文献情報
文献番号
201439005A
報告書区分
総括
研究課題名
コルヒチンの抗動脈硬化薬としての適応拡大を目的とした橋渡し研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 熊谷 雄治(北里大学医学部附属 臨床研究センター)
- 安 隆則(獨協医科大学 日光医療センター)
- 門上 俊明(福岡県済生会二日市病院)
- 安藤 真一(福岡県済生会二日市病院)
- 冨山 博史(東京医科大学 医学部)
- 東 幸仁(広島大学 原爆放射線医科学研究所)
- 中村 秀文(独立行政法人国立成育医療センター研究所開発企画部 臨床試験推進室)
- 松下 明子(武藤 明子)(琉球大学 医学研究科)
- 又吉 哲太郎(琉球大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
糖尿病合併冠動脈疾患の予後は悪く、われわれのコホート研究では3.5年間で死亡、脳卒中、心筋梗塞が15%に発生した。しかし血圧や脂質、血糖の積極的な管理は予後に影響せず、従来と異なる介入が必要である。慢性炎症は動脈硬化の「主犯」とみなされながら効果的な介入が同定されていない。
コルヒチンはtubelinに結合し微小管形成を妨げる。白血球に集積し、動脈硬化進展に関与するとされる接着、脱顆粒,サイトカイン生成などを抑制する。またコレステロール結晶や遊離脂肪酸によるNLRP3インフラマソーム複合体形成など自然免疫機構活性化の、炎症を介した動脈硬化進展への関与が示唆されているが、ここにも微小管形成は関与し、コルヒチンが抑制する(Nat Immunol 2013)。これまでの観察研究(J Rheumatol 2012)や小規模の臨床試験(JACC 2013)ではコルヒチンによる心筋梗塞リスクの低下が報告されており,抗動脈硬化薬として適応拡大を目指した医師主導型臨床試験を実施する充分な科学的根拠がある。痛風患者で古くから使用されており,ある程度の安全性は確認されている。
アウトカム評価のためランダム化比較試験(RCT)の前に、橋渡し研究として抗動脈硬化薬としての用量を設定する薬物動態試験、白血球活性化マーカーを用いた薬物動態/薬力学試験を実施する。その上で白血球活性化を抑制する用量での動脈硬化の機能的マーカーである血管内皮機能(FMD)の改善を二重盲検RCTで評価する。コルヒチンは白血球では血中とは異なる薬物動態を示し、半減期も長いため低用量で有効性が得られる可能性がある。
コルヒチンはtubelinに結合し微小管形成を妨げる。白血球に集積し、動脈硬化進展に関与するとされる接着、脱顆粒,サイトカイン生成などを抑制する。またコレステロール結晶や遊離脂肪酸によるNLRP3インフラマソーム複合体形成など自然免疫機構活性化の、炎症を介した動脈硬化進展への関与が示唆されているが、ここにも微小管形成は関与し、コルヒチンが抑制する(Nat Immunol 2013)。これまでの観察研究(J Rheumatol 2012)や小規模の臨床試験(JACC 2013)ではコルヒチンによる心筋梗塞リスクの低下が報告されており,抗動脈硬化薬として適応拡大を目指した医師主導型臨床試験を実施する充分な科学的根拠がある。痛風患者で古くから使用されており,ある程度の安全性は確認されている。
アウトカム評価のためランダム化比較試験(RCT)の前に、橋渡し研究として抗動脈硬化薬としての用量を設定する薬物動態試験、白血球活性化マーカーを用いた薬物動態/薬力学試験を実施する。その上で白血球活性化を抑制する用量での動脈硬化の機能的マーカーである血管内皮機能(FMD)の改善を二重盲検RCTで評価する。コルヒチンは白血球では血中とは異なる薬物動態を示し、半減期も長いため低用量で有効性が得られる可能性がある。
研究方法
本研究はコルヒチンの適応拡大を目的とした治験であり、薬事相談を早期に開始し、研究分担者、医薬品医療機器総合機構審査官経験者や生物統計学者と共に研究計画を作成,実施する。1.健常人におけるコルヒチンの血中および白血球の薬物動態試験、2.健常人における遊離脂肪酸負荷による白血球活性化を指標とした血中および白血球の薬物動態/薬力学試験、3.糖尿病合併冠動脈疾患患者を対象とした白血球活性化の測定、4.臨床試験対象者としての糖尿病合併冠動脈疾患患者の登録を開始した。5.冠動脈疾患患者における低用量コルヒチンの複数回投与が血管内皮機能に及ぼす影響の検討
