造血幹細胞移植に用いる細胞の安全な処理・保存・品質管理体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201441010A
報告書区分
総括
研究課題名
造血幹細胞移植に用いる細胞の安全な処理・保存・品質管理体制の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田野崎 隆二(独立行政法人国立がん研究センター 輸血療法科)
研究分担者(所属機関)
  • 長村 登紀子(井上 登紀子) (東京大学医科学研究所 セルプロセッシング・輸血部)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 大戸 斉(福島医科大学 輸血・移植免疫学)
  • 半田 誠(慶應義塾大学病院 輸血・細胞療法センター)
  • 奥山 美樹(東京都立駒込病院 輸血・細胞治療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,316,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞移植に用いる細胞の処理・保存・品質管理は移植の成否に極めて重要である。欧米ではFACT-JACIE指針に基づき施設監査が義務付けられているが、本邦関連学会が策定した末梢血幹細胞の「動員・採取ガイドライン」および「院内における細胞処理に関する指針」は強制力に乏しい。安全な移植を確保するための体制整備は喫緊の課題である。そこで、本研究の目的は、網羅的に造血幹細胞移植に用いる細胞の安全な処理・保存・品質管理体制を確立することである。
研究方法
本研究は日本輸血・細胞治療学会の細胞治療委員会を中心に、以下に述べる8つの課題において、3年間の予定で今年度より開始した。第1に、自動血球分析装置による新規造血幹細胞測定法(HPC)の開発・応用では、国立がん研究センターと企業とで共同開発した、全自動血球分析装置を用いた末梢血造血幹細胞測定法を、多施設多検体で検証し、臨床応用法を検討することを目的とした。第2に、従来からの造血幹細胞指標であるCD34陽性細胞数測定法の標準化では、すでに10年以上前から外部精度評価が実施されている欧米とは異なり、わが国では本測定の各施設での実態が不明であることから、これを調査し、標準化のための体制を確立することを目的とした。第3に、末梢血造血幹細胞採取機種の評価においては、わが国で広く使用されている血液成分採取装置の性能を製造元企業と独立して比較検討することを目的とした。第4に、骨髄移植成功に古くから重要視されてきた輸注される骨髄有核細胞数の測定が、本当に適正に実施されているかを調査・検討することを目的とした。第5は、造血幹細胞輸注時の有害事象が十分に評価されていないと考え、これを前方・後方視的に調査し、問題点を明らかにすることを目的とした。第6は、末梢血造血幹細胞採取や細胞処理に関する指針の周知度調査と改訂を行うこととした。第7は、造血幹細胞移植の細胞を取り扱う技術者(「細胞治療認定管理師」と命名)を認定し、教育制度を確立することとした。第8に、関連学会で技術講習会を開催し、また、造血幹細胞移植を実施している国内のすべての医療従事者が利用できる細胞処理のためのテキストの作成を計画した。このような講習会やテキストは初めての試みである。
結果と考察
1)新規造血幹細胞測定法(HPC)では、従来法(CD34陽性細胞数)とHPC数を、同一検体で比較する多施設共同評価研究を実施した。HPC数は末梢血幹細胞採取産物の約5%で低信頼性値や外れ値が認められたが、多数の多様な検体において、CD34陽性細胞数と極めて高い相関を認めた(論文執筆中)。また、薬事承認申請のために、基礎的性能に関する研究を新たに実施している。2)CD34陽性細胞数測定については、前述の多施設HPC研究におけるデータをもとに、CD34陽性細胞数の施設間差について解析した。多くの施設で国際標準法(シングルプラットフォームによるISHAGE法)を採用していないこと、施設間差が無視できないこと、などが判明した(論文執筆中)。また、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)および関連学会・団体・メーカー等と協議しつつ、わが国におけるCD34陽性細胞数測定の現状把握、ガイドライン作成等の準備中。3)末梢血造血幹細胞採取装置の機種の評価では、COBE SpectraとOptiaの2種類の性能を多施設で比較検討する臨床試験を実施した。所期の登録患者数(約100人)に平成27年春に到達し解析中。4)骨髄有核細胞数測定法に関する研究では、骨髄移植に用いる骨髄の総細胞数を、骨髄バンクを介する採取施設と移植施設の両施設で測定した検体のデータを、アンケート調査で収集した。計10施設から797件のデータが集積され、骨髄有核細胞数の施設間差の程度などが明らかになった。現在詳細を解析中。5)造血幹細胞輸注時の有害事象監視では、後方視的には比較的多くの有害事象が判明した。一方、前方視研究では、これまで400例以上が登録されたが、1000例を目標に登録期間を延長して継続中。6)幹細胞採取および処理・管理に関するガイドライン改訂については、次年度アンケート調査等を計画している。7)細胞治療認定管理師制度については、関連学会と協議し、体制作りと規則・細則を作成した。次年度より、申請を受付、セミナーや認定を開始する。認定講習用テキスト作成中。8)技術講習会は、第62回日本輸血・細胞治療学会総会(奈良県開催)で実施し、平成27年度総会(東京開催)でも開催。また、「造血幹細胞移植の細胞取り扱いに関するテキスト(初版)」を関係団体共同で近く発刊予定。全国の移植に携わる医療スタッフが学会ウェブサイト等より無償でダウンロードできるようにする。
結論
各プロジェクトがほぼ予定通りに進行中である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201441010C

収支報告書

文献番号
201441010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,210,000円
(2)補助金確定額
7,724,895円
差引額 [(1)-(2)]
485,105円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,539,747円
人件費・謝金 588,443円
旅費 696,492円
その他 2,006,213円
間接経費 1,894,000円
合計 7,724,895円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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