免疫遺伝情報に基づく非血縁移植統合データベースの構築と最適なドナー・さい帯血の選択

文献情報

文献番号
201441011A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫遺伝情報に基づく非血縁移植統合データベースの構築と最適なドナー・さい帯血の選択
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
  • 一戸 辰夫(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 椎名 隆(東海大学 医学部)
  • 屋部 登志雄(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 小川 誠司(京都大学 医学部)
  • 松尾 恵太郎(九州大学 医学部)
  • 森島 聡子(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 村田 誠(名古屋大学 医学部)
  • 高見 昭良(愛知医科大学 医学部)
  • 鬼塚 真仁(東海大学 医学部)
  • 笹月 健彦(九州大学高等研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,658,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、最新の免疫学的手法で得られるより詳細なHLA型やHLA型以外の免疫遺伝学的知見と臨床情報を統合した非血縁移植データベースを構築・解析することにより、適切なドナー選択、治療法選択のアルゴリズムを確立し、非血縁移植成績の向上に資することである。
研究方法
骨髄バンクとさい帯血バンクでは同意の得られた患者とドナーの試料を用い(非血縁者間移植約9000ペアー、さい帯血移植ペアー約2000ペアー)、これらのDNAを用いた精緻な最新の免疫学的手法(次世代シークエンサによるHLA typing, genome wide association study(GWAS)の検証により得られたSNPs,非HLA遺伝子多型、HLAハプロタイプブロック、NK細胞受容体遺伝子等)により移植免疫反応に関与し臨床に有用な免疫遺伝情報を見出す.
結果と考察
1.Next generation sequence法により、HLA 9抗原(HLA-A, -B, -C, DRB1/3/4/5, -DQB1, -DPB1)を日本骨髄バンクから得た46検体(日本人のHLA型の99.5%以上をカバー)について、新たなmultiplex PCR増幅法を加えタイピングした。その結果、既知のアリル型(4桁)と一致するとともに、新たに6桁レベルで同定でき、さらに少量(1μg genome DNA)で測定できることを検証できた。
2.HLAアリルタイピングに基づいたさい帯血移植データベースの構築
さい帯血移植におけるHLA適合度の影響は非血縁骨髄移植とは質的に異なると考えられるが、HLAアリルレベルでの解析は十分になされていない。そこで、日本のさい帯血バンクとの共同研究として、さい帯血と患者の約2000ペアーについて、HLA-A,-B,-C,-DRB1,-DQB1,-DPB1タイピングを完了した。現在、さい帯血移植におけるこれら抗原の適合度を解析中であるが、とくに-C, -DQB1, -DPB1の報告は世界的になく、さい帯血移植における新知見となろう。
3. 非血縁者間骨髄移植におけるHLAクラスⅡ抗原適合の臨床的意義
7898症例の解析を実施することが出来た。その結果、HLA-A,-B, -Cのアリルレベルの適合度の移植免疫反応に与える影響を確認するとともに、新たにHLA-DRB1とDQB1の両アリルのミスマッチがあると急性GVHDと移植後死亡のリスクが相乗的に高くなること、ならびにHLA-DPB1不適合のGVL効果は慢性GVHD発症によるGVL効果と独立したものであることを見出した。
4. 移植免疫反応に関与するドナー/患者のHLA領域遺伝子・ハプロタイプの同定
ドナーあるいは患者のHLA抗原や、同一染色体上のHLA抗原群からなるHLAハプロタイプそのものが移植免疫反応に関与しているかどうかについて、非血縁骨髄移植6967ペアーを、5%以上の頻度があるHLAアリル43個につき解析した結果、急性GVHDで高率なアリルとしてHLA-B*51:01と-C*14:02が同定され、これらと連鎖するこの領域のHLAハプロタイプからKIR2DLリガンドミスマッチとの関連が推測された。
5. 臨床的に有用な非HLA遺伝子多型の選択:臨床データとの関連解析
 移植免疫反応にはHLA抗原以外に、非HLA領域の遺伝子多型が関与していることがこれまでに多数(100以上の多型)報告されている。しかしながらこれらの多型は異なったデータベース(移植の種類、移植法、民族など)からの報告であり、どの非HLA遺伝子多型が臨床的に有用でドナー選択に用いたら良いかは明らかでない。今年度はvalidation analysisとしてHLA-DPB1のみ不適合1003ペアを解析中である. さらに、移植免疫反応や移植合併症に関与する新規の遺伝子多型につき共有試料を用いて同定し、その機能解析を実施している。新規多型としてトロンボモジュリン遺伝子多型やCD53多型が見出された。 GWASにより有意であると同定された遺伝子多型につき新たな共有試料を用いて検証している。
結論
非血縁移植に関与する免疫遺伝学的データを多数得ることができた。これらの結果に基づく統合的データベース構築に向けた基礎資料とすることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201441011C

収支報告書

文献番号
201441011Z