結果と考察
1.LCMS/MSでのコルヒチン血中および白血球中濃度測定について測定法のvalidationを実施した。6名の健常者を対象に薬物動態試験を実施中である。単回投与試験に加えて複数回投与後一週間後まで血中および白血球中のコルヒチン濃度を測定するプロトコルを加えた。
2.本研究については研究打ち合せにおいて当初計画していたプラセボ、低用量コルヒチン(0.25mg/day)常用量(0.5mg/day)を比較する 3 way クロスオーバーではなく、探索的に常用量1週間投与の前後での白血球活性化抑制とコルヒチン血中濃度を測定するプロトコルとした。平成26年度末の北里大学IRBで承認され今年度から開始予定である。
3.現在分担研究者の施設で糖尿病合併冠動脈疾患患者を対象に白血球機能を測定中である。4は進行中,5は平成27年度開始予定である。
④ 臨床試験対象者としての糖尿病合併冠動脈疾患患者の登録
医師主導治験実施予定の分担研究施設において、開始後の患者登録を迅速にすすめるために対象患者の使用薬剤や危険因子管理状況、患者背景などを含めたデータベースを作成している。これは平成27年度も分担研究施設で継続する。
⑤ コルヒチンと血管内皮機能に関する探索的臨床研究
FMDを評価項目とした2重盲検並行群間ランダム化比較試験を実施予定であるが、実現可能性や中央測定のシステムのチェックなどを目的とした少人数のクロスオーバーデザインによるパイロット試験を分担研究者施設で実施する。現在プロトコルは完成し分担施設の倫理審査委員会で承認され、臨床研究保険の締結の後開始予定である。これは来年度9月までに終了予定である。
⑥ 薬事相談
薬物動態試験、薬物動態/薬力学試験、血管内皮機能を指標とした探索的臨床研究の結果をもって平成27年度に実施する予定である。
⑦ プロジェクトマネジメント
薬物動態試験、薬物動態/薬力学試験、血管内皮機能を指標とした探索的臨床研究の結果をもって平成27年度に実施する予定である。
2.本研究については研究打ち合せにおいて当初計画していたプラセボ、低用量コルヒチン(0.25mg/day)常用量(0.5mg/day)を比較する 3 way クロスオーバーではなく、探索的に常用量1週間投与の前後での白血球活性化抑制とコルヒチン血中濃度を測定するプロトコルとした。平成26年度末の北里大学IRBで承認され今年度から開始予定である。
3.現在分担研究者の施設で糖尿病合併冠動脈疾患患者を対象に白血球機能を測定中である。4は進行中,5は平成27年度開始予定である。
④ 臨床試験対象者としての糖尿病合併冠動脈疾患患者の登録
医師主導治験実施予定の分担研究施設において、開始後の患者登録を迅速にすすめるために対象患者の使用薬剤や危険因子管理状況、患者背景などを含めたデータベースを作成している。これは平成27年度も分担研究施設で継続する。
⑤ コルヒチンと血管内皮機能に関する探索的臨床研究
FMDを評価項目とした2重盲検並行群間ランダム化比較試験を実施予定であるが、実現可能性や中央測定のシステムのチェックなどを目的とした少人数のクロスオーバーデザインによるパイロット試験を分担研究者施設で実施する。現在プロトコルは完成し分担施設の倫理審査委員会で承認され、臨床研究保険の締結の後開始予定である。これは来年度9月までに終了予定である。
⑥ 薬事相談
薬物動態試験、薬物動態/薬力学試験、血管内皮機能を指標とした探索的臨床研究の結果をもって平成27年度に実施する予定である。
⑦ プロジェクトマネジメント
薬物動態試験、薬物動態/薬力学試験、血管内皮機能を指標とした探索的臨床研究の結果をもって平成27年度に実施する予定である。
結論
慢性炎症は動脈硬化の主犯とされながら予後を改善できる介入、薬剤は開発されていなかった。本研究はコルヒチンの白血球での薬物動態、薬物動態/薬力学試験、血管内皮機能を指標とした試験を足がかりに、抗動脈硬化薬としての開発に資する橋渡し研究である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-16
更新日
-