文献情報
文献番号
201441006A
報告書区分
総括
研究課題名
川崎病の病因・病態解明に基づく新規治療・予防法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
原 寿郎(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 山崎 晶(九州大学 生体防御医学研究所)
- 浜岡 建城(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
- 佐地 勉(東邦大学医療センター大森病院)
- 小川 俊一(日本医科大学 小児科)
- 阿部 淳(国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部)
- 高橋 啓(東邦大学 医学部 病理学)
- 中村 好一(自治医科大学 公衆衛生学)
- 荒川 浩一(群馬大学 医学研究科)
- 市田 蕗子(富山大学 大学院医学薬学研究部)
- 尾内 善広(千葉大学 大学院医学研究院)
- 西尾 壽乘(九州大学病院 グローバル感染症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
川崎病は1960年代に日本人が見出した疾患であるが未だ原因は不明であり、また日本人での罹患率が世界一高く現在も年々増加傾向にある。
我々は、マウスへの自然免疫パターン認識受容体(Nod1)リガンド投与が川崎病類似の冠動脈炎を惹起したという研究結果を元に、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて川崎病患者検体を網羅的かつ詳細に検索し、川崎病特異的に出現する物質を患者血中に同定した。さらに、エルシニア菌などの細菌をバイオフィルム形成条件下で培養することにより、その特異的物質と統一の病原体関連分子パターン(PAMPs)を同定した。
これらの結果を元に、川崎病の病因・病態解明に基づき、新規の治療法、予防法を開発することを目的とする。
我々は、マウスへの自然免疫パターン認識受容体(Nod1)リガンド投与が川崎病類似の冠動脈炎を惹起したという研究結果を元に、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて川崎病患者検体を網羅的かつ詳細に検索し、川崎病特異的に出現する物質を患者血中に同定した。さらに、エルシニア菌などの細菌をバイオフィルム形成条件下で培養することにより、その特異的物質と統一の病原体関連分子パターン(PAMPs)を同定した。
これらの結果を元に、川崎病の病因・病態解明に基づき、新規の治療法、予防法を開発することを目的とする。
研究方法
1. PAMPsを放出するバイオフィルムに対する抑制を考慮した新たな治療・予防法の確立
1) 季節性、地域性によるPAMPsの相違と治療効果に関する疫学的検討
北部九州・山口の主要病院、さらに全国(京都、東京、群馬、富山)の施設から、川崎病患児・熱性疾患コントロールの血清、舌・歯拭い液を回収し、共通物質の有無および季節性について検討を行った。
2) バイオフィルムに作用する治療法・予防法の検討
バイオフィルム形成を抑制することにより、川崎病の症状の早期回復、予後の改善を期待できると推測し、バイオフィルム制御薬としてクラリスロマイシンに着目し、『川崎病におけるバイオフィルム制御薬クラリスロマイシンの臨床効果に関する検討-多施設共同ランダム化比較第II相試験-』を2014年11月より開始した。対象者は4か月以上、6歳未満の川崎病患者で、無作為に標準治療群もしくは介入治療群に割り付ける。標準治療群では免疫グロブリン製剤とアスピリン投与を行い、介入群ではこれらに加えてクラリスロマイシンを併用する。研究期間は6か月を予定している。
さらに、クラリスロマイシンは、原因の一つとして考えられているMycoplasma pneumoniaeやChlamydophila pneumoniaeといった病原体の治療薬として用いられることから、本臨床研究では治療前に咽頭拭い液を回収し、これらの病原体の有無についても検討を行う。
3) 川崎病特異的PAMPsによる川崎病発症機序の解明
川崎病特異的物質はバイオフィルム中の脂溶性成分に含まれており、自然免疫受容体のうちC型レクチン受容体が脂溶性物質と結合することが最近報告されていることから、C型レクチン受容体レポーター細胞を用いて検索を行った。
2. PAMPsを分解するオートファジー(ゼノファジー)を促進する新たな治療法の確立
