文献情報
文献番号
201439023A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の疾病負担を踏まえた新たな生活習慣病対策としての医薬品、医療機器及び医療技術の開発等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院 国際保健政策学)
研究分担者(所属機関)
- 井上 真奈美(東京大学大学院 健康と人間の安全保障)
- Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(東京大学大学院 国際保健政策学 )
- 中岡 慎治(東京大学大学院 国際保健政策学 )
- Md Mizanur Rahman(エムディー ミジャヌール ラーマン)(東京大学大学院 国際保健政策学 )
- 阿部 サラ(東京大学大学院 国際保健政策学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,553,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健政策立案や保健医療技術の研究開発における優先順位決定のためには、疾患別の死亡や障害、それらの原因となる危険因子に関するエビデンスが必須である。本研究は、これまでの国内外における疾病負担研究をさらに発展させ、日本の疾病分野別研究開発費と 疾病負担の関係の分析および疾病負担の将来予測を行い、我が国の医薬品、医療機器及び医療技術の開発に資するエビデンスを創出し、我が国の医薬品、医療機器及び医療技術の開発に資することを目的とする。
研究方法
本研究は、現在進行中の世界と我が国の疾病負担研究に基づき、我が国の医薬品、医療機器及び医療技術の研究開発に資するエビデンスを創出する。疾病負担の推計および将来予測には、2013年における世界の疾病負担研究 (Global Burden of Disease: GBD) の最新推定値および日本の人口データを利用した。2025 年における疾病負担の予測推定値を得るため、1990年から2012年における YLDs, YLLs および DALYs の推定値から線形モデルの予測を行い、2025 年までの傾向予測と各年人口あたりの割合を導出した。導出結果を元に、2010年における疾病負担上位6位の原因に対して、2025年における負荷を予測した。疾患別研究費に関しては、時系列での比較が可能であり、研究開発においては代表的な文部科学省科学研究費および厚生労働省科学研究費公的研究費の2000~2012年度における新規採択課題を対象に分析を行った。本研究では、研究開発費を分野別と疾患別の2つの側面から分類した。
結果と考察
現在の日本のYLLs の上位要因はがんである一方、YLDs の主要原因は筋骨格系疾患であった。 また、死亡を用いた順位と疾病負担を用いた順位は異なってくる。YLLsは、2025年には我が国の疾病負担の半分以下(47.7パーセント)になると予測された。モデル予測では、2025年までに顕著な交通事故による外傷の減少と精神・脳神経系疾患の増加を示している。 2000~2012年度の間に公的研究費の対象となった研究の数および研究費は大幅に増加し、それぞれ約50パーセントおよび約76パーセント増加している。 分野別では、科研費においては、基礎分野が約半数を占め、 社会医学系は10パーセント程度である。他方、厚労科研費では、逆に臨床分野と社会医学を合わせて約80~90パーセントを占めている。それらを合計すると、基礎系で約半数、臨床分野が約40パーセント、社会医学が10パーセントを占めることになる。疾患別に分類すると、 がん、心臓・循環器疾患、脳神経疾患、筋骨格系疾患、泌尿生殖器疾患、消化器疾患、精神・行動疾患などの採択数が多かった。疾病負担と疾患別研究費を比較すると(図1~4)、 公的研究開発費は、早期死亡(YLLs)とは比較的高いSpearmanの相関係数を保っていたが、障害を考慮した疾病負担(DALYs) ではその関連が減少することが示された(表1)。例えば、2012年度では、死亡を用いた場合の相関係数は0.80だが、疾病負担を用いると0.60へと減少した。特に、循環器・脳血管疾患、筋骨格系疾患、呼吸器疾患、傷害などは疾病負担の大きさに比べて研究費配分が少ない。他方、伝統的に、がんや消化器疾患は多い傾向が見られた。
本研究は、疾病負担と公的研究開発費との関係を分析した、我が国で最初の試みである。 Rothwell (2001年)、Røttingenら(2013年)、Roderik と Viergever(2013年)は、人口レベルの保健ニーズと研究開発とがマッチしないことが世界的にも大きな課題であると述べている。どの疾病分野にどれだけの研究開発費が投入されているか調べることは、 限られた資源を最大限に活用するためにも重要な基本的な情報である。我が国の公的研究開発費の総額は、英国などと比べても遜色がない。しかし、その配分は、障害を考慮に入れた疾病負担による優先順位を反映していない。本研究の将来予測から、障害による負担も増加することが予測されるために、公的研究開発費の配分に関しては、疾病負担を一つの指標として用いることを検討すべきである。
本研究は、疾病負担と公的研究開発費との関係を分析した、我が国で最初の試みである。 Rothwell (2001年)、Røttingenら(2013年)、Roderik と Viergever(2013年)は、人口レベルの保健ニーズと研究開発とがマッチしないことが世界的にも大きな課題であると述べている。どの疾病分野にどれだけの研究開発費が投入されているか調べることは、 限られた資源を最大限に活用するためにも重要な基本的な情報である。我が国の公的研究開発費の総額は、英国などと比べても遜色がない。しかし、その配分は、障害を考慮に入れた疾病負担による優先順位を反映していない。本研究の将来予測から、障害による負担も増加することが予測されるために、公的研究開発費の配分に関しては、疾病負担を一つの指標として用いることを検討すべきである。
結論
2015年4月に誕生する独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)が、研究開発の司令塔機能を果たし、公的な研究開発関連予算を集約して管理することになるために、疾病別研究費の分析は極めて重要である。公的研究開発費の配分に関しては、疾病負担を一つの指標として用いることを検討すべきである。
公開日・更新日
公開日
2015-09-17
更新日
-