文献情報
文献番号
201441007A
報告書区分
総括
研究課題名
表皮を標的としたアトピー性皮膚炎の治療の最適化を目指す新規薬剤の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
椛島 健治(京都大学・医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 戸倉 新樹(浜松医科大学・医学部)
- 小賀 徹(京都大学・医学研究科 )
- 安東 嗣修(富山大学・薬学研究科)
- 大日 輝記(京都大学・医学研究科 )
- 鬼頭 昭彦(京都大学・医学研究科)
- 大塚 篤司(京都大学・医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
従来のアトピー性皮膚炎の治療の中心であるステロイド外用は対症療法にすぎない。皮膚バリア機能低下やかゆみによる搔破などの悪化要因が改善しなければ、皮膚炎が再発し,QOLの低下、ステロイド長期連用による副作用が避けられない。
一方、バリア破壊に伴う経皮感作はアトピー性皮膚炎のみならず、喘息や食物アレルギーの発症に繋がる可能性がある(「アレルギーマーチ」という概念)。従って、表皮バリア機能の改善は、アレルギー全般の予防につながることも期待できる。
申請者は、ライブラリーのスクリーニングにより、JTC801という化合物がフィラグリン発現の亢進を介して皮膚バリア機能を回復させ、マウスアトピー性皮膚炎モデルの発症を予防することを世界で初めて見出した。そこで、本研究では、表皮を標的としたアトピー性皮膚炎の新規治療すること、そして経皮感作を阻害することにより他のアレルギーへの進展の制御の可能性を探ることが本研究の目的である。
一方、バリア破壊に伴う経皮感作はアトピー性皮膚炎のみならず、喘息や食物アレルギーの発症に繋がる可能性がある(「アレルギーマーチ」という概念)。従って、表皮バリア機能の改善は、アレルギー全般の予防につながることも期待できる。
申請者は、ライブラリーのスクリーニングにより、JTC801という化合物がフィラグリン発現の亢進を介して皮膚バリア機能を回復させ、マウスアトピー性皮膚炎モデルの発症を予防することを世界で初めて見出した。そこで、本研究では、表皮を標的としたアトピー性皮膚炎の新規治療すること、そして経皮感作を阻害することにより他のアレルギーへの進展の制御の可能性を探ることが本研究の目的である。
研究方法
1.表皮角化細胞におけるバリア機能亢進と免疫・かゆみ制御化合物のin vitroでの探索:
申請者が確立したフィラグリンなどのレポータアッセイにより見出された候補化合物に対するフィラグリンをはじめとするバリア機能や、CCL26をはじめとする免疫に関わる因子への影響をヒト皮膚3次元培養法(in vitro)にて評価した。JAK阻害薬であるJTE-052に両者を制御する機能が見出された。また、siRNAによるStat遺伝子のノックダウンにより、バリア機能がStat3、免疫機能がStat6シグナルを介することが見出された。
2. 候補化合物のアトピー性皮膚炎への効果のin vivoでの検証:
in vitroで見出された候補化合物のバリア機能への効果をin vivoで再検証した。JTE-052にはバリア機能の回復作用があることがマウスモデルにて検証された。また、マウスアトピー性皮膚炎モデルを用いてJTE-052が免疫応答やかゆみを抑制する事をin vivoで検証した。
さらに、ヒト余剰皮膚を免疫不全マウスに植皮したモデルを用いた上記解析を実施し、ヒトの皮膚のバリア機能の亢進も見出した。
申請者が確立したフィラグリンなどのレポータアッセイにより見出された候補化合物に対するフィラグリンをはじめとするバリア機能や、CCL26をはじめとする免疫に関わる因子への影響をヒト皮膚3次元培養法(in vitro)にて評価した。JAK阻害薬であるJTE-052に両者を制御する機能が見出された。また、siRNAによるStat遺伝子のノックダウンにより、バリア機能がStat3、免疫機能がStat6シグナルを介することが見出された。
2. 候補化合物のアトピー性皮膚炎への効果のin vivoでの検証:
in vitroで見出された候補化合物のバリア機能への効果をin vivoで再検証した。JTE-052にはバリア機能の回復作用があることがマウスモデルにて検証された。また、マウスアトピー性皮膚炎モデルを用いてJTE-052が免疫応答やかゆみを抑制する事をin vivoで検証した。
さらに、ヒト余剰皮膚を免疫不全マウスに植皮したモデルを用いた上記解析を実施し、ヒトの皮膚のバリア機能の亢進も見出した。
結果と考察
表皮を標的としたバリア機能・免疫・かゆみの三つの観点から創薬の開発を進めてきた。そして、Th2環境における皮膚バリア機能と免疫の制御がIL-4/IL-13によるJAK-Statシグナルを介していることが本研究の早期に見出された。
慢性関節リウマチの治療薬として日本たばこ産業が開発したJAK阻害であるJTE-052は、第1/2相臨床試験において経口剤としては血清中高濃度で肝障害が認められるため、開発が中止されていた。この副作用の問題は、外用剤であれば回避される点に研究代表者は着目した。そこで日本たばこ産業と共同体制を構築し、非臨床試験と第1相・臨床試験が当初の予定よりも早期に実施されるに至った。従って、皮膚バリアと免疫を制御する化合物の創薬事業は予定を前倒しして進めている状況である。
しかしながら、かゆみを制御する化合物の探索と、JTE-052による皮膚のバリア・免疫の制御が他臓器のアレルギーに及ぼす影響は不明である。その点は、今後も引き続き研究計画を遂行する必要がある。
慢性関節リウマチの治療薬として日本たばこ産業が開発したJAK阻害であるJTE-052は、第1/2相臨床試験において経口剤としては血清中高濃度で肝障害が認められるため、開発が中止されていた。この副作用の問題は、外用剤であれば回避される点に研究代表者は着目した。そこで日本たばこ産業と共同体制を構築し、非臨床試験と第1相・臨床試験が当初の予定よりも早期に実施されるに至った。従って、皮膚バリアと免疫を制御する化合物の創薬事業は予定を前倒しして進めている状況である。
しかしながら、かゆみを制御する化合物の探索と、JTE-052による皮膚のバリア・免疫の制御が他臓器のアレルギーに及ぼす影響は不明である。その点は、今後も引き続き研究計画を遂行する必要がある。
結論
本研究の目的は、表皮の機能制御を標的としたアトピー性皮膚炎の治療の最適化と新規治療薬の開発である。さらに、経皮感作を介した喘息や食物アレルギーの発症への進展(アレルギーマーチ)を動物モデルで具現化し、表皮を標的としたアレルギー全般の制御の可能性を探る。本年度は、表皮角化細胞におけるバリア機能亢進と免疫制御化合物のin vitroでの探索を行い、さらに候補化合物のアトピー性皮膚炎への効果のin vivoでの検証を実施した。その結果、JAK阻害剤であるJTE-052が、外用剤としてバリア機能改善と免疫応答を制御することをin vitroとin vivoで検証した。
公開日・更新日
公開日
2015-04-22
更新日
-