文献情報
文献番号
201441001A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患特異的単球株を用いた横断的な免疫疾患創薬スクリーニング系構築と新規候補化合物探索
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 潤(京都大学 iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
- 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所 )
- 太田 章(京都大学 iPS細胞研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、iPS由来単球株を用いて、汎用性の高い化合物スクリーニングプラットフォームを確立し、横断的探索により新規創薬シーズを得ることである。
炎症の制御はヒト疾患の制御において重要な課題である。ヒトと他の動物種では炎症制御経路が異なることがあり、ヒト試料による探索は有用であるが、患者由来サンプルを用いた免疫疾患の研究では、得られる細胞数が限られることや、生体内のサイトカイン環境などに影響されることもあり、治療薬候補をスクリーニングする試みはあまり行われていない。ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立が解決策となり得るが、目的の分化細胞の純度・収量や成熟度が不十分でバッチ毎にばらつくこと、分化のコストが高いことなどの問題がある。そこで、本研究では(遺伝子改変)疾患iPS細胞より分化誘導した単球を株化し、大量に増幅することにより、ヒト患者由来の細胞を用いた、安定かつ高スループットの化合物探索を行う。得られたヒット化合物を創薬シーズとして、製薬企業との共同研究へ移行する。平成25年度は、1~複数の単球株(単一遺伝子疾患)を作成し、うち1疾患程度でスクリーニングを開始する。
なお、研究者らは、多くの疾患iPS細胞樹立を行っており、免疫疾患由来iPS細胞を用いて化合物スクリーニングが行えることも示している(Tanaka, Blood, 2012)他、効率のよい単球分化系を開発している(Yanagimachi, PlosONE, 2013)。
炎症の制御はヒト疾患の制御において重要な課題である。ヒトと他の動物種では炎症制御経路が異なることがあり、ヒト試料による探索は有用であるが、患者由来サンプルを用いた免疫疾患の研究では、得られる細胞数が限られることや、生体内のサイトカイン環境などに影響されることもあり、治療薬候補をスクリーニングする試みはあまり行われていない。ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立が解決策となり得るが、目的の分化細胞の純度・収量や成熟度が不十分でバッチ毎にばらつくこと、分化のコストが高いことなどの問題がある。そこで、本研究では(遺伝子改変)疾患iPS細胞より分化誘導した単球を株化し、大量に増幅することにより、ヒト患者由来の細胞を用いた、安定かつ高スループットの化合物探索を行う。得られたヒット化合物を創薬シーズとして、製薬企業との共同研究へ移行する。平成25年度は、1~複数の単球株(単一遺伝子疾患)を作成し、うち1疾患程度でスクリーニングを開始する。
なお、研究者らは、多くの疾患iPS細胞樹立を行っており、免疫疾患由来iPS細胞を用いて化合物スクリーニングが行えることも示している(Tanaka, Blood, 2012)他、効率のよい単球分化系を開発している(Yanagimachi, PlosONE, 2013)。
研究方法
iPS細胞について、単球分化を行う。分化方法は、無血清・無フィーダー二次元培養法で行い、未熟な単球系前駆細様を回収する。この細胞を、熊本大学の千住覚先生らが開発した遺伝子導入法(Koba, PlosONE, 2013, Haruta, Gene Ther, 2013)を用いて、株化する。
結果と考察
モザイク型CINCA症候群患者由来のiPS細胞2株単球系細胞へ分化させ、21-22日目に回収し、遺伝子導入を行った。細胞は約1週間後よりM-CSF依存性に増殖し、2日で約10倍と高率な増殖率を示した。トランスジーンの組み込みをゲノムPCRを用いて確認した。細胞表面マーカー解析ではCD45、CD14及びCD11bが陽性であり、単球として矛盾しなかった。また、得られた細胞はメイギムザ染色で血球様の形態を示した。次にこれらの細胞を樹状細胞とマクロファージへ分化させた。樹状細胞に分化させると、細胞より樹状突起の伸長が確認された。また、樹状細胞の成熟に伴って、CD11c,CD80,CD86が細胞表面に発現した。一方、マクロファージへと分化させると、細胞はディッシュへ接着し、進展した形態をとるようになった。メイギムザ染色では泡沫細胞様の形態が確認された。さらに、PMAあるいはLPS刺激により、炎症性サイトカインが分泌されることを確認した。Q4ではLPS刺激単独でIL-1bの分泌が認められたが、Q5 ではIL-1bの分泌にはsecond signalが必要であった。従って、iPS-MLより分化させたマクロファージ(iPS-MLMP)は、疾患特異的な表現型を保持していると考えられた。
次に、CINCA-iPS-MLMPを用いた高スループットスクリーニング系の構築に着手した。まず、既存のIL-1b産生経路阻害剤が容量依存的にサイトカイン産生を阻害するか検討した。CINCA-iPS-MLMPをNLRP3インフラマソーム下流の阻害剤であるYVADあるいはCA074Meで前処理するとIL-1b分泌が阻害されたが、IL-6分泌は相対的に保たれていた.
疾患特異的iPS細胞を用いた創薬開発、患者細胞を用いた免疫疾患の新規治療法開発、はいずれも多大な成果が見込まれる領域であるが、様々な問題点のため、世界的に見ても有用なスクリーニング系は確立していない。本研究提案では、iPS細胞の遺伝子改変による「厳密な対照細胞」「レポーター」作成、及び単球株化による「均質かつ大量の疾患特異的分化細胞の取得」を組み合わせ、大幅に汎用性の高く、低コストのスクリーニング系を確立できると期待される。
次に、CINCA-iPS-MLMPを用いた高スループットスクリーニング系の構築に着手した。まず、既存のIL-1b産生経路阻害剤が容量依存的にサイトカイン産生を阻害するか検討した。CINCA-iPS-MLMPをNLRP3インフラマソーム下流の阻害剤であるYVADあるいはCA074Meで前処理するとIL-1b分泌が阻害されたが、IL-6分泌は相対的に保たれていた.
疾患特異的iPS細胞を用いた創薬開発、患者細胞を用いた免疫疾患の新規治療法開発、はいずれも多大な成果が見込まれる領域であるが、様々な問題点のため、世界的に見ても有用なスクリーニング系は確立していない。本研究提案では、iPS細胞の遺伝子改変による「厳密な対照細胞」「レポーター」作成、及び単球株化による「均質かつ大量の疾患特異的分化細胞の取得」を組み合わせ、大幅に汎用性の高く、低コストのスクリーニング系を確立できると期待される。
結論
疾患特異的iPS細胞より単球株を樹立し、HTSを行うための基盤構築に成功した。次年度以降、研究を進める予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-