関節リウマチの「ドラッグホリデー」と関節破壊「ゼロ」を目指す治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201441008A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの「ドラッグホリデー」と関節破壊「ゼロ」を目指す治療法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(産業医科大学 医学部 第1内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究科 免疫・代謝内科学分野)
  • 川上 純(長崎大学医歯薬学総合研究科展開医療科学講座)
  • 上阪 等(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学)
  • 住田 孝之(筑波大学医学医療系内科(膠原病・リウマチ・アレルギー))
  • 竹内 勤(慶應義塾大学リウマチ内科学)
  • 西本 憲弘(東京医科大学医学総合研究所難病分子制御学部門)
  • 三森 経世(京都大学大学院医学研究科内科学講座(臨床免疫学))
  • 山本 一彦(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学)
  • 天野 宏一(埼玉医科大学総合医療センター リウマチ・膠原病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
約100万人を数える関節リウマチ(RA)患者に必発する進行性関節破壊は、長期に亘る生活の質の低下による社会的損失を生じてきた。ZERO-J試験は、発症早期から保険診療内の強化療法により関節破壊をゼロにすることを目指した策定した治療指針を検証し、関節破壊を生じない治療法の確立を目的とした。一方、生物学的製剤の長期連用による安全性や経済性は国内外で喫緊の課題であるが、治療薬の減量や中止に関するガイドラインは国内外共に存在しない。ドラッグホリデー、即ちバイオフリー、薬剤フリー寛解を目指す治療ガイドラインの確立と検証することを(FREE-J試験)を目的とした。
研究方法
ZERO-J試験では、MTX未使用の早期の症例を登録して十分量のMTXを3ヶ月投与後、TNF阻害薬を1年間投与、MTXで1年間治療を継続、MTXで寛解・低疾患活動性を満たした各群を1年間経過観察する。主要評価項目は、開始1年後に於ける総Sharpスコアとした。FREE-J試験では、MTXと生物学的製剤で治療してDAS28寛解を2回連続満たした症例を、治療継続、MTX半減、MTX中止、生物学的製剤減量、生物学的製剤中止の5群に分け、1年後のDAS28寛解を主要評価項目とした。
結果と考察
ZERO-J試験では、162例が登録された。女性121名、男性41名、罹病期間7.4月、MTX治療開始時点でDAS28は4.8、SDAIは 20.4であった。登録後3か月での各群への振り分け時の152例ではMTXは12.0mg/週まで増量され、DAS28:3.7、SDAI: 12.2まで改善した。87例はHR群、T群35例、M群29例に振り分けられたが、DAS28、SDAI、HAQともにT>M>HR群の順で有意に高かった。次に、MTX開始12か月後の最終判定時点133例(LOCF; HR群82名、T群29名、M群22)では、DAS28(HR群、T群、M群は各2.65、2.73、2.86)、SDAI(5.3、5.5、5.9)と群間に有意差がなかったが、0-15ヶ月でのΔmTSSはそれぞれ0.54, 0.95, 0.74と群間に有意差を認め、ΔmTSS≤0.5(構造的寛解)はそれぞれ86%, 65%, 74%、ΔmTSS> 3(臨床的関節破壊進行)は3%, 6%, 5%であった。以上、約6割の患者は十分量のMTXに高反応性を示して臨床的・構造的に良好な経過を示したが、約2割の患者は生物学的製剤を使用せねば関節破壊が制御できない事が明らかになった。今後、1年間に於ける関節破壊がない高反応性症例を的確に選別し、生物学的製剤の無駄な使用を回避できることを証明する。逆に、生物学的製剤を使用せねば、関節破壊が制御できない治療抵抗性の約2割の患者を選別し、生物学的製剤の早期導入基準を確立する。FREE-J試験は開始したばかりであるが、ドラッグホリデー、即ち、バイオフリー、薬剤フリー寛解(根治)を目指すガイドラインを策定し、これを検証するため、各施設で倫理委員会の申請を行ない、MTXと生物学的製剤治療により寛解導入できたRA患者の登録を開始した。今後、約400例を目標に患者を登録し、ガイドラインに沿った保険診療内での治療戦略比較を目的とした継続的な患者データベースを構築する。今後、MTXや生物学的製剤の減量や中止を検証するとともに、疾患活動性スコアに加えて、RA関連遺伝子多型などの遺伝子情報、リンパ球サブセット細胞表面マーカー、MTX-PGやIL-6等のバイオマーカー、ACPA等の自己抗体、関節高度画像検査を駆使して、ドラッグホリデーを可能とする患者を識別し、テイラーメイド医療の実践による信頼性、治療効率・経済効率の向上を目指す。
結論
生物学的製剤とMTX治療で寛解に達成した RA患者を対象に、生物学的製剤やMTXのドラッグホリデーを目指す治療ガイドラインの確立と検証を目標とするFREE-J試験に症例登録を開始した。一方、関節破壊ゼロを目指す治療法の確立を目的としたZERO-J試験では162例が登録され、約6割の患者は十分量のMTXに高反応性を示して臨床的・構造的に良好な経過を示したが、約2割の患者は生物学的製剤を使用せねば関節破壊が制御できない事が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201441008C

収支報告書

文献番号
201441008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
24,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 17,363,883円
人件費・謝金 0円
旅費 473,930円
その他 672,270円
間接経費 5,500,000円
合計 24,010,083円

備考

備考
本研究の研究分担者への予算配分時に「配分額に過不足がない形」での執行を依頼致しましたが、一部、研究に必要な消耗品購入に際して不足が生じた為、超過分につきましては「自己充当」にて購入を執行されました。
上記理由により、「補助金確定額」と「支出合計額」に差異が発生致しました事をここに報告させて頂きます。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-