急性心不全におけるガイドラインベースの治療実施状況と予後因子規定に関する国際共同多施設レジストリ研究

文献情報

文献番号
201439013A
報告書区分
総括
研究課題名
急性心不全におけるガイドラインベースの治療実施状況と予後因子規定に関する国際共同多施設レジストリ研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
香坂 俊(慶應義塾大学 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 白石 泰之(慶應義塾大学 循環器内科 )
  • 宮田 裕章(東京大学 医学部 公衆衛生学 医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ここ十数年の医療システムの躍進と世界規模での高齢化により、心不全の有病率は激増し、今やcommon diseaseの一つとして立場を確立しようとしている。合併症を有さない「典型的」心不全症例の慢性期管理に関しては、大規模臨床試験等の成果により効果的な介入方法が明らかとなってきている。しかし、リアルワールドで多数を占めるのは、多種多様な合併症を有する「非典型的」心不全症例である。その具体例として、例えば (1)高齢者の拡張不全型の心不全 と (2)他臓器合併心不全、特に慢性腎臓病と連関したcardiorenal syndrome等が挙げられる。
そこで我々は、すべての心不全を網羅的に登録し、その予後と規定因子の寄与の定量化を試みた。具体的には、心不全診療において患者評価および介入が最も行いやすい「入院」を起点とし、その時点での重症度評価、特に急性期からの拡張不全や慢性腎臓病(腎不全)の治療標的を探索することとした。さらに、その発展的な作業として、診療の際に医療者側に効果的に役立ててもらうリスクモデルの構築を目指した。リスクモデルの有効的な活用は重症度の正しい把握、トリアージや短期的な帰結を予想することが可能となる。また、他国との診療内容比較の際にも重要となる。
研究方法
既存の基本的な多施設共同心不全データベースを用いて、急性増悪期心不全例を対象として、新規調査項目を追加・登録ならびにサンプル採取をおこなう。院内予後だけでなく退院後予後もフォローアップをおこない、長期エンドポイントまで追跡する。十分な症例数が登録された時点で下記解析を行う。
1.拡張不全や慢性腎臓病に関わる因子で、予後に最も寄与する因子を同定し、治療標的として臨床現場へ紹介し吟味する。
2.ガイドラインベースの治療の実践という側面から、それぞれのサブグループにおける長期予後との関連、さらに費用対効果を検討する。
3.諸外国との診療比較のために、英国や米国と共同データベースを構築・解析をおこなう。
結果と考察
計画の一年目を終えたが、現在データベース整備を行っており、四施設合同で1600例程度のデータ登録を終えている。これらの初期データより探索的な解析を開始しており、順次学会などで発表を行っている。特に腎臓病、さらに肝障害との重層的な関連については一次的な解析が終了し、その結果を論文として報告している。また、拡張不全症例に関する解析も進めており、特に急性心不全で中心的な役割を果たしている利尿薬に対する反応の典型的収縮不全との差異が顕著であることがわかってきている。具体的には、治療体液分布に違いが認められ、拡張不全症例におけるovertreatmentが課題となることが予測されている。
症例登録システムのアップグレードとしては、従来からのExcel File へのマニュアル入力については誤入力や外れ値を十分に検出できないことから、Accessプログラムをベースにした電子媒体での症例登録プログラムを構築した。このAccessをベースとしたプログラムから、今後さらに平成27年5月を目処にWebベースの登録へと移行予定である。
[解析の進行]初期データより探索的な解析を開始しており、順次学会などで発表を行っている。特に腎臓病、さらに肝障害との重層的な関連については一次的な解析が終了し、その結果を論文として報告している。また、拡張不全症例に関する解析も進めており、特に急性心不全で中心的な役割を果たしている利尿薬に対する反応の典型的収縮不全との差異が顕著であることがわかってきている。具体的には、治療体液分布に違いが認められ、拡張不全症例におけるovertreatmentが課題となることが予測されている。
[英国や米国との連携]今後、各国のガイドラインやリスクモデルの比較に関する議論を深めるべく、国際学会を通じて会議等を開催予定である。同時期の心不全患者の背景因子や治療成績の比較、さらに各国のリスクモデルの我が国での当てはまり(validation and calibration)を検討することとなっている。
結論
心不全に対する実践的な診療ガイドラインの作成が待たれているが、心不全患者は多彩な背景より発症し、病像も様々である。そのガイドライン作成には、適切な評価・層別化が前提にあり、こうした大規模な全例対象の登録研究により心不全の実像を把握する必要がある。現状、心不全の特に急性期に関しては、今ある治療法を最大限に有効活用するのが唯一の方法であり、その為のキーワードが「早期介入」と「他臓器との連関の導出」ではないかと考えられる。具体的には、急性心不全患者が救急外来ないし集中治療室に収容された直後から、他の臓器を考慮した評価および介入により、短期だけでなく、その先にある長期予後まで見据えた治療が理想的と思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-11-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201439013C

収支報告書

文献番号
201439013Z