慢性心不全患者における心不全再入院予測モデルの構築と治療法の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201439012A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性心不全患者における心不全再入院予測モデルの構築と治療法の標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(独立行政法人国立循環器病研究センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 裕之(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第一内科)
  • 砂川 賢二(九州大学大学院 医学研究院)
  • 井手 友美(九州大学大学院 医学研究院)
  • 神崎 秀明(国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門)
  • 鷲尾  隆(大阪大学 産業科学研究所)
  • 朝倉 正紀(国立循環器病研究センター 臨床研究企画室)
  • 中野  敦(国立循環器病研究センター 臨床研究企画室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、心不全患者を対象とした退院後の死亡または心不全による再入院までの日数を予測する関数式の妥当性と有用性の検討を目的とする。
研究方法
慢性心不全の診断にて入院治療を行った患者200例を対象とし実施する。
1.方法、入院中の診療情報から50属性の情報を収集、本関数式によって算出される退院後の再入院予想入院日を算出する。その結果を退院後の外来主治医に伝えそれをガイドにした心不全治療を行う群(100例)と,外来主治医に予想入院日を伝えないで心不全治療を行う群(100例)に無作為割付けを行い,その後の死亡または心不全増悪による再入院を前向きに観察する。(外来主治医に対して非盲検,患者に対して盲検)。かかる検討により,本関数式の重要性と,数式を構成するパラメーターを意識して治療することの有用性が明らかとなる。
2.50属性、患者背景(年齢,性別,基礎心疾患,合併症,同居人数),入院時現症(NYHAクラス分類,心拍数,下腿浮腫の有無),入院中におけるデバイス治療の有無(心臓再同期療法,埋込型除細動器,心臓ペースメーカー),入院時及び退院時心エコー図データ(左室拡張末期経,左室収縮末期経,左室短縮率,左室中隔壁厚,2度以上の大動脈弁逆流,2度以上の僧帽弁逆流,2度以上の三尖弁逆流),採血データ(白血球数,AST,尿素窒素,尿酸,CRP,BNP),退院時処方の種類(ジギタリス,β遮断薬,利尿薬,強心薬,抗血小板薬,抗甲状腺薬,気管支拡張薬,抗アレルギー薬,抗ヒスタミン薬,抗炎症薬,利胆薬,整腸剤,高脂血症治療薬,プロトンポンプ阻害薬,下剤,抗精神病薬,ビタミン薬)
3.評価項目、主要評価項目を全ての死亡または心不全増悪による再入院とし,副次評価項目として心血管事象による死亡の発生数,あらゆる原因による入院の発生数,心血管事象による入院の発生数,心不全悪化による心不全治療薬の追加,変更の発生数,NYHAクラス分類の変化,血中BNP値の変化量,心エコー図検査による左心室拡張末期径と収縮末期径と左室短縮率の変化量を観察する。
結果と考察
試験計画書を作成,全国の各参加施設におけるデータ登録の為のEDCシステムの開発,割付システムの構築と臨床データ収集保管の為のインフラの整備作業を行っている。また,エンドポイント評価委員会,データモニタリング委員会を立ち上げ,中立的立場にてデータの評価を行う準備も行い,試験責任者と独立した統計専門家に統計解析を依頼した。
さらに,我々が算出した本研究にて使用する心不全による再入院や死亡を予測する関数式の精度を高めるため,分担者らにより関数式の改良を行った。また策定した数式の正確性を検証するため、本計画の研究分担者の所属病院において心不全症例の登録を行い,数式によって算出した心不全再入院日と実際の再入院日と関係性を検証する前向き疫学観察研究を進めているところである。既に約142例の心不全症例の登録を完了しており,これらの患者の予後観察を行っている。実際に心不全の増悪にて再入院した症例は40症例を超えている。今後は更に登録症例数を増やし,数式の正確性,妥当性を検証する計画である。
本年度は前向き観察研究を行う基盤の整備を行ってきた。本数式の正確性を検討する研究において,担当責任者の施設にて慢性心不全症例の登録が進んでいる。さらに今後、研究組織体制を確定し,参加施設の倫理委員会へ申請した後に患者の登録を開始する。1年間にて患者の登録を終了、2年間の観察期間を経て結果の解析を行う予定である。
結論
慢性心不全のテーラーメード医療を数学的に求める本研究が完遂され有用なエビデンスが得られれば,単に心不全の予後規定因子が明らかになるだけでなく,数理学的シミュレーションにより心不全入院を予測することで心不全軽症段階での早期介入が可能となり,入院回数の減少や重症化入院の回避につながり,医療費削減効果や在院日数の短縮をもたらすと考える。
今後は上述のようにロードマップに沿い確実に遂行していく予定である。本数学的シミュレーションは慢性心不全の病態のみならず,他の非遺伝的な外的多因子により、その病態が修飾される疾患にも応用が可能であると考えられ,数学,工学を含めた産学連携の進行につながると考える。医学・医療をも大きく変革するポテンシャルを有するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201439012C

収支報告書

文献番号
201439012Z