経脳室および経動脈冷却灌流による局所低脳温療法の臨床応用

文献情報

文献番号
201439007A
報告書区分
総括
研究課題名
経脳室および経動脈冷却灌流による局所低脳温療法の臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鐙谷 武雄(北海道大学脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 宝金 清博(北海道大学 脳神経外科)
  • 中山 若樹(北海道大学 脳神経外科)
  • 数又 研(北海道大学 脳神経外科)
  • 七戸 秀夫(北海道大学 脳神経外科)
  • 長内 俊也(北海道大学 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、主幹動脈閉塞による重症脳虚血に対して血管内血栓除去治療を行う際に、再開通後の脳虚血再灌流傷害を防ぐために、我々が考案した“経脳室および経動脈冷却灌流による局所低脳温療法”を施行し、この新規の脳保護療法の治療効果を検討することを目的とする。主幹動脈閉塞を伴う重症脳虚血症例において、血管内血栓除去治療が行われるが、予後不良例も少なくない。これは虚血再灌流傷害によって脳浮腫、出血性梗塞が生じるためである。この軽減の目的で脳保護薬エダラボンが投与されているが、この薬剤だけでは抑えきれていない。他方、実験的には低体温治療が虚血再灌流傷害に対して有効であることが知られているが、臨床での全身低体温治療は、肺炎等の合併症のために普及していない。そこで、全身ではなく脳局所のみを内部より低温化することでこれらの問題点を解決しようというのが今回の研究のコンセプトである。

研究方法
本研究の基本デザインは血管内治療単独で治療した群と血管内治療に局所低脳温治療を併用して治療した群を比較することになる。本研究では、ランダム化のための症例数確保が困難であるため、ヒストリカルデータと比較することで有効性を判断するオープン・非ランダム化の介入試験を予定している。本研究の研究期間は2年間と設定しており、目標症例数は総計20例としている。本研究の症例の選択基準としては、年齢が①20歳から85歳、②tPA静脈内投与治療が非適応の内頚動脈系主幹動脈閉塞、③8時間以内に血管内血栓除去治療が可能、④自由意思による文書同意が家族より得られた患者、とする。治療手技としては、手術室にて以下の3つを順次施行する。 (1)経脳室冷却灌流・・・静脈・局所麻酔下に虚血側前頭部に頭蓋穿頭を行い、側脳室内にダブルルーメンチューブを挿入、チューブの片方より10℃に冷却した人工髄液を灌流し、33℃台の脳温を維持する。他方よりドレナージ回路を介して一定の圧で髄液を排出する。(2)血管内手技による血栓除去・・・血管内血栓除去治療については血管内治療専門医が血栓除去を行う。(3)経動脈冷却灌流・・・血管内治療により再開通が得られた動脈にカテーテルを留置し、10℃に冷却した電解質輸液を最大10ml/minで1時間投与する。次いで病室に移動し、経脳室冷却灌流により33℃台の低脳温状態を維持する。48時間後、脳室内チューブを抜去し、局所低脳温治療を終了する。その後は通常の脳梗塞治療を継続して行う。最終的な治療効果の判定として、主要評価項目は、1ヶ月後、3ヶ月後の患者予後をmodified Rankin scaleで評価する。また、副次的評価項目は、治療後1週間の急性期の症状重症度、画像所見を使用する。
結果と考察
平成26年7月に探索的研究の第1例目の治療を施行した段階で、当初の治療プロトコールに改善すべき点を認め、血管内治療を頭蓋穿頭ドレナージ挿入術に先行させる、などのプロトコールの改変を行った。しかし、その後、適応基準を満たす症例が大学病院に搬入されずにおり、探索的臨床研究の症例数確保が困難な状態が続き、当初の研究計画の期間内達成が難しい状況となった。この症例数が少ない理由としては、急性期脳梗塞でtPA治療の適応時間が3時間より4.5時間に延長されたことで、tPA治療の非適応例が少なくなってしまっていること、また大学病院1施設だけでは症例数に限りがあることが主な原因と考えられた。このため、症例数を増加できるように研究計画を見直し、実施完遂が可能となる様に修正を加える事とした。変更の主な点は、(1)症例適応基準を拡大して、tPA治療施行の有無を問わず、血管内治療を行う症例とすること、(2)実施施設を大学以外の関連施設にも広げること、(3)実施期間を2年から3年間にすること、である。すなわち、従来の研究計画に沿った治療「tPA非施行症例に血管内治療と併せて経動脈冷却灌流+経脳室冷却灌流を行う治療(COOL IVR治療と略称)」に、今回、新たに「tPA治療施行後に血管内治療と併せて経動脈冷却灌流のみを行う治療(tPA COOL IVR治療と略称)」を追加する。実施施設の増加については、tPA COOL IVR治療は3~5施設、COOL IVR治療は1~2施設を予定している。症例数の集積はtPA COOL IVR治療は20例、COOL IVR治療は10例、総計30例を目標として行う予定である。
結論
本研究についてはいまだ結論と呼べる結果はない。しかし、今回我々が考案した局所低脳温治療は手技的には脳神経外科の施設であればどこでも出来得る比較的な簡便な治療法であり、本研究で良い結果が得られれば、本治療が広く普及していく可能性は高い。将来的には多施設共同研究を施行することでエビデンスレベルを高めていくことを考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201439007C

収支報告書

文献番号
201439007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,240,000円
(2)補助金確定額
6,240,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,800,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 1,440,000円
合計 6,240,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-09-04
更新日
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