将来の人工関節の再置換等も想定され、適応には慎重でなければならない。
現時点で骨頭の圧潰を防ぎ、人工股関節置換術等を回避する治療法は皆無であり、骨頭圧潰を阻止する新たな治療法として、塩基性線維芽細胞増殖因子(以下、bFGF)を骨頭内に投与することにより壊死骨再生を誘導する低侵襲手術を開発する必要性は極めて高い。
本研究は、特発性大腿骨頭壊死症の骨頭圧潰阻止の治療薬としてbFGF含有ゼラチンハイドロゲルの製造販売承認を取得することを最終目標として、平成27年度の医師主導治験の開始を目指して、治験薬の製造、治験の実施体制の構築、プロトコル等の作成、本疾患の自然経過に関する後向き観察研究を実施することを目的とする。
研究方法
①治験薬の製造
実臨床における手術時の投与方法、利便性等を踏まえた治験薬の形態、調製方法を検討
する。治験薬として、bFGF 凍結乾燥品、ゼラチンハイドロゲル凍結乾燥品の無菌製剤を、治験薬GMP に準拠して製造するために、国内CMO に製造委託を行う。
②医師主導治験開始の準備
医師主導治験開始の準備として、以下を実施する。
・ 臨床研究「特発性大腿骨頭壊死症における塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生および骨頭圧潰阻止に対する安全性に関する臨床試験」の結果のまとめ
・ 「特発性大腿骨頭壊死症の自然経過に関する調査研究」の実施。
・ 医師主導治験のデザインに関するPMDA の薬事戦略相談対面助言の実施
・ 医師主導治験の実施体制の確立、実施計画書等の作成
結果と考察
①治験薬の製造
治験薬の投与方法について、ゼラチンハイドロゲルをシリンジに充填させ、そこにbFGF溶液を含浸させた後、シリンジに装着した長い針からを押出す方法により、bFGFゼラチンハイドロゲルが投与に必要な形状(ゲル状)となることが確認できた。
bFGF凍結乾燥品の試作製造、予備的安定性試験の結果から、品質、製造方法、安定性(現時点)に問題がないことが確認できた。
これらを踏まえ、治験薬GMP に準拠したbFGF 凍結乾燥品の製造を行った。
ゼラチンハイドロゲル凍結乾燥品について、ラボスケールでの製造を行い、製造方法の問題点、改善すべき点等が明らかとなった。
②医師主導治験開始の準備
臨床研究「特発性大腿骨頭壊死症におけるbFGF含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生および骨頭圧潰阻止に対する安全性に関する臨床試験」の結果、bFGF含有ゼラチンハイドロゲルの安全性が確認され、有効性が示唆された。
「特発性大腿骨頭壊死症の自然経過に関する調査研究」の結果から、医師主導治験の予定対象疾患では、一定の骨頭圧潰のリスクがあることが明らかになった。
PMDAの薬事戦略相談対面助言において、対照群を外部対照とする際の留意点、治験デザインに関する留意点が明らかとなった。上記の試験結果、薬事戦略相談対面助言におけるPMDAの助言等から、治験デザインを決定することができた。
結論
治験薬の製造に関して、bFGF 凍結乾燥品の試作製造、品質試験、予備的安定性試験の結果を踏まえて、治験薬GMP に準拠したbFGF 凍結乾燥品の製造を行うことができた。
また、ゼラチンハイドロゲル凍結乾燥品について、検討結果から、製造方法の問題点、改善すべき点等が明らかとなった。今後、ゼラチンハイドロゲル凍結乾燥品のGMPに準拠した製造を行う予定である。
医師主導治験開始の準備に関して、臨床研究「特発性大腿骨頭壊死症における塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生および骨頭圧潰阻止に対する安全性に関する臨床試験」の結果、「特発性大腿骨頭壊死症の自然経過に関する調査研究」の結果、PMDAの薬事戦略相談対面助言の結果等から、治験デザインを決定した。また、治験の実施体制を確立した。今後、先行の臨床研究における投与後24ヶ月までの結果、本疾患の自然経過に関する再集計等の結果を踏まえて、治験実施計画書等を改定する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201442001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成25年~平成26年に京都大学医学部附属病院整形外科で実施した臨床研究「特発性大腿骨頭壊死症における塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生および骨頭圧潰阻止に対する安全性に関する臨床試験」の結果をまとめた。その結果、投与後12 ヶ月の観察において、問題となる有害事象は認められず、骨頭壊死部で骨形成を認め、10例中9例で骨頭圧潰は認められなかったことは、本治療法が新たな治療法となり得ることを示唆している。
臨床的観点からの成果
上記の臨床研究の結果から、bFGF含有ゼラチンハイドロゲルの大腿骨頭内投与が本治療法が新たな治療法となり得ることをしました。また、「特発性大腿骨頭壊死症の自然経過に関する調査研究」を、京都大学、岐阜大学、東京大学において、実施した。その結果、医師主導治験の予定対象疾患である骨頭圧潰前のTypeC1及びC2の患者において、診断後24ヶ月の時点で骨頭圧潰率は約30%であり、一定の骨頭圧潰のリスクがある集団であることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
骨頭圧潰前の大腿骨頭壊死症の患者に対して、bFGF含有ゼラチンハイドロゲルの大腿骨頭内投与という新たな治療法が、今後、実施を計画している医師主導治験において、有効性及び安全性が認められた場合、ガイドラインに標準治療として、提示される可能性がある。
その他行政的観点からの成果
本治療法は、今後、実施を計画している医師主導治験において、有効性及び安全性が認められた場合、人工股関節置換術と比較して、医療費及び入院期間等を大幅に削減できることから、医療経済学的及び労働経済学的にメリットが大きい。
その他のインパクト
平成25年~平成26年に臨床研究において、遠方からの試験参加者が多く見られた。また、試験終了後も、本疾患の患者から、試験等に関する問い合わせがある。骨頭圧潰前の患者に対する治療法が、基本的に、免荷歩行等の対症療法のみであり、有効な治療法が皆無であることから、本治療法に対する患者等の期待及び関心が非常に高い。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201442001Z