当教室において開発した自然免疫受容体Nod1リガンド誘導川崎病類似冠動脈炎モデルマウスを用いて、オートファジー促進薬による冠動脈炎抑制効果を評価した。さらにヒト冠動脈内皮細胞を用いて、Nod1リガンドにより誘発されるサイトカイン産生を抑制できるかについても検討を行った。
1) 季節性、地域性によるPAMPsの相違と治療効果に関する疫学的検討
北部九州・山口の主要病院、さらに全国(京都、東京、群馬、富山)の施設から、川崎病患児・熱性疾患コントロールの血清、舌・歯拭い液を回収し、共通物質の有無および季節性について検討を行った。
2) バイオフィルムに作用する治療法・予防法の検討
バイオフィルム形成を抑制することにより、川崎病の症状の早期回復、予後の改善を期待できると推測し、バイオフィルム制御薬としてクラリスロマイシンに着目し、『川崎病におけるバイオフィルム制御薬クラリスロマイシンの臨床効果に関する検討-多施設共同ランダム化比較第II相試験-』を2014年11月より開始した。対象者は4か月以上、6歳未満の川崎病患者で、無作為に標準治療群もしくは介入治療群に割り付ける。標準治療群では免疫グロブリン製剤とアスピリン投与を行い、介入群ではこれらに加えてクラリスロマイシンを併用する。研究期間は6か月を予定している。
さらに、クラリスロマイシンは、原因の一つとして考えられているMycoplasma pneumoniaeやChlamydophila pneumoniaeといった病原体の治療薬として用いられることから、本臨床研究では治療前に咽頭拭い液を回収し、これらの病原体の有無についても検討を行う。
3) 川崎病特異的PAMPsによる川崎病発症機序の解明
川崎病特異的物質はバイオフィルム中の脂溶性成分に含まれており、自然免疫受容体のうちC型レクチン受容体が脂溶性物質と結合することが最近報告されていることから、C型レクチン受容体レポーター細胞を用いて検索を行った。
2. PAMPsを分解するオートファジー(ゼノファジー)を促進する新たな治療法の確立
当教室において開発した自然免疫受容体Nod1リガンド誘導川崎病類似冠動脈炎モデルマウスを用いて、オートファジー促進薬による冠動脈炎抑制効果を評価した。さらにヒト冠動脈内皮細胞を用いて、Nod1リガンドにより誘発されるサイトカイン産生を抑制できるかについても検討を行った。
結果と考察
1-1) 全国のうち、北部九州・山口から得られた検体を中心に解析を行った。すると、川崎病患者血清に特異的に見られる物質が検出され、それらの物質は以前に報告した物質とは違う新規物質であった。現在、さらに抽出・解析系を改良し、より感度が高い方法で検討を行っており、川崎病の地域性・季節性が説明できる結果が得られると考えている。
1-2) 現在、多施設共同で臨床試験を行っている。
1-3) 川崎病特異的PAMPsの受容体を検索すべく、まず自然免疫リガンドを発現させたレポーター細胞を23種類作製した上で、エルシニア菌のバイオフィルムから得られたPAMPsを含む抽出液でその細胞を刺激し解析を行ったところ、ある自然免疫リガンド発現細胞に特異的に反応をしていることがわかった。今後、その下流経路を解析することにより、新規治療法の可能性について今後考察していく。
2 オートファジーを促進させることにより、冠動脈炎が抑制され、内皮細胞のサイトカイン産生も抑制された。今後は発症におけるオートファジーの関わりについて検討を追加していく。
1-2) 現在、多施設共同で臨床試験を行っている。
1-3) 川崎病特異的PAMPsの受容体を検索すべく、まず自然免疫リガンドを発現させたレポーター細胞を23種類作製した上で、エルシニア菌のバイオフィルムから得られたPAMPsを含む抽出液でその細胞を刺激し解析を行ったところ、ある自然免疫リガンド発現細胞に特異的に反応をしていることがわかった。今後、その下流経路を解析することにより、新規治療法の可能性について今後考察していく。
2 オートファジーを促進させることにより、冠動脈炎が抑制され、内皮細胞のサイトカイン産生も抑制された。今後は発症におけるオートファジーの関わりについて検討を追加していく。
結論
川崎病の病因・病態に基づく新規治療のため研究を、2014年度より多角的に開始した。この臨床研究・基礎研究を詳細に検討し、さらに発展させることにより、川崎病の患者の理想的治療そして予防法の開発できると考え、2015年度も継続して研究を行う。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-