日本人糖尿病の合併症重症度評価パネルの確立と重症化予防の為の効果的医療連携体制の構築

文献情報

文献番号
201439014A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人糖尿病の合併症重症度評価パネルの確立と重症化予防の為の効果的医療連携体制の構築
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 哲子(独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 糖尿病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長田 太助(自治医科大学内科学講座 腎臓内科学部門 腎臓・高血圧内科学)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学第一内科 血圧制御学講座)
  • 片岡 大治(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
  • 緒方 奈保子(奈良県立医科大学 眼科学教室)
  • 長谷川 浩二(独立行政法国立病院機構 京都医療センター展開医療研究部)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療センター 糖尿病研究部)
  • 石井 均(奈良県立医科大学 糖尿病学講座)
  • 大石 まり子(大石内科クリニック)
  • 赤司 朋之(佐賀大学医学部 肝臓・糖尿病・内分泌内科)
  • 宮本 恵宏(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 林野 泰明(天理よろづ相談所病院 糖尿病内科)
  • 小谷 和彦(自治医科大学 臨床検査医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国では糖尿病とその予備軍が2200万人を超え、心筋梗塞や脳卒中を含む致死的動脈硬化疾患である心血管病(CVD)が死因の3割を占める。糖尿病における認知症や寝たきりの増加、糖尿病性腎症による透析患者の急増など、社会的・医療経済的にも糖尿病合併症対策が急務である。しかし、糖尿病合併症重症度評価法や診療体制の標準化は未だ確立されておらず、日本人におけるリスクスコアの開発が望まれる。研究代表者らは既に国立病院機構多施設共同肥満・糖尿病研究 [JOMS/J-DOS)] にて動脈硬化指標:CAVI、尿アルブミンやシスタチンC等の心CVD指標としての有用性や心血管イベントとの関連を認めている。
 本研究では、既存コホートから日本人特有の糖尿病合併症重症度評価パネルとそれに基づく簡易予測リスクスコアを構築する。更に異なる診療科間の共通パネルや診療科間連携パス・共通パネル、合併症予防パンフレットや地域連携手帳を作成し、診療科間の地域連携方式を確立する。さらに診療科間・地域連携パネルに基づく新規地域連携コホートを構築し、糖尿病合併症進展予防率を検討することにより、地域連携による医療経済効果の評価や医療連携の保険点数化の提唱が期待できる。本研究では、糖尿病地域連携の拡充・標準化とその透析等合併症予防効果・医療経済効果を明らかにする。また、各地域の糖尿病診療体制を全国レベルでの均てん化に向けた標準化も試み、将来のわが国の地域連携モデルの構築を目指す。
研究方法
下記のプロジェクトを推進する。
1. 糖尿病合併症重症度評価パネル・診療科間連携パス・データベース構築
a. 既存コホートに登録されている症例を対象とし、後ろ向き調査にて眼科・歯科受診率や栄養・禁煙指導率なども含めて調査する。
b. 各糖尿病合併症の専門医により、糖尿病合併症の評価法と診療体制の標準化の準備を行う。
c. 既存コホートを用い糖尿病合併症重症度評価パネルと簡易リスクスコアの構築を検討する。
d. 上記までで構築・標準化した合併症評価パネル・リスクスコアを基盤に、診療科間連携パスシート・共通データベースの準備をすすめる。
2. 地域診療体制構築
a. 各地域の糖尿病地域診療体制の構築と全国レベルでの均てん化に向けた共通化・標準化の試みについて検討する。
b. 次年度より開始する新規糖尿病前向きコホートで利用する地域連携パスシート・合併症予防パンフレット作成の準備を進める。
c. 本研究により作成された資料を活用した地域診療体制の構築について議論・準備を行う。上記地域診療体制に関する、地域連携会・講演会の開催準備を行う。
3. 登録システム構築の準備の着手:上記で構築された共通データベースの稼働を目指し、国立循環器病研究センターの保有する症例登録システムなどを活用して準備を進める。
結果と考察
 平成26年10月に第一回班会議の事前準備会を開催した。地域連携活動及びその腎症等の合併症予防効果、また精神疾患と糖尿病の関連に関する講演を行い、糖尿病地域連携手帳にうつの項目を入れた、糖尿病連携バインダーの作成を皆で合意した。地域病院との連携や診療体制の実際についての理解を深めた。また、研究方針について討議し、下記項目の策定を行った。
1)患者背景、検査項目、合併症関連検査などの選定を行い、重症度評価パネルの調査項目一覧を作成した。
2)登録対象者の適格基準並びに除外基準の設定、症例登録の手順の確認、観察・検査・報告項目とスケジュールの策定を行った。またデータの登録・提出方法について検討を行った。
3)基幹病院・地域病院の各機関における評価・測定項目を選定し、診療体制の標準化に向けた議論を行い、診療科間・地域連携パスシート案を考案した。
 以上の討議内容に基づき、研究計画書を作成した。班会議での正式決定を受け、登録を開始する。また、倫理委員会申請書類の準備、地域診療体制の構築に向けた各地域の糖尿病診療体制の把握、連携パスシート・合併症予防パンフレットの作成、登録システム構築の準備に着手した。現在、班員らを中心に地域診療体制構築の為の各地域での地域連携会・講演会の準備を行っている。
上記の成果を活用した全国糖尿病診療地域拠点病院と関連診療所における分野横断的な研究により、わが国の糖尿病診療体制の標準化・地域連携モデルの構築や包括的で費用対効果の高い重症度評価法など、臨床現場への成果の還元が大きく期待される。
結論
 糖尿病合併症重症度の指標として、患者情報、検査項目等の選定を行い、それに基づいた診療科間・地域連携パスシートを作成するなど、計画通りに進行中である。2015年12月以降も、倫理委員会での承認や各地域における講演会開催の準備に着手している。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201439014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
各糖尿病合併症の専門家からなる研究体制の利点を生かし、日本人特有の糖尿病合併症重症度評価パネルと効果的な診療科間・地域連携のためのパスシートを構築することができた。全国糖尿病診療地域拠点病院と関連診療所における分野横断的な研究により、わが国の糖尿病診療体制の標準化・地域連携モデルの構築や包括的で費用対効果の高い重症度評価法などが期待される。
臨床的観点からの成果
糖尿病合併症重症度評価の指標として用いる患者情報・検査項目の策定が行われたことにより、効果的な地域連携のために必要な診療科間・地域連携パスシートを開発するなど順調な進捗が見られた。基軸機関と地域病院の効率的な連携のため、パンフレットやバインダー型ツールの開発を行った。うつと糖尿病を包括した地域連携バインダーは、糖尿病診療における臨床面で画期的ツールとして活用が期待される。
ガイドライン等の開発
本研究で初年度に構築した日本人特有の糖尿病合併症重症度評価パネルに基づき、次年度より開始する前向きコホート研究の成果が集積することで、糖尿病合併症進展予防ガイドライン等の策定の一助になることが期待できる。
その他行政的観点からの成果
初年度より開始している日本人糖尿病合併症予防の為の多診療科間地域連携体系を完遂できれば、わが国の糖尿病管理・QOLの改善、心血管病・透析数の減少、健康寿命延伸や高騰する医療費の大幅な削減が期待でき、超高齢化社会に向け医療と福祉への貢献が期待できる。
その他のインパクト
初年度に作成した糖尿病地域連携ツールは、日本糖尿病協会の認定も受け、今後の糖尿病地域連携の啓蒙に役立つと期待される。本研究における地域連携事業は、日本糖尿病学会・日本肥満学会等においても地域連携医療は重要なプログラムとして採択されており、次年度以降にて本研究成果の報告が実現すれば、各学会のシンポジウム等で取り上げられる可能性も高く、そのインパクトは大いに期待できる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
赤司朋之. 診断と治療. 2016
原著論文(英文等)
2件
1.Ito H et al. BMC Family Practice. 2015. 2.Satoh-Asahara N et al. Japan Clinical Medicine, 2016.
その他論文(和文)
1件
赤司朋之:コーディネートナースを活用した連携パスでの透析導入予防の試み。日本糖尿病情報学会誌 12:25-28, 2014
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
日本糖尿病学会年次学術集会 日本くすりと糖尿病学会学術集会 日本糖尿病合併症学会 日本糖尿病教育・看護学会学術集会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
17件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Satoh-Asahara N, Ito H, Akashi T, Yamakage H, et al.
A Patient-Held Medical Record Integrating Depression Care into Diabetes Care.
apan Clinical Medicine , 7 , 19-22  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
2018-06-06

収支報告書

文献番号
201439014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,999,000円
(2)補助金確定額
11,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,132,742円
人件費・謝金 1,699,439円
旅費 400,660円
その他 2,997,159円
間接経費 2,769,000円
合計 11,999,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